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ニューヨーク日記--99年6月

仕事での徹夜がわりと続き、疲れ切っていたときに降ってわいたニューヨーク出張。
おお、またニューヨークに行けるのか!(疲れは最高潮だけど・・・)
突如として頭の中に「ラプソディ・イン・ブルー」とシナトラの「ニューヨーク、ニューヨーク」が鳴り響いたのではあるが、なにしろこの4年で2ヶ月弱くらいは滞在している街ゆえ、どこか再会を喜ぶ気持ちのノリが弱い。気持ちのどこかで「またニューヨークかぁ、たまには他の街がいいなぁ」みたいな贅沢なつぶやきがある。
そんな考えでいるともう二度とこの街にこれないかもしれないよ、とは思うのだけど、そして相変わらずあの街角に佇んでみたいとは思うのだけど、どこかでノリ切らないまま、出張に出かけたのでした。
個人的なメモ程度の素っ気ない日記、かつ、読む人のことを考えずにだらだら書いている、かつ、ほとんど推敲もしていない、ですが、ニューヨーク日記--97年春ニューヨーク日記--97年夏〜また来ちゃった篇に引き続き、ちょっと書いてみました。
興味のある方は、どうぞお読みください。

6/09(水)

成田12時発JAL006便ニューヨーク行き。
同じニューヨーク線で鶴田真由と隣同士になって以来、どうもいろいろ期待してしまうボクなのだが、今回はそういうラッキーはなかった。まぁ当たり前なのだが。あ、ファーストクラスに加山雄三がいたけど、興味なし。

JALはMagicという個人専用テレビを国際線では利用できるようになったようだ。
エコノミーでも全席それがついていて、ビデオやゲームが見放題。ちょっと前までビデオ貸し出しだった映画も、すべてデジタル・アーカイブになったようで、乗客すべてが好きなときに好きな映画を楽しめるようになったのである。これはすごい。これならエコノミーでも我慢できるぞオイ状態。
ただ、たまにトラフィックジャムが起こって、画像が止まってしまう。映画がいい場面だったりすると、ちょっと興がそがれてしまうが、まぁデジタル化初期のご愛敬ということか。

時差ボケ防止のため、飛行機内では寝ないことにしているボクだが、連日の仕事疲れでちょっとグロッキー気味。でも、がんばって眠らずに映画を観る。ゲームはちょっとやってみたが、テトリス系や五目並べ・オセロ系ばかりなのでつまらない。RPGとかあればいいのになぁ。
観たのは「ペイバック」「グッドナイト・ムーン」「マイ・フレンド・メモリー」「ウォーターマン」「おもちゃ」の5本。
中では「マイ・フレンド・メモリー」が良かったな。マコーレ・カルキンの弟がいい味だしていたのと、ストーリーがありがちなお涙頂戴ではないところがとてもよし。
「グッドナイト・ムーン」(原題は「Stepmum」。こっちの方がずっとよい)はお気に入りのスーザン・サランドンはもちろんだが、ジュリア・ロバーツが意外と良かった。単なるプリティウーマンだと思っていたのに、なかなか雰囲気良し。ここでかかっていたマービン・ゲイの「Ain't No Mountain High Enough」が頭について離れなくなる。

---後で、ノースウェスト航空でニューヨーク入りしたスタッフに聞いたら、ノースウェストは「メッセージ・イン・ア・ボトル」をやっていたらしい。すごく良かったと強調していた。映画館で観ようっと---

JFK空港には午前11時過ぎに着いた。
映画を観すぎて目が痛い。座席のテレビは目に近いし。それに徹夜続きの疲れから視神経が立ち直ってないのだ。
JFKはいま全面改装中で、JALが着いたロビーはもう改装が終わっており(American航空と提携したのが大きいらしい。でも必要ないダラス便もかかえることになって経営は大変らしいが)、かなりきれい。いままでが汚すぎたとも言えるのだけど。でもこのきれいさはちょっと違和感あったかな。ニューヨークっぽくなくて。

迎えに来てくれた岡田俊二さん(ディレクター兼コーディネーター)と久しぶりの再会。ここで「お〜、久しぶりぃ!」とか言いながらハグできないところが日本人の悲しいところ(イイトコロでもある)。

車でマンハッタンへ向かう。
約2年ぶりなので、いろいろニューヨークの最新情報を聞きながら向かう。
今回のホテルは前々回に泊まった「Dumont Plaza」。34丁目のレキシントンと3rd Avenueの間。プロダクションの関係で半額近くまで値引きしてくれたようで、非常に助かる。普通なら一泊350ドルくらいするホテルだ。マンハッタンのホテルはバブル景気で軒並み100ドルほど値上がりしているらしいからとってもうれしい。
通された部屋は7階の角部屋。L字型でキッチン付き。でっかい冷蔵庫もあって専用ファクスもあって、広さは25畳くらいはあるだろうか(風呂抜きで)。下手なマンションより広いぞ、こりゃ。ただ、期待したビデオデッキやCDプレーヤーがなかったのが残念。ニューヨークの夜にゆっくりシナトラでも聞きたかったんだけど(もちろんスペクトラビジョンはついているけどね)。


とりあえず荷物を置いて岡田さんと昼飯を食べに行く。
SOHOの「バルタザール」。本格的ブラッスリーで活気が実に心地よい。サービスもわりとしっかりしていていい。ここでシーザーサラダとパイやらパスタやらを食べる。一杯だけ飲んだ白ワインが時差ボケのカラダにかなり効く。まぁでも気持ちよいけど。
でも・・・こういう店のパスタを食べると、そのまずさに、あぁニューヨークに来たなぁと実感するな。アルデンテにほど遠いこの食感!
ここで聞いた裏話をひとつ。
いま大人気の「NOBU Tokyo」のシェフはなんとニューヨークの気楽な居酒屋「リキ」のシェフだった人がやっているそうな。メートルはニューヨークの「ニュートーキョー」というカラオケ屋の店員だった人がやっているそうな。「そう思うととても行く気になれなくて」と岡田さん。まぁ「リキ」は行ったことあるけど、そうだなぁ、修行してよっぽど腕が伸びた可能性もあるけどちょっとなぁ・・・。

