アニサキスにあたって、一生ほとんどの魚が食べられなくなった話

2018年5月 9日(水) 9:32:40

少しポジティブになってきたので、書いてみたいと思います。
ここ1ヶ月半で経験したことを。イヤ、経験してしまったことを。

怖いですよ、アニサキス。
これから書くのは「誰でもなる可能性がある」リスクのお話です。

「あ〜、アニサキスってアレね、サバとかイカとかサーモンにいる寄生虫ね。それが生きたまま胃や腸に入ると、胃壁とか食い破られて強烈な腹痛に悶絶するヤツでしょ、友達にもいるわ〜、それに気をつけろってことね」

違います。

それも怖いけど、それはいわゆる「アニサキス症」
内視鏡でアニサキスを掴み出せば治るし、数日我慢すればアニサキスも死んじゃいます。

ボクがいまからするのは、「アニサキス・アレルギー」による「アナフィラキシー・ショック」のお話。
死にかける上に、一生治らない、と言われているものです。

ボクがアレルギー体質というわけではありません。
というか、逆。
幸運なことに56年あらゆるアレルギーから無縁に生きてきました(花粉症もない)。

そんなボクが、ある夜突然、アニサキスをアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)とするアナフィラキシー・ショックに見舞われて死にかけ、その結果、一夜にして、今後一生、ほとんどの魚が食べられなくなったのでした。

そう、いままでアレルゲンでなかったアニサキス(魚好きのボクはいままで魚と一緒に何千匹と食べちゃっているでしょう)が、突然アレルゲンとなりました。

しかも、アナフィラキシーって、一度アレルギーになるとほぼ治らない(特に成人になってからは治りにくい)。

その上、アニサキスという寄生虫の抗体に反応して発症するので、生きているアニサキスだけでなく、死骸やカケラを食べるだけでも死にかける可能性があります。

つまり、生魚はもちろん、アニサキスの死骸のカケラが混じっていそうな「焼魚」も「煮魚」も「干物」も「練り物」(おでんやカマボコ)も、発症する可能性があるわけです。

そして、アニサキスはほとんどの魚に寄生しています。
だから、ほとんどの魚料理がダメ。危ない。

鮨や刺身はもちろん、鮭・アジ・サバ・秋刀魚などの焼魚も、アジフライやエビの天ぷらなどの揚げ物も、カレイやキンメなどの煮付けも、冬のお鍋全般も、サラダとかに混じるシーチキンとかも危険です。

厳密に言うと、魚でとったソースや出汁(ダシ)も危険。そうなると味噌汁やうどん蕎麦、魚系ラーメンも危険・・・。
ついでに言うと、オキアミを使っているキムチも危険。エビエキスを使っているカレーとかも危険・・・。
もっと言うと、なぜか肉類の内臓料理もダメという症例も出ています(そう患者指導を行うべきとリンク先に書いてある)。レバーやフォアグラやホルモンまで・・・。

これらがわかったときの落ち込みようと言ったらなかったです。
魚が大好きなこともあって、人生最大の楽しみだった食事自体が一気に楽しくなくなりました(「Chain Eating」というサイトを持っていたくらい大食だったボクが少食になりました)。

あと、旅行がダメになりました。
魚が美味しい地方への旅は楽しくなくなりますし、なにより旅行同行者に対して「行く店に制限かかる」ので、誰かと一緒に行く旅を控えるようになっていきます。そして海外旅行も、同行者の迷惑を考えると、あまり行きたくなくなります。肉しか食べられません。そうなるとひとり旅くらいしか残っていません。

というか、誰かと一緒の外食・会食は、基本厳しいことになります。
同行者に気を遣わせるのも楽しくないし、食べられる物が極端に減るので同行者に迷惑です。

そう、一時期は仕事にもしていた(「ジバラン」というレストランガイドを主宰し、食や旅の本も10冊以上出している)外食や食べ歩き旅に行くのが困難になりました。グルメ番組や料理本を見ることすら苦痛です。