ソーホーは相変わらずの活気。バブルで店とか変わったかな、と思ったけど、ほぼ変わらず。 日本みたいに、バブルで儲かるとすぐ内装を大理石にしてしまったりする不見識はこちらにはない。というか、そういう内装が似合わないこともある。
バナナ・リパブリックに「HOME」部門が出来ていて、カトラリーや食器、寝具などを置いていた。なかなかセンスがいいので、早速買い込もうとするが、まぁ1日2日待ってみることにする。ニューヨークに来たばかりで気持ちが浮ついているから、真っ当な判断が出来なくなっている可能性もあるし。

岡田さんのオフィスで軽く打ち合わせをしたあとホテルに帰って、夜飯までの間、とりあえず散歩にでる。
ここで仮眠してしまうと、飛行機で寝ずにがんばった意味がない。ここで寝ないでがんばって、夜、一気に寝て、時差ボケをなくしてしまうのだ。

久しぶりのマンハッタン。
他の街なら精力的に歩いて土地勘をつけたりするのだが、もうすでにそうする必要がないくらい最初から土地勘がある。地図を飛行機内で見て予習したらあとは地図なしで街を歩けるくらいはおなじみの街なのだ。そう、もうここはボクにとって「他人の土地」ではないのだ。
ダウンタウンに向かって歩く。34ブロック歩けばHouston通りなので、そのままいつものように歩こうかと思ったが、さすがにカラダの疲れがたまっていて無理。
5ブロックほど南に下がって、西に5ブロックほど行って、また5ブロックほど北へ行って、と、一周してホテルに帰り、シャワーを浴びて荷物を整理して、それからタクシーでまたソーホーに向かった。

タクシーのラジオでビリー・ジョエルの「You maybe right」と、パーシー・スレッジの「When a man loves a woman」が流れる。
どんな曲が流れてきても、ぴったし合ってしまうのがニューヨークだ。なんでどんな曲でも似合うのだろう。このフレキシブル感はなかなか捨てがたい。

オフィスに入ってマックとアドレスを借りて、会社その他にメールを打つ。
岡田さんと夕御飯を食べる約束なので、とりあえず社外に打ち合わせで出ている岡田さんをメールを打ちつつ待つ。
メールを打ちつつ、スタッフの里見さんがわざわざ購入してくれた「うまひゃひゃさぬきうどん」にサインをしたりしつつ過ごしていたら、岡田さんは別の打ち合わせで夕飯にこれない、という連絡が入る。なので、さっき「はじめまして」をしたスタッフの松田さんと里見さんと食べに行くことになった。

場所はソーホの「安福順」。
流行のエイジアンフード。ショルダーコピーに「Asian Grocery & Noodle Shop」とある。 今日のスペシャルをもらって、最後は麺で締めたんだけど、肝心の麺がひどかった。アメリカのイタリアンのひどいパスタを思い出す味。いや、別にこれはボクがうどんの本を書くくらいだから麺に厳しいということではなくて、単にまずいのだ。
松田さんは仕事に帰ったので、里見さんとふたり、「Pravda」に流れる。ウォッカ・バー。
ふたりで7〜8杯ずつくらい飲んだだろうか、ボクは1日目だというのにわりと元気で、ウォッカ・ベースのマティーニをかんかんと開けていく。里見さんは途中からかなり酔っぱらい。結局2時くらいまで飲み続け、ふらふらになりながらタクシーで帰る。

日本での徹夜の日々が逆に功を奏したようだ。
だって、もともと超不規則な日々だったから、時差ボケをカラダが感じないようなのである。

飛行機でも寝ず、しかもあんなに飲んだのに、ホテルに帰ってもいまいち寝付かれず。
4時頃だろうか、やっと睡魔が訪れてくれた。ぐ〜〜〜〜。

Balthazar

212-965-1414/80 Spring st.

バルタザール。ソーホーにある賑わいもごちそうな本格ブラッスリー。感じのいい店内は常に客でいっぱいでテーブルとかも狭く詰め込んであるのに逆にそれが気持ちがいい。サービスもなかなかいい。料理はオイスター・バー的なフレンチアメリカン。サラダやパスタ、パイなど、いかにも「アメリカな料理」なそれはある意味非常においしい。パスタなどしっかりアルデンテでなくてそれがまたアメリカっぽくていいのだ。夜は予約で一杯のようだが、うまく入れれば、きっと楽しく食事が出来るだろう。99年6月。

Kelley & Ping

212-228-1212/127 Greene st.

漢字で「安福順」。ショルダーコピーとしては「Asian Grocery & Noodle Shop」とある。いま人気のエイジアンフードだ。場所はソーホー。その日のスペシャルを頼むのがおすすめ。一品はわりとどれもちゃんとしている。ただ、Noodle Shopとあるわりには、ヌードル系はまずい。特にトムヤムヌードル。これは麺がまずすぎる。注意。普通のお皿はわりとまともなんだけどね。99年6月。

Pravda

212-965-1414/281 Lafayette st.(bet. Houston & Prince st.)

プラウダ。数年前から評判のウォッカ・バー。キャビアとともにウォッカをがぶがぶ飲むところ。70種類のウォッカを揃えてあるらしい。カクテルも多く、ボクは「アップル・マティーニ」というウォッカベースのマティーニが気に入った。広い店内はちょっとレトロでシック。ウェイトレスにロシア人系を持ってくればもっと雰囲気なのになぁ。アフロアメリカンの太ったおばちゃんではちょっとね。99年6月。

6/10(木)

11時起床。
朝の7時に「間違い電話 by Spanish」で起こされたが、何もなかったように二度寝して、11時までぐっすり。よく寝た。
さすがにウオッカを飲み過ぎたようで、ちょっと二日酔い。
一緒に飲んだ里見さんはゲロゲロだったよう。まぁそのくらいは飲んだな。

だいたい疲れ&時差ボケの時って、こういう風にしこたま飲むと逆に体調が戻ってしまうことが多いのだけど、ウォッカが悪いのか、疲れがそれを越えてピークなのか、どうもカラダがだるい。やっぱりもうちょっと加減して飲めば良かったかなぁ。

とりあえずホテルを出て、4歳児・響子のお土産用の服を見にブルーミングデール百貨店へ。
「お土産は何がいい?」と聞いたら「ピンクのドレス!」とか言うから(女の子になってきたなぁ)、まずそれを済まそうという考え。いつも帰り際になって慌てるから先にこういうことは済ませよう。
ブルーミングデールズは相変わらず店内がわかりにくいが、確か最上階に子供服売場があったという記憶のみでひたすら上がっていったら、そこにやっぱりあった。
一通り見て歩く。売場はでかいのだが、ろくなものがないな、ここは。
かろうじてラルフローレンに可愛いジャンパースカートがあっただけ。それを買って、次にマディソン街の「ジャカディ」に見に行くことにして、店を出る。

店を出て、腹が減っていることに気がつき、とりあえず腹ごしらえ。
近いこともあって、メールでたれ込みがあった「Makita Restaurant」に行く。
いや、近いだけではなくて、二日酔い気味だから和食がいいのだ。味噌汁が飲みたくて仕方がない。
メールのたれ込み文をここに引用しよう。
「ここのランチがお薦めです(ディナーも同じメニュー有り)。焼き魚、煮魚、味噌漬け、信州焼きなどの魚定食が10種類以上で酢のものなどや味噌汁、自家製漬物がセット。値段が安いのにとても丁寧な仕事でおいしいのです。刺身以外の魚を食べるならここはマンハッタンの超穴場だと思います。小さな店ですがシェフの心意気を感じる珍しい店です」
・・・ね? 期待できそうでしょ。
セロニアス・モンクがかかっている店内はこじんまりと清潔で、アメリカの和食屋にありがちなセンスの悪さはないのだが、ウエイトレスは中国人っぽく、ちょっと不安。エセ和食か? と思いつつ、メールおすすめの魚定食を頼む。確かに10.5ドルという安価のわりに丁寧に作ってあって、来ている客もアッパーイーストっぽく上質で、なんとなくいい感じ。味噌汁も自家製の漬け物もおいしい。ただ、肝心の焼き魚の火加減がイマイチだったのが残念。全体にはいいレベルだったけど、まぁこんなものかな。

食べ終わってマディソン街の「Jacadi」へ行く。
フランスの子供服だが、日本ではまず売っていないようなデザインなので、わりと好きなのだ。ここでピンクのワンピースを見つけたから一応買って、これを響子の「メインお土産」にする。あー、とりあえずホッとした。あとは「Gap Kids」や「Guess Kids」をどこかで見ればいいかな。響子用は。でも・・・Jacadiは高いなぁ。ニューヨークはバブルの真っ最中だから、日本に比べても割安感はうすいのだ。

タクシーでソーホーのプロダクション事務所へ。
軽い打ち合わせの後、JFK空港へスポンサー、プロデューサー、ディレクター、スタイリスト、音楽プロデューサーらを迎えに行く。
昼食の魚定食はまぁまぁだったが量が少なかったので、皆が出口から出てくるまでカフェでスープやらパンやらで少し腹ごしらえをする(おやつ)。

みな、疲れた顔で出てくる。
スタイリストの宮嶋さんは、ボクの「不定期日記」の愛読者であることが判明。非常にやりにくい。アレとアレとアレが面白かったぁ、などと言われても・・・日記を読まれている人と面と向かって一週間以上生活するのはなんだか緊張するものです。

出迎えた後、そのままロケハンへ。
外光での撮影場所をロケバスで何カ所か周る。で、早々にマディソン・スクエアで撮ることに決定。ここはエンパイアもフラットアイアンビルも捉えられるから、使い勝手のいい場所である。
19時頃ホテルに戻って、今日着いたスタッフたちがシャワーを浴びるのを待った後、現地スタッフを含めたオールスタッフで夕食へ。

宮本プロデューサーがベトナム料理が食べたいというので、前から行ってみたかったフレンチ・ベトナミーズの旗手店「ル・コロニアル」へ。
お洒落な店内は客で目一杯埋まり、ぎりぎりの予約でよく取れたよな状態。ヒップホップばりばりの格好をしたエンジン(現地日本人スタッフ)が上質な雰囲気から浮きまくっている。エンジンはミッドタウン自体に馴染まないなぁ。いやマジで。(写真はエンジンと彼の愛犬。ブギとあれ、もう一匹の名前ど忘れ)
フレンチ・ベトナミーズとは「フレンチ風ベトナム料理」。アメリカ人のフランス・コンプレックスがいろんなところに見え隠れしている。エスニックな部分を削って上手にフレンチにした感じで、おいしいのだが、ちょっと中途半端な感は否めない。ポイントがない料理だ。おいしいんだけどね。ベトナム麺のフォーすら前菜のスープに組み入れて・・・なんだかな、なのだ。

食べながら、音楽プロデューサーの山崎さんと「Time Out」誌を見てジャズ・ライブを検討するも、この時期ろくなメンツが来ていないことが判明。
見たいライブがひとつもないとはどういうことだ!
でも、無理矢理いくつか候補を決めて、夜の計画を立てる。これから一週間、どのライブを見ようか・・・
ただ、今回の出張は暇な時間がほとんどないので、半分諦め気分ではある。

22時ちょっと前に山崎さんとふたりレストランを飛び出して、22時からの回に間に合うようにタクシーを飛ばす。
「The Jazz Standard」という店。わりと新しいジャズクラブだ。Vanessa Rubinという無名の人のヴォーカルなのだが、まぁ店の雰囲気を知りがてら行ってみた。
店はわりといい雰囲気。気に入った。でもパフォーマーがひどすぎる。コクも凄みも特徴もなにもなく、ちょっとジャズっぽく歌えるおねぇさん、って感じ。はずれ。こんなレベルでもアルバムが出せるんだなぁと変に感心。山崎さんとこちら在住の村田さん(美人:店にて合流)と「つまらなかったねぇ」って言いながら店を出る。
-----数日後「HMV」で見てみたら、Vanessa RubinはCDを5、6枚出していた。こんな人でもなぁって感じ。