食や旅が「人生のド真ん中」だったボクにとって、そして個人の鮨教室に通って魚の捌き方をプロにならっているくらいは今後の人生で魚に重きを置いていたボクにとって、これらがかなりの確率で損なわれたことは、ちょっと筆舌に尽くしがたいことです。

今後、どうやって生きていくかレベル。

その顛末を、同じことが起こった人の参考になるように、また、予防するのはどうすればいいかみたいな視点も含めて、書いてみようと思います。

ちょっと長くなりますが、誰でも突然になる可能性があることです。
青魚で蕁麻疹が出る人は、すでにアニサキス・アレルギーである可能性もあります。
しかもその劇症版であるアナフィラキシー・ショックの場合、手遅れになったら死にます。

ぜひ自分ごととして読んでみてください。


以下に書くことは個人の経験談に基づいて素人がいろいろ調べて書いたものです。医学的に不確実なことも含まれるかもしれません。ご注意ください。できるだけ正しいと思われることを書こうと思いますが、勘違いもあるかもしれません。その場合は追記をしていきます。

※※
アナフィラキシー・ショックのアレルゲンは現在の医学では100%の特定はできません。なので「もう魚が食べられない」と書いてますが、正確に言うと「ほぼ食べられないことになった」ということです。数%の望みを捨てたわけではありません。それは後述します。

※※※
この後の追加情報は以下のブログにも書いています。同病などでより深く知りたい方はこちらも合わせてお読みください。
アニサキス・アレルギーかも?と思ったら(IgE抗体検査とプリックテスト)
アニサキス・アレルギー、食べていいモノ だめなモノ


●アナフィラキシー・ショックになった夜のこと


いまから1ヶ月半前の3月23日(金)の夜に、突然アナフィラキシー・ショックになりました。
平たく言うと「急性劇症アレルギー反応」みたいなものでしょうか。いわゆる死んでもおかしくないヤツ。よくスズメバチに刺されて亡くなったりするヤツです。ボクも死にかけました。

その夜、あるレストランに行ったのです。
妻・娘を含め、友人と5人で行きました。

そのレストランは定評ある名店で、特に何か変なものを食べた記憶もありません。美味しく楽しく食事を終え、家に帰って眠りについたのが深夜1時くらい。

で、その2時間後くらいに強烈な吐き気で目が覚め、四度ほど嘔吐しました(腹痛はなし。ただ嘔吐のみ)。
嘔吐自体、ボク的には珍しいことです。大量に飲んでも食べても吐くことはほとんどありません(鉄の胃袋を自称してました)。このときは「オレが吐くなんて珍しいな」くらいな感覚です。なんか変なもの食べたっけ??

そしたら腕や足やお腹が次々痒くなり、ポリポリ掻きながら洗面所の鏡を見たら顔が真っ赤。
アレレ?と思って服を脱ぐと全身が真っ赤で発疹が出ている。うわっと思ったけど、この時点ではまだ「強い食あたりかな」程度でした。何か食べてそれに反応してるんだろうと。でももう吐いたし大丈夫だろうと。

ただ、その数分後、息が苦しくなってきます。
喘息みたいに気管がヒューヒュー鳴り出します。さすがに「これはヤバイやつかもしらん」と思い、念のため熟睡している妻・優子を起こしたところ、起きてボクの腫れた顔を見るなり、「すぐ救急病院に行った方がいい!」と危機感を前面に押し出してくれました。

結果的にこれが命を救いました。
まぁなんとかなるだろう、とボクは考えていたので、そのままだったら死んでました。

優子は「近頃の救急外来は電話しないと受け入れてくれないから」と、すぐにネットで近くの救急病院を調べて電話をしてくれました。

ふたつめの救急病院が受け入れてくれることになり(ひとつめの病院には「その状態だと診れる医師がいない」と断られた。電話せずにそこに向かっていたら、たらい回しにされて死んでたかもしれない)、家から歩いて大通りに出て、タクシーを拾って向かいました。

「そんなにオオゴトでなかったら申し訳ない」と救急車を呼ばなかったのだけど、みなさんが上記のような症状に出くわしたら、迷わず救急車を呼んでください。いま考えたらその時点で血圧が急激に下がりまくっている上に呼吸困難寸前だったので、迷わず救急車にすべきでした。タクシーがつかまらなかったら死んでたかもしれない。

深夜の空いてる道をぶっ飛ばしてもらい、10分ほどで救急病院につきました。
受付で「血圧を測らせてください」と言われ、測ったら、「すぐ車椅子に!」となって(え?車椅子? そんなオオゴト?)、そのまま救急救命病棟へ一直線!(救命病棟? そんなオオゴト?)