このまま帰るのはあまりにつまらなすぎる、と、11時半の回に間に合いそうなことをいいことに、「ヴィレッジ・ヴァンガード」までタクシーで突っ走る。
で、結果から言うと、このライブがすごかったのだ。
パーソネルはJoe Lovano Quintetで、パーソネルはアルトにGreg Osby、ピアノがJason Moran、ベースがCameron Brown、そしてドラムスがIdris Muhammed。
ボクはCameron Brownを聞いたことがあるくらいであまり知らなかったんだけど、同行の二人が言うには(二人とも音楽専門家で異様に詳しい)、「Joe Lovanoはテナーの第一人者、Greg Osbyはヒップホップ・ジャズの売れっ子」ということ。うーん、新しいジャズの流れについて行っていないからなぁ・・・でも演奏は予想に反してばりばりのバップだった。
技術をしっかり持っているプレイヤーが正統派的ビバップをすると、かなりゴキゲンなのは想像に難くないが、まったくもってそんな想像すら超えてしまうレベルの演奏が聴けた。
疲れ切ったカラダの奥底になにかの塊が出来上がってくるような実感。
見事。

熱い思いのまま、明日に備えてホテルに帰る。
家その他にちょっと電話して、寝る。
AM2時。おやすみー。

Makita Restaurant

212-980-5313/1171 2nd Ave. (bet 61st&62st)

和食。ジャズが流れる清潔な店内でわりとまともな魚定食が食べられる。アッパーイーストにあるだけあってわりと客層もよく、その客たちは弁当をとっていたけど、これもなかなか良さそうだった。10ドルちょいという値段設定も魅力的だから二つ星でもいいんだけど、やっぱり日本から来ちゃうとちょっと厳しめの点数になってしまうな。マダム(?)が日本語通じなさそうなのが日本人客の不安(似非和食か?という不安)をかき立てるのが難。まぁブルーミングデールズに寄ったとき和食が食べたければ便利かも。99年6月。

Le Colonial

212-752-0808/149E 57th st. (bet Lex & 3st)

フレンチ・ベトナミーズの有名な店。期待したほどではなかったけど、まぁおいしいことはおいしい。フレンチ・ベトナミーズとは「フレンチ風ベトナム料理」。アメリカ人のフランス・コンプレックスがいろんなところに見え隠れしていて客観的に食べているとおもしろい。エスニックな部分を削って上手にフレンチにした感じで、おいしいのだが、ちょっと中途半端な感は否めない。辛みとか甘みのアジアっぽさが消えていて、かといってフレンチの旨みも特になく、ポイントがぼけているのだ。ベトナム麺のフォーすら前菜のスープに組み入れているのがイマイチわからんし。でも、味はまぁまぁいい。99年6月。

6/11(金)

7時起床。
もうちょっと寝てはいられるのだが、目が覚めてしまった。
のこのこ起き出してゆっくりバスに浸かる。身体が全体に疲れている。それと運動不足でちょっとポニョポニョしている。183センチ、83キロ。うーん。70キロ代に落としたいなぁ。
ホテルの部屋ではわりと裸族でいるので、否応なく鏡に映る自分の身体が目に入る。蝦蟇の油よろしくたーらりたらりとはいかないまでも、自意識&問題意識はできるわな。
やせよう!・・・食事量を減らさずに!(?)

9時にホテル前集合でロケハン。
室内撮影のロケセットをロケバスで見回る。クィーンズやブルックリンの方まで走り回る。途中ブルックリンで昼食。若手貧乏系アーチストがよく住まうという地区のダイナー。店の壁や天井がすべて客の絵で埋まったおもしろい店。テーブルにはクレパスが常備してあり、紙のランチョンマットに気が向いた人は描いてくれ、というシステムなのだ。
岩本ディレクターがド派手な色使いの漢字アートを描く。「忍者」とかなんとか。これは貼られるかもしれない。ブルックリンの「2nd Street Cafe」という店に行ってその絵を見つけた方はご報告を。

夕方までロケハンして、なんとか一カ所に撮影場所を決める。
ここはレンタル料が高いので予算的に厳しいが、絵としてはいいのでここにする。宮本プロデューサーはちょっと渋い顔。
一度ソーホーのオフィスに帰って軽く打ち合わせ。メールを打ってから、ソーホーをそぞろ歩く。ぐるーっと歩いてお土産とか探すがあまり気に入らず、今度はお土産目当てではなくアート目当てでぐるーと歩く。
うーむ。
ソーホーは相変わらず魅力的なのだけど、前回に感じたようなトキメキはなぜかないなぁ。どうしてかなぁ。そんなことを考えながら歩き回り、そのまま34ブロック歩いて34丁目のホテルまで帰る。この程度の歩きでもビックリする人がいるけど、マンハッタンならいくらでも歩けるぞ、ボクは。

ホテルに帰って、夕食まで風呂に浸かっていろんなことを考える。
いままでなんだかとっても「いい子」で生きてきた人生が、いまさらながらにめちゃくちゃイヤになっていて、動揺している自分。「いい子」にしていればいるほど荷物が増えてきて、もう持つのがイヤになっている自分。利己的に自分らしく生きられないならば後の生は死と同じなのではないのか・・・。こんなことを考えるのは利己的な街ニューヨークにいるせいか。

今日はバラバラに夕飯、ということだったが、結局何人か集まってイーストビレッジのチベット料理に出かけることにする。チベット難民キャンプで生まれ育った4姉妹が作っているらしい。難民キャンプで覚えた料理って・・・まずそうだが、興味はある。
で、味は、まぁ普通だったな。マンハッタンなら「チベタン・キッチン」の方がましでしょう。

みんなでいろんな話をしながら飲む。
日本から遠く東の大都会で、日本より遠く西の国の料理を食べながら、こうしておしゃべりをしている不思議。
地球が狭くなったなどというのはウソだ。距離感がなくなり空虚になっただけだ。表面をなぞって知ったつもりになっているだけ。それはボクたちの人生にも言えること。