聞いたら、血圧が「上が60で下が20」(下が20!)。
「ねぇ、脈打ってる?」ってレベルの血圧急降下です。いやマジでさっきまでよく歩いてたな的な(ちなみに普段のボクの血圧は「上が120、下が80」くらい)。

そんなこともあって、ベッドに寝かされた頃には朦朧としてました。息も苦しい。
救急救命病棟なので深夜なのに医師や看護師がたくさんいて、寄ってたかって注射を何本か太ももに打たれ(太ももかよ!って思った)、腕に点滴をされました。

その時点ではまだオオゴトとか思っておらず、「なんだか大勢で対応してくれて申し訳ない」と恐縮してた感じ。ただ、鼻に管を入れられて酸素吸入を受けた時点で「あれ? そんなことまで?」とようやく事態を認識しました。自分が思ってるより危ないらしい、と。

次第に気が遠くなってきて、「あー、これって死ぬのかなー、これが『死』なら意外と怖くないなぁ、思ったより自然にすぅーって死ぬもんだなぁ」とかのんびり考えてたのをよく覚えてます。まぁわりと普段から死を意識して生きてるところがあるので(小鳥さん方式)、この辺はわりと冷静でした。

意識が戻ったり遠のいたりしているうちに朝になりました。

このアナフィラキシー・ショック、死にかけるくせに「わりとすぐショック自体は収まる」のです。ステロイドの点滴をすると、すぅっと楽になっていきます。

なので、半日後にはほぼすべて正常に戻り、二日後には何もなかったように退院しました。


●このとき体内で起こっていたこと(花粉症でも同じ仕組み)


このとき、体内で起こっていたのはこういうことのようです。

※この辺の体内の仕組みについて知るには、「はたらく細胞」というマンガがとてもわかりやすかったです。
退院後に友人に教えてもらったマンガですが、「艦これ」や「とうらぶ」みたいに細胞を擬人化しているので、免疫の仕組みがすっと頭に入ってきます。

レストランで食べて体内に吸収された物質(ボクの場合はアニサキスのタンパク質)を、ボクの免疫細胞の一部(記憶細胞)が、何を思ったか「こ、これは・・・伝説のアレだ・・・『1999年7の月、空から恐怖の大王が降ってくる』っていうアレだ!」と勘違いしたんです(例えが古いw)。

で、「ついに恐怖の大王が降ってきたぁ! 破滅だぁ! アルマゲドンだぁ!」と逆上して、よく確かめずに核ボタンを押しちゃった状況。

そして大量のヒスタミンが体内に放出され、全身に発疹ができ、呼吸器も腫れ上がり呼吸を困難にし、血圧は急激に下がり、ということが複合的に起こった、ということですね。

恐怖の大王を排除するために、住んでる地球自体を破壊しちゃいそうな勢いで核爆弾を打ちまくってしまった、という。。。

完全に細胞の「誤認と逆上」です。

そして、面倒くさいのは、記憶細胞がこの「致命的な誤認」を「撃破成功パターン」として記憶しちゃうこと。
つまり、次にこの物質が体内に入ってきたら、「お、また来たな、でももう勝ち方はわかってるのだ。うははは」とばかり、いきなり総攻撃をしかけてしまうのです。

そう、次に食べたら、また死にかけます。
それも、いきなりクリティカルな総攻撃なので、もっと劇症になる可能性がある。

つまり、たった一度、あるアレルゲンに対してアナフィラキシー・ショックになると、その後、そのアレルゲンに対しては常に激しく反応してしまうということです。要するに「一生治らない可能性が高い」。

これ、仕組み的には花粉症とかのアレルギーも一緒らしいです。

いままで大丈夫だった花粉を、突然「敵」だと誤認して攻撃し始めちゃうんですね。

巷では「コップの水が溢れるように、ある一定量の花粉を吸うとアレルギーになる」という説がまことしやかに言われていますが、これ、都市伝説のようですよ。そんなこと言ったら長野県の人、全員花粉症になっちゃうしw 

※【追記】閾値を超えるとアレルギーになる、という説は専門家で是認している人も多い説ですので、上記では否定しましたが、まだ正確なところはわからない、というのが現実のようです。このブログではボクの持論を書いているとご理解ください。


やっぱり、細胞の「誤認」のようです。

いままでなんともなかったのに、何かのきっかけで「敵」だと勘違いして攻撃し始めてしまう。
これの劇的に激しいのが「アナフィラキシー・ショック」という認識でだいたい間違ってないと思います。

ちなみに、なぜステロイドを点滴すると急に治るかというと、このステロイド砲、核爆弾より強力なんですね。
あっという間に「恐怖の大王」を排除します。
なので、免疫システムはいきなり安心し、静かになる、ということです。


●アレルゲン特定への道


二度とアナフィラキシー・ショックで死にかけないためには、アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)を特定し、それを体内に入れないようにしないといけません。

ボクのアレルゲンはなんだったのか。
特定する方法は、IgE抗体検査(血液検査)、プリックテスト(アレルゲンを皮膚に刺して反応を見る検査)、食物経口負荷テスト(食べてみて反応を見る検査)などがあります。

まず、退院翌日(3月26日)に、ひとつめの「IgE抗体検査」をしました。
よく「IgE」と略される「血中抗原特異的lgE抗体検査」です。CAP RASTともいうみたい。

採血して、どの食物に対するIgE抗体がどれぐらいあるか(特異的IgE抗体価)を調べて、アレルゲンを疑うものです。
スコア(下の写真ではクラス)は0~6で、6が最高。3以上が陽性と言われています。

先に言っておきますが、このIgE抗体検査は、IgG抗体検査とは違います(ややこしい)。

後者「IgG」はテニスのジョコビッチがやって有名になった検査です(例のグルテンフリーのやつ)。
でもこれは実は「医学的根拠に乏しい」らしく、「米国や欧州のアレルギー学会および日本小児アレルギー学会では、食物アレルギーにおけるIgG抗体の診断的有用性を公式に否定しています」とのことです(→〔学会見解〕血中食物抗原特異的IgG抗体検査に関する注意喚起

なので、今現在では、IgE抗体検査が血液検査としては有用なわけですが、これがまた面倒くさいことに、100%の確度ではない、それどころか「わりと確度が低い検査である」のです。

ただ、基本検査ではあるので、まずはやりました。

3月23日の夜に食べた料理に使った食材をレストランに問い合わせて(大変親切に細かく教えていただきました。ありがとうございました)、その中で疑わしいものをリストアップし、調べていったわけですね。

卵白、卵黄、牛乳、チーズ、牛肉、エビ、サバ、トマト、ジャガイモ、タマネギ、タンポポ属、アサリ、そして、アニサキス。

この検査項目に(食べたかどうかわからない)アニサキスを入れたのは、その夜の同行者ふたりがたまたま「アニサキス症」になっていたからです。つまり、生きているアニサキスを食べて、猛烈な腹痛になっていたんですね。ひとりは病院に行き、そう診断されました。

そうなると、ボクもアニサキスを食べている可能性があります(生きているか死んでいるかわかりませんが)。
だから、項目に入れました。

ここで医師から説明がありました。

「いままでのあなたの人生で何百回と食べたものがアレルゲンでアナフィラキシーになるとは考えにくい」と。

細胞が誤認するにしても、いままでの顔馴染みを急に「敵だー!」と判断することはほぼない、と。

だから、この項目の中ではタンポポが一番怪しいと疑っていたのです。だっていままで何回かくらいしか食べてないし。

というか、23年間「食サイト」を運営し、食の本を十冊くらい書く程度にはたくさんいろいろ食べてきたボクです。しかも魚好き。アニサキスなんて、死骸やカケラを含めたら、何千と食べているはずです。だから、一応項目には入れたけど、アニサキスなんてノーマークに近かったのです。