食べ終わってから、今日は観劇へ。
オフ・ブロードウェイで「ブルーマン」「ストンプ」に続くヒットと言われている「DE LA GUARDA」(デ・ラ・グァルダ)へ。
愛称は「VILLA VILLA〜ビーシャ・ビーシャ」。アルゼンチンの方を起源とするダンスパフォーマンスらしい。ユニオンスクエアの近く、久保田利伸が住んでいるマンションのすぐ近くが会場。
始まるのが22時なのでちょっと時間があるから近くのHMVへ出かける。CDをそぞろ見ていたらなぜか写真集のコーナーがあって、そこにアラーキーの無修正版を発見! うーむ・・・無修正で見るとものすごくグロいなぁ、アラーキーは。でもちょっと前のニューヨークの下世話な活気を思い出してしまうようなパワーが出ている。いまのニューヨークは上品すぎる。キャラが違うのに。

時間になったので会場へ。
待合いのバー・スペースに客全員入れられて会場が空くのを待つ。会場に入ってみると、そこはバスケットボールコートくらいな広さで舞台もイスもなく、天井は低いところにトレペが張り巡らされている不思議な空間。立ち見で、場所はどこでもいいらしいが、一度このショウを見た岡田さんの助言もあって、ドアから一番遠い隅のあたりに立って、ショウが始まるのを待つ。
「バンジージャンプ用のゴムを使って演技者が会場いっぱいはね回る」「雨が降るパフォーマンスがあって客もずぶぬれになる」という前評判。この位置だと濡れない、とは聞いていたのだ。

内容については詳しくは書かないが、基本的には演技者はバンジーのひもを背中につけて、4階ほどの高さはあろうかと思われる最上部や横から自由自在にはね回り走り回るダンス系。
空間に効果的に浮かび、嵐のような雨の中(中央で見ているときっとずぶぬれ)、パフォーマンスをしたりする。秀逸なのはパフォーマーの格好が普通の街着であること。女性は普通のOL姿、すなわち宙を飛ぶとパンツ丸見えの状態でパフォーマンス。男性は普通のスーツ姿とかでずぶぬれになっていく。
一番感動したのはわりと最初の方でやるOLが高く垂直な壁を自由自在に走り回るパフォーマンス。
バンジーのヒモを上手に使って、まるで本当に垂直な壁を走っているように見えるのだ。これをフラッシュライトと過激な音楽で演出して、なにがどうって表現しにくいが、見終わった後、頬が涙で濡れていた。圧倒的なパワーを感じた。その走り方がまたいいのだ。がむしゃらなのだ。自分の奥底にあるパワーをすべて放出したようなそのパフォーマンスは、理屈でなくまっすぐ心に届いた。
途中の観客を含めた全員でのトランス状態ダンスは日本人には乗り切れないが、最後まで意外なほど楽しめるパフォーマンス。おすすめだ。
で、ラストのラストでもう一回、OLが垂直な壁を走ってくれた。またまた目には涙。
なんでこんなに感動的なんだろう・・・・。

観終わって、感動した心のままホテルへ。
高校生の頃に戻ったような青臭い考えが、脳味噌に明滅する。

こういうときは、ただ、寝るべし。

2nd Street Cafe

718-369-6928/189 7th Ave. Brooklyn

ブルックリンにあるコージーな感じのアメリカン・ダイナー。店の壁や天井がすべて客の絵で埋まったおもしろい店。テーブルにはクレパスが常備してあり、紙のランチョンマットに気が向いた人は描いてくれ、というシステムなのだ。採用されたら貼られるのだろう。ハンバーガーがわりとおいしい。ただし、パスタ系は絶対やめたほうがいい。99年6月。

Tsampa

212-614-3226/212E 9th St.(bet.2nd & 3rd Ave)

イーストビレッジのチベット料理。「ツァンパ」と読む。インドのチベット難民キャンプで生まれ育った4姉妹が作っていると聞いて「まずそう」と思うか「味わってみたい」と思うか・・・だって料理を覚えたのが難民キャンプでしょ? ボク自身複雑な気持ちだったがまぁまずくはない。チベット風蒸餃子「モモ」や12種類の野菜の炒め物など、和食にかなり近い味付けなのでそれなりに楽しめる。店内はなかなかお洒落で居心地はいい。酒類が普通の品揃えなのと、「チベタン・キッチン」みたいな現地感が料理にないのがイマイチ。99年6月。

6/12(土)

6時起床。くもり。
ちょっと朝の散歩でもするかな、と外に出るつもりで支度するも、意外とカラダ全体が疲れていることに気がつき、やめる。
普段徹夜などをしてかなり不規則な生活をしているせいか、時差ボケはあんまり感じないが、日本での日常の疲れが溜まっているからだろう、なんとなく「時間を無駄にせずニューヨークの刺激をすべて受け止めよう」みたいないつもの気分が出ない。
まぁこの街に馴染みすぎているのも原因のひとつ。
もう「他人」のような気がしないのだ。住んでいるに近い馴染み方をボクの精神はどこかで感じているようなのだ。

1階のカフェでベーグルを・・・と思ったら2年前とは様変わりしていて、「Sonia Rose」というわりと有名なフレンチが移転してきていた。高い朝飯をゆっくり食べる時間はなかったから外に出てホットドッグ屋台を探すが、土曜日でビジネスマンがいないせいか、いつもはいる場所にいない。土日は休みなのか、午後出勤なのか。仕方がないから空腹のまま仕事に向かう。

今日はオーディション。
14時くらいまで30人くらいの人を見る。予算が限られているせいもあってか、ちょっとレベル的にきびしいものがある。ニューヨークは予算さえあれば素晴らしいモデルとかがすぐやってくるからなぁ。
オーディションをしながらEnginが買ってきてくれたブリトーをつまみ、朝飯にする。
で、14時頃終わって、昼飯にチャイナタウンの「謎のマレーシアン・チャイニーズ」を食べに行く。
スタッフの一人が「安くてうまい!」と太鼓判を押した店だが、店名も場所もあやふや。探しながら車でチャイナタウンを走りまくるが結局見つからず。仕方がないから、2年前に好評だった「Boky's」へ。大衆食堂なのだが、おいしい中華そばや一品をひとり1000円も出したら腹が破裂するくらいは食える店。
相変わらず行列が出来るくらい流行っていて、やっと座って食べたが、ラーメンはともかく、Dugs on RiceとかPig Legs on Riceとか豚の小腸とかも非常にうまいことを知った。この店はやっぱりおすすめかも。