そしたら、なんと。

IMG_2499.jpg

この写真の通り、タンポポは0で、アニサキスのみクラス5。
アニサキスのみ、圧倒的に数値が高いのです。
6が最高のうちの5です。

え? マジで?
当然、医師を質問攻めにします。

「これは・・・アニサキスがアレルゲンということですか?」
「いやぁ、血液検査ではわからないことが多いんですよ。。。アニサキスが可能性が高い、ということしか言えません」
「今まで何百回と食べたもので出ることはほぼないと聞いたのですが?」
「いやぁ、この検査だけではなんとも言えないので...」
「プリックテストをすればわかるんですか?」
「確度は上がります。でも完全特定できるわけではありません」
「とはいえ、このままだとアニサキスを疑って一生魚が食べられない人生ですよね」
「・・・そうですね」
「だったらプリックテストをしてください」
「いや、アニサキスのプリックテストは・・・アレルゲンであるアニサキスを集められないので、この病院では無理です」
「え?」
「他の病院でもほとんど無理だと思います。海洋大学とかの協力を得ないと無理ではないかな」
「ここでは無理なんですか?」
「すいませんが、無理ですね」
「・・・じゃ、自分で病院探します。紹介状とか書いていただけますか?」
「もちろん紹介状は書きますが・・・アニサキスのプリックテストなんて、やっている病院あるかなぁ・・・」

不安は募ります。
でも、この時点では「どっかでやってはいるだろう」と楽天的だったし、アニサキスでない可能性も高いと思ってはいました。
というか、信じたくないので、とりあえずジタバタしてみよう、という気分でした。


●「この患者さんは間違いなくアニサキス・アレルギーと思います」


フェイスブックにこの辺の経緯を書いたところ、いろんな情報が寄せられました(ありがとうございました)。
その中に、ボクが花火師になった(趣味で花火師もやってます)きっかけを作ってくれた女花火師がいて、彼女がとてもアレルギー情報にくわしかったのです。

で、彼女に「独立行政法人国立病院機構 相模原病院」を勧められました。
アレルギーについては、日本ではここが圧倒的に先進であり、権威だというのです。

すぐ電話しました。
IgE抗体検査でこうこうこういう結果が出たのだが、アニサキスのプリックテストをやってほしい、と。
そしたら、

「アニサキスのプリックテストですか? それはうちではやってないです」

と、あっさり。

他になにか方法ありますか? と聞いても、「アニサキスを手に入れられないのでダメ」とのこと。血液検査しか方法はない、と。

「自分でアニサキスを集めてきてもダメですか?」と粘っても、「そういうのはやっていません」と。

なんてこった・・・。
そうしたら女花火師、「日本アレルギー学会がやっている『アレルギー相談センター』に電話してみたらどうか」と次の策を授けてくれました。

すぐ電話しました。

これこれこういう経緯だと。相模原病院で断られたと。
すると、

「相模原病院でやってないとすると、日本で他にやっている病院があるとは思えませんね」
「ないんですか・・・」
「・・・そうですねえ・・・相模原病院は日本で一番なので、そこでやってないとすると・・・ちょっと難しいですね」
「そうすると、IgE抗体検査の結果を受けて、魚を食べずに一生暮らすことを選ぶしかないのでしょうか?」
「申し訳ないけど、そう思いますね・・・」

目の前が暗くなります。
講演の合間に電話したのだけど、この直後の講演で何を話したかよく覚えていないくらいはショックでした。

その結果を聞いて、女花火師も「えー・・・」と絶句します。
でもさすが彼女、友人の友人のつてを頼って、日本ではこの分野の権威と言われる先生に、ボクの検査結果を見せつつ経緯を説明し、コンタクトしてくれたのです。

そして、その先生曰く、

「この患者さんは間違いなくアニサキス・アレルギーと思います。
 対応としては"避けるしかない"という状況です」

と、わりとはっきり。

宣告です。

※【追記】その後、つてを辿ってプリックテストを受けました。そのことについてはこちらをお読みください。


●カラダが疲弊していた可能性


もちろん世の中にはいろんな制限を持って生活している人がたくさんいるので、魚が食べられないくらいでなんだ、という気持ちはあります。

また、歌手なのに声を失ったつんく♂さんや、ピアニストなのに右手を失った舘野泉さんとかのことを考えると、ボクの例などたいした喪失ではありません。

ちょっと時間は必要でしたが、いまではこの状況を受け入れ、ポジティブさを取り戻しつつあります。

また、まだ「アニサキスのプリックテスト」をやっている病院がないとは言えません。理解ある主治医を得て、そこにアニサキスを持ち込んで、プリックテストや経口検査をする手も残っています(それらをやっていたとしてもアニサキスがアレルゲンである可能性が高まるだけかもしれませんが)。

※その後、プリックテストは受けられました。そしてアレルギーが確定してしまいました。それについてはこちらをお読みください。

そして、もうひとり、アレルギーにくわしい友人がいるのですが、その友人はこう言っています。

「細胞が疲弊していて、正常な判断ができる状況ではなかったから『誤認』したのであって、細胞を正常な状態に戻せば誤認をしなくなる」

確かにその夜、ボクはかなり疲弊していました。

「さとなおオープンラボ九期」をやっている最中だったし(体力をものすごく削られる)、新刊『ファンベース』発売直後ということもあって講演も毎日のようにやっていました。また、その夜もワインを2本くらい飲んだ上に(もともとわりと酒に強い)、睡眠導入剤(レンドルミン)を飲んで寝てました。中途半端に酔うと眠れなくなるので、睡眠導入剤は必要でした。

また、今年は花粉も凄かったですよね。過去最高レベルとか。
その夜も花粉は尋常じゃなかったようです。花粉症ではないですが、花粉とアニサキスという合わせ技もあり得るかもしれない。

つまり、単なるアニサキス・アレルギーではなく、疲れやお酒やクスリや花粉なんかが複合的に絡み合った可能性はあるし、カラダの元気さを取り戻して免疫を強くすれば、焼魚くらいなら食べても大丈夫になる可能性はある。

でも、これらも、いずれにしても「賭け」なんですよね。
体調万全だから魚食べてみよう、っていう「命がけ」を何度も繰り返さないといけません。

あとは「少しずつ食べて治す」という方法もあるにはあるらしいのですが、アニサキスを毎回用意することを含めてそれが可能かどうかという問題と、その方法は「子どもには有効だが成人ではほぼ難しい」といわれているそうです。

なんか、行き場がない感じです。

※エピペンというアナフィラキシー発症時の緊急アドレナリン自己注射薬が日本でも処方されるようになり、それを持ち歩いている人もわりといますね。発症したら自分で太ももに注射を打つんです。ボクもエピペンは処方してもらおうと思いますが、いずれにしてもお店や同行者に迷惑なので、外食で魚を食べるのは避けると思います。あぁ・・・あの鮨屋にもあの割烹にもあそこのアジフライも、もう食べられないのか・・・

※【追記】ボクもその後エピペンを手に入れ、毎日持ち歩いてはいます。


さてと。
この状態がずっと続くのか・・・どうすっかなー・・・と考えて、ひとつ始めたことがあります。

ジム通いです。

ボクはストレスが溜まると美味しい鮨屋にひとりで行って楽しんでいたのですが、ふと「そういえば鮨を食べなくても平気な時期があったなぁ」と思い、いろいろ思い出してみたら、ジムに通っている時期だったんですね。

ジムで筋トレをして、筋肉を効果的に大きくしようとしている時期は、鶏胸肉などのタンパク質を重視して、外食は避けるようになっていました。鮨屋や割烹や居酒屋などにほとんど行かず、家で肉類重視の食事をしてました。