食べ終わって、ソーホーのオフィスへ。
日本で出されていた企画の宿題を会議室を借りて済ます。日本時間の月曜朝までにファクスしておかないといけないので、必死こいてなんとか済ます。
で、今度はPark Ave.の「Doral Hotel」まで移動して、タレントのフィッティング(衣装合わせ)。2年ぶりに合うこのジャズ界の大御所は相変わらず陽気で優しくて「Oh! Sato-san!」などとボクの名前も覚えていてくれて・・・なんともうれしくなる。ボクの名前を覚えていてくれたからというのではなく、とにかく天使みたいな人、なのだ。こういう歳のとりかたを、ボクは出来るだろうか。

フィッティングが終わったのが18時過ぎ。
とりあえずホテルに荷物を置きに帰って、夕飯の集合時間まで近くの靴屋に出かける。
この靴屋(3rd Ave. で、確か31と32の間くらい)は前前々回の出張のときに見つけて以来、なぜか必ず行く小さな店。別に特にどうってことない店なのだが、値引きしてくれたりするので、わりと買うのだ。
ボクは日本だと28〜29センチ、こっちのサイズだと9harf〜11という大足だから海外での靴購入は必須事項。今回はお気に入りのKenneth Coleをとりあえず3足購入した。
3足も、と思う人もいるかもしれないが、日本で買えない分、こういうときに買っておかないとね。スーツケースは前回買ったTUMIの特大だから靴箱も3つくらい軽くはいるしね。

夕食はギリシャ料理。
以前「エスクァイア」のニューヨーク特集でジョン・マリアーニが絶賛していたギリシャ料理店があって、そこに行きたいとボクがわがままを言ったのだ。
結論から先に言うと「大当たり」。
最初は「えー、ギリシャ料理ー?なにそれ?」と言っていたスタッフも、途中から喜悦の表情に変わった。うまい。ミッドタウンでこういう旨さに出会えるとは思わなかった。いやいや、おすすめ。今回の出張ではまだあまりおいしい思いをしてなかったんだけど、やっと溜飲を下げた。

気分良くご帰還。
風呂に浸かり、日本に電話して、本を読み、だらだらテレビを見て・・・だらだら就寝。

自堕落な気分。

Bo Ky Restaurant

212-406-2292/78-80 Bayard Street

ヌードル屋。「ニューヨークで一番美味しいチャイニーズ・ヌードル」と現地在住engin氏談。なるほどうまい。日本のラーメンとは印象を異にするが、要はラーメンなのである。スペシャルビーフやカレーがお勧め。麺はエッグヌードルかカントネーゼでしょう。おなかが減っていれば2杯くらいはひょいと入る懐かしい味。しかもばかやす。97年8月。
再訪。相変わらず流行っている。ヌードルはやっぱりうまい。ワンタンメンもなかなかだった。が、今回はほかの一品にも感心。Dugs on RiceとかPig Legs on Riceとか豚の小腸とかも非常にうまいことを知った。それぞれめちゃ下世話だが、納得出来るおいしさ。99年6月。

Molyvos

212-582-7500/871 7th Ave.(確かbet. 55st & 56st.)

タラモサラタにムサカ、スベラキくらいしかしらなかったギリシャ料理だったが、この店で目覚めてしまった。本当においしいギリシャ料理はラテン系の例に漏れずめちゃうまいのだ。ベイビー・オクトパスも、地中海の魚の丸焼きも、すずきのクミン焼きも、サーディンのマリネも、子羊のロースト・・・この店はすべて炭火を使っているせいもあってか、焼き物は本当にすべてがすべてうまかった。もちろんムサカもうまかった。メートルがしっかりしているから、よーくメニューを相談して(分かりやすい英語を話してくれる)、オーダーすればまずはずれはないだろう。食前酒にウーゾもぜひ。そして「ギリシャ最高の白ワイン」とメートルが胸張って勧めるLaas($36)もうまい! 食後のグリーク・グラッパもツイボウロなどまったくうまい! 店内は奥に広く、雰囲気はとてもいい。ミッドタウンの真ん中にしてはドレスコードもない。酒類を一通り頼むと$50くらいかかってしまうが、その価値はある店。おすすめ。99年6月。

6/13(日)

8時半起床。
今日は11時半から仕事だから久しぶりにゆっくり。明日からは連日朝早いから、今日くらいゆっくり寝ないとね。

下世話な話になるが、実に快便な毎日。
必ず毎朝、理想的な便(ちょっと黄色味でふわふわ浮く)がしっかり出る。こういうのってきっと幸せなことなのだろうなぁ、と感慨に浸りつつ、こうしてマックを打っている。
それにしてもボクのお腹には時差はないのか!? 日本でも毎朝。ニューヨークでも毎朝。うーん・・・・・

家に電話して響子(4歳)と話す。
かなり電話でしゃべれるようになったのだが、相変わらず「ピンクのドレスゥ!」と要求する。なにかトラウマでもあるのだろうか。ディズニーの悪しき洗脳のせいか?
「ジャカディで買ったよ」と言ったけど「ジャラジーって何?」とか言われて、面倒くさいから「ジェラシーのこと」と答える。そしたら「ジェマシーって?」って聞かれたから「ジェシーのママのこと」とちょっとひねったら彼女の小さな脳は混乱をきたしたらしく「ジェシーってピンク?」とかわけのわからんことを言いだす。