そうか、カラダ造りに凝れば、食生活の傾向が変わるので、外食が楽しくなくても生きていけるかもしれない・・・。

今は、ジム通いを再開させて、筋肉にフォーカスしています。
カラダを鍛えると気持ちもポジティブになるので、一挙両得な感じになっています。


●みなさんにお伝えしたいこと。そしてアニサキスの基本知識について


ここまで長々と読んでいただき、ありがとうございました。

みなさんにお伝えしたい「教訓」があるとすると、まず、

・アニサキスにあたるのは運ではあるが、体調が低下しているときは生魚に必要以上に気をつけろ

です。

アニサキス症になるのも運だけど、それがアレルギーになり、アナフィラキシー・ショックになるのはもっと運です。
ただ、免疫システムが疲弊していると誤認が増える可能性が上がるのは(調べてくると)どうも確かっぽい。
ならば、とりあえず予防として、その「誤認が起こる状況」を避けてほしいと思います。

カラダを疲れさすな、というのは無理なので、まず、カラダが弱っているときは、とにかく生魚に気をつけることです。

「生きているアニサキス」が内臓に入り、免疫システムを強く刺激するのが一番怖い。だから、「体調低下→生魚を避ける」くらいに考えておいて欲しい、と、今のボクは思います(アニサキスがどんな魚にいるかは後述)。


また、

・青魚での蕁麻疹や一度でもアニサキス症になったことがあるなら、すでにあなたもアニサキス・アレルギーかもしれない
・その場合、生きたアニサキスはもちろん、死骸も極力食べるな

というのも教訓かもしれません。

「ザ!世界仰天ニュース」のサイトを見ると、こう書いてありました。

東京アレルギー・呼吸器疾患研究所、渡邉医師によると、西村さんがアニサキス症にかかった時にアレルギー体質になったと仮定して、少量では反応しないような体質だったが、その後アニサキスを時々摂取していたことによってアレルギー体質が進行し、症状が起きたと考えられるという。(下線筆者)


この引用で大切なのはふたつ。
・アニサキス症にかかった時点でアニサキス・アレルギーになっているかもしれない、ということ
・アニサキスを摂取し続けるとアレルギーが進行する可能性がある、ということ

つまり、あなたが、青魚を食べると蕁麻疹が出るとか、一度でもアニサキス症になったことがあるとかいう場合、すでにアニサキス・アレルギーになっている可能性があります(「魚類摂取後に生じる蕁麻疹の大部分は, アニサキスに対するアレルギーに起因するとの考え方が主流となった」とリンク先論文では書いてあります)。

そして、「その後アニサキスを時々摂取していたことによってアレルギー体質が進行」するのであれば、とにかくアニサキスを避けることを考えることです。生きてるのはもちろん、死骸も。

生きているアニサキスを避けるためには「目視」です
幼虫といっても、1〜3cmはあるので、まずは食べる前に目でよく探してください。

ちなみに、「よく噛めば死ぬ」という誤解が広がっていますが、アニサキスはゴムのように固いと言われています。なので少々噛んでも死にません

また、酢で締めても死にません。〆サバでも生きています。考えたら胃酸に耐えるわけですから酢くらいでは死にませんよね。

冷凍も危ないです。マイナス20度以下で24時間冷凍しないと死なないそうです。そんなの家庭の冷凍庫では無理。

なので、生を食べる場合は、必死に目視するしかないですね。

死骸も避けましょう。
アニサキスは焼いたり煮たりすると死ぬわけですが、焼魚などでもよく見ると白いヒモみたいなのが見つかります。それはアニサキス。それを食べないようにすることです。
アニサキスの死骸のカケラは・・・残念ながら避けようがないですが、白っぽいカケラがあったら気をつけた方がいいかもしれません。

最後に、「アニサキスについての基本知識」を書いて、終わりたいと思います。

アニサキスは、ほとんどの魚に寄生しています。

彼らは、哺乳類であるクジラやイルカの胃腸の中で成虫になります。
そして、クジラやイルカの糞とともにその卵を海に散りばめます。

卵は海中で幼虫に孵化します。その卵か幼虫をオキアミ(小エビ)などが食べます。
で、そのオキアミなどを食べる魚やイカの胃腸の中に移って、幼虫として寄生します。
それらをまたクジラなどが食べて、鯨の胃腸の中で成虫になるわけです。まさに食物連鎖ですね。