響子と話しているうちに、そういえばこのホテルからほど近い3rd Ave.に「Gap Kids」があったことを思い出す。「Gap」は仕立てが悪いイメージがあって嫌いなのだが、子供服のセンスはわりと好きなので、11時半の出発までの短い時間、子供服を見に行く。日曜だから11時開店だろうと思ったら、やっぱりそうだった。
で、店内をぐるりと歩くが、どうも4歳あたりって中途半端らしく、ほどんど物がない(その後いろんな店を見たが、やっぱり4歳ものってほとんどなかった)。しょうがないからホテルに帰り、仕事に出かける。

今日の仕事は音楽録り。
ウェストサイドの音楽スタジオでジャズ界の大御所ピアニストともう5年越しの仕事。さすがにすっごく親しくなっていて、いつも光栄な思いをする。なぜかボクの名前だけはしっかり覚えていてくれるし。もうちょっと英語が話せたらどんなにかいろんな話が出来たろうにと悔しい思いをいつもする。

音楽録りの合間にちょっとお願いをする。
響子(4歳)がピアノを始めて、これが親バカでなく客観的にわりと脈がありそうなのだ。ピアノ教師の優子も「こういう風に飲み込みが早い子はいままで教えてきてはじめて」などと言っているし。
で、偉大なピアニストの彼に響子への言葉を書いてほしいとお願いしたのだ。

彼はわりと悩んで、長い時間をかけて次のように書いてくれた。


to Kyoko
By the time you read this I'm sure you will be an accomplished Pianist.
But to make sure that you become that Pianist, you must practice every day.
Then you will be very pleased with the results.
Musically Yours
Hank Jones
6-13-99 N.Y.C.


ボクの、そして響子の、宝物。
you must practice every day!

そして、音楽録りが終わってから、彼は本当にそこのピアノで練習を始めたのだ。
今日はまだ練習していないから、と。
齢すでに80を越えた大御所ですら、毎日しっかり練習をしている。
練習する背中を見ながら、彼我の差を考えてしまうボクなのだった。


15時半という中途半端な時間に仕事から解放されたが、まだ昼飯は食べていない。
この前行ったイーストビレッジのチベット料理屋の前に「蕎麦屋」という名の新しい蕎麦屋があったのでそこにひとり行くことにする。タクシーで9丁目へ。「蕎麦屋」の前につくが、16時までということでいま閉まったばっかり。1時間だけ休んで17時にまた開けるみたいだからとりあえずイーストビレッジをぶらつくことにする。

イーストビレッジをこんなに細かく見て歩くのは実は初めて。
若くて安いがパワーがある。ちょっと危険なにおいが残っているのが昔のニューヨークっぽくてなかなかいい。おいしそうなレストランも多く空腹の身にはこたえるが、なにしろ夕食の約束が18時ゆえ、蕎麦なら大丈夫だが、それ以外はちょっと夕飯に差し支えるのだ。
でも18時から夕飯なのに17時に蕎麦屋に入ろうという人も変わっているよなーと他人事のように考えたりして。
バングルやらを見て歩くが結局いいのがなく、諦めて「蕎麦屋」へ戻る。

入店すると清潔でシンプルでなかなかいい雰囲気。ごてごてセンス悪く飾り立てる日本料理屋が多い中、これはなかなか評価できるかも。
カウンターに座る。大鉢に料理が盛られていてどれもいけそう。だが、あと1時間で夕飯なのでおろし蕎麦で我慢する。
出てきた蕎麦は存外いけた。あー、これならソーホーの「本むら庵」に勝つかも、とちょっと思った。ただしかなりの空腹であるのでこの評価は次回に持ち越そう。うん。でも、なかなかだったよ。

食べ終わり、夕飯に向かう(なんか変)。
音楽で一緒に仕事している千田さんが「カニ食べましょうよ!」と言うので(わりと仕方なく)出かけた。だってどうせフロリダから空輸されたりした物だろうしなぁ。
ストーン・クラブやらなにやらを殺人的に効いている冷房の中、ふるえながら食べる。このストーン・クラブ、スパイスを載せすぎていて許せない。
ジンファンデルのミルキーさとの相性はまぁまぁなカニもあったが、やっぱりクラブは西海岸じゃないとね、で話は一致。千田さんには申し訳なかったけどいまいちな夕飯でした。

ちょっとバーにでも流れたい気分だったけど、明日が早いので帰ることにする。
ホテルに帰ってファクスしたり電話したり。
で、こうしてマックを少々打って、風呂入って寝た。

26時くらいだったかな、寝たの。疲れているわりに寝つき悪し。

Soba-ya

212-533-6966/229 East 9th st.(bet. 2nd Ave. & 3rd Ave.)

「蕎麦屋」という名前の蕎麦屋。大鉢料理の一品も充実していて、蕎麦もなかなかのレベル。かなりの空腹で訪問したので異様にうまく感じられたのかもしれないが、ボクはとてもいい蕎麦だと思った。店内は清潔でインテリアのセンスもいい。店員はすべて日本人で法被状のものをセンスよく着こなしており許せる。地酒も豊富に置いている。99年6月。

★ City Crab

212-529-3800/235 Park Ave. South(たぶん19st.の角)

カニのCrabとClubをかけているわけですね<店名。まぁマンハッタンで食べるカニに期待などしないけど(どうせフロリダやボストンからの空輸でしょ)、それにしてもさ、のレベルだった気がする。大味の身にスパイスどっさり。ストーンクラブはなにを食べているのかわからない味。オイスターやクラムチャウダーもいまひとつで、これだったらグランドセントラルの「オイスターバー」の方が数倍うまい。一晩損したかなぁ気分。99年6月。

6/14(月)

今日は次のロケのロケハン。
いや、次の別の仕事のロケがニューヨークでやる予定があって、その取材をかねたロケハンにフィラデルフィアの近くまでへ行かないといけないのだ。たまたまその仕事もこのメンバーと全く一緒の予定だからこりゃ好都合、と無理矢理ロケハンをスケジュールに組み込んだわけ。

朝8時ホテル出発。
片道2時間の小旅行。狭いロケバスで寝れもせず、ひたすら単調な窓外を眺める。圧倒的に睡眠時間が足りない生活をここ1ヶ月くらいしているのに、寝れないんだよね。おかしいな。車の中では寝れそうなものなのに。

途中のドライブインでハンバーガーの朝食を取った後、フィラデルフィア近郊の研究所を取材&ロケハン。昼過ぎに終了し、一路来た道を引き返す。
明日から本番だからプロデューサーとかは準備に気が気ではないのだ。
14時半頃マンハッタンに帰りつく。ホテルで一度解散。プロデューサーとかは明日の準備にオフィスに向かう。本番前はやることがないスポンサーとエイジェンシー(ボク)とディレクターは夜飯を三人で食べる約束をして、それまで自由行動に。
現金が切れてきたので「City Bank」に行き円をドルに換える。勝手は分からないし英語も専門的なのはまるでダメなのでかなりとまどうが、とにかく列の最後に並び(これがまた15時に閉まるらしく長蛇の列)、窓口でいろいろ聞いて手続きをする。ボクも度胸がついたもんだよ。

グランドセントラルの近くでさすがに腹が減り、「立ち食いうどん」の幟にふらふらとうどん屋に入る。ホットドッグでも良かったんだけど、こういう表示があると入っちゃうよねー。
でも、山菜うどん・・・激まず! まいった。

その後、5番街を北上し、「F.O.シュワルツ」でお土産用に「スターウォーズ エピソード1」の小さな人形を買い込む。アメリカでは公開したばかり。でも日本ではまだ未公開、というタイミングなのでわりといいお土産だろう。会社の人たちに配るのにちょうどいい値段(4ドル)だし。

次に、アップタウンの「バーニーズ」に行く。
明日から本番なのであまり買い物は出来ないだろうし、いままでもあまり買い物の時間がなかったので、もしジャケットとかを買うなら今日しかない、と思っていたのだ。
いままでのニューヨーク出張の時は必ずいたおなじみの店員が今回はおらず、見慣れない店員と次々にジャケットを試す。スーツも欲しかったけど、裾直しに出す日程的余裕がないから今回はジャケットにする。
結局1時間ほど悩んだ末、ダナ・キャランのサンドベージュとボスの黒麻を購入した。
わりと満足。
ウィンドウショッピングしながらホテルまで歩く。
途中「COACH」で前から優子が欲しがっていたバッグを見つけ、お土産として購入。ここの赤の発色はなかなかいいしね。

ホテルについて、シャワーを浴びる。
で、スポンサーとディレクターの三人で歩いていけるイタリアンレストランへ。
歩いていけるとはいえ、ボクとしてはニューヨーク在住の人とかにいろいろ聞いたうえで厳選したイタリアン。結果的にはまたまた大当たり。そっかー、ニューヨークのイタリアンって、ちゃんとおいしい店もあるじゃん、と発見した気分。
いままでこの街でおいしいイタリアンに当たったことなかったボクとしては実にうれしい発見だったのだ。

アジア料理やエスニックはニューヨークはまず世界一レベル。なぜなら移住してきた人が移住してきた人たちを相手に料理を作っているからだ。日本のエスニックがまずいのは移住してきた人が日本人相手に作っているから。ニューヨークは違うのだ。しかも、移住してきた人たち相手だから、安い。これもうれしい。
でも、イタリアンはもう移住の歴史が長いせいか、すでにアメリカン料理になっていてどうもいただけないと思っていたわけである。
ここはいいレストラン。店は中に奥が深く、夏はテラスで、冬は暖炉前で。イタリア半島のかかとの部分、プーリア地方の郷土料理が楽しめるのだ。自家製手打ちパスタのオレキエッテが絶品。イタリアンワインの品揃えもとてもいい。

途中、スコールが降る。大雨。
うーん。明日は外でのロケなのだけど、大丈夫なのか? このごろどうも天候不良で、エンパイアステートビルのてっぺんが煙って見えない日も多い。
うーん・・・。

天候は心配ながらも、雨が降り込まないテラスレストランで満足&幸福な食事を終え、三人して小雨になった街をホテルまで歩いて帰る。
うまいイタリアンを食べた後、小雨ふるマンハッタンをほろ酔い加減の早足で歩いているこの気分は、きっと人生で得られる最高の快感のひとつなのだろうな、と妙に納得しながら。

あー、このごろ「あした死んでもいいや」みたいな気分になることが多いなぁ・・・。

ちょっと早めの23時半に「柳生十兵衛死す」を読みながら寝る。
ニューヨークでこういう本を読む違和感が面白い。

明日は本番。
天気は大丈夫だろうか・・・さっきのはスコールっぽかったから、逆に晴れる可能性もある。祈ろう。

★ Daikichi Sushi

212-953-2468/45E 45th st.(旭屋書店まえ)

まぁここに書くほどの店ではないのだけど、一応ね。マンハッタンの随所にあるチェーン店で、出前やテイクアウト用の鮨がメイン。旭屋書店の前にある店は、「立ち食いうどん」の提灯が出ていて前からやけに惹かれていた。仕事関係で昼飯を食いはぐれていたボクは救いの神とばかりに入って山菜うどんを食べてみたのだが・・・激まずだった。よっぽどしょうゆ味が恋しい&ホットドッグよりそば・うどんが食べたいという方にしか勧められない。99年6月。

I Trulli

212-481-7372/122E 27th st.(bet. Park & Lex.)

イタリアン。イタリア半島のかかとの部分、プーリア地方の郷土料理。うまい。なんといっても手打ちパスタが絶品。オレキエッテ(耳たぶ型)がすごい。乳製品を使わないのがこの地方の料理の特徴だそうで、そのせいか料理のピントが酸味中心ではかられているのでゴマカシがきかない。魚や肉の焼き加減も実に見事。イタリアワインの品揃えも圧巻だが、ここは是非プーリア地方の赤を試してみて欲しい。ボクが飲んだ「IL FALCONE」などとってもよかった。店は広く清潔(トイレを除く)、夏は滝流れる静かなガーデンでの食事も快適。ボクのニューヨークのイタリアンに対する認識を変えた店。こういうレベルの店があるなら、他も探してみたくなった。99年6月。

6/15(火)

今日は本番。
天気が気になって4時半に目が覚めるも、まだ