オキアミなどを餌とする魚はとてもたくさんいます。
だから、アニサキスが寄生する魚としてはサバやイカやサーモンが有名だけど、ほとんどの魚にアニサキスは存在しているわけです。

ただ、魚の胃腸の中にいるんですね。その魚が生きている間は

でも、釣って魚が死んだりすると、クジラやイルカに食べられて死んだと勘違いするのでしょうか、アニサキスの幼虫は胃を出て身に移動します。なので我々が食べる「魚の身」からアニサキスが発見されるわけです。

※わかると思うけど、魚の内臓は決して食べてはいけません。新鮮であってもかなりの確率でアニサキスがいます。サンマの内臓とか超危ないです。

そういう意味で言うと、釣って(捕って)すぐに内臓を出しちゃえば、まだ胃にいるわけですから、身にアニサキスがいる可能性は少ないです。釣ったその場でマイナス20度レベルの冷凍をすれば、アニサキスも死んじゃうので、胃にとどまります(だから釣ってすぐ急速冷凍するマグロは身にいないことが多い)。

※【追記】その後、東京海洋大学の先生に取材したところ、魚が生きているうちに身に移動した例があるそうです。くわしく知りたい方は「アニサキス・アレルギー、食べていいモノ だめなモノ」も合わせてお読みください。

シラスなどの小さな魚はオキアミすら食べないので大丈夫という説もあります(卵は食べるかもしれないのでわかりません。【追記】卵や海中の幼虫は食べそうなのでやっぱりNGかな)。もしくはオキアミなどをエサにしないように「厳密に養殖した魚」であれば大丈夫。

あ、海を経由しない川魚は大丈夫ですね。イワナとかアマゴ。
アユは養殖を川に放したものや湖から遡上するのなら大丈夫かな。海から遡上する天然アユは危ない(鮎釣りが趣味なくらい好きなのに)。

貝にアニサキスがいるかいないかは、両説あってなんとも言えません。どうなんでしょうね。両説ある場合は避けるしかありません。

※【追記】貝はかなりの確率で大丈夫のようです。こちらの下の方に書きました。また、魚卵を書き忘れましたが、魚卵はダメっぽいです。これも左のリンク先に書きました。


大事なのは、大丈夫そうな魚があったとしても、(特に海の魚においては)100%ではないこと。
一度アナフィラキシー・ショックになってしまうと、魚を食べるのが「命がけ」になることに変わりはありません。

というか、これからいろいろくわしく調べてみたいと思っています。
どの魚にアニサキスがいて、貝とか魚卵はどうで、どのくらいの時間で魚の胃から身に移動するか、アニサキスが身にいないパターンはどういうパターンなのか、死骸が混ざり込まない方法とかあるのか、など、どうせなら研究してみたいと思います。

アニサキス・アレルギーは、QOL(Quarity of Life)に甚大なる影響を与えるオオゴトです。それにしては情報が少なすぎると感じます(このアニサキスをくわしく調べていく過程をどこかのメディアと組んで連載・出版できないかな)。


だいたい以上です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

さて、ジムに行ってこようと思います。
まだまだ人生は続くので、人生の楽しみを次にシフトしないといけません。



この後の追加情報は以下に書いています。
アニサキス・アレルギーかも?と思ったら(IgE抗体検査とプリックテスト)
アニサキス・アレルギー、食べていいモノ だめなモノ

※※
アニサキス・アレルギーはまだまだマイナーな病気ですが、逆に、だからこそ情報が非常に少ないです。
せめてこのアレルギーにかかった方が集まれる場を、ということで、フェイスブックにグループを作ってみました。この病気の方はぜひ登録してグループに参加してください。
情報交換したり、なぐさめあったり、励ましあったりしましょう。魚を食べられない人生、なかなかつらいので。
アニサキス・アレルギー友の会

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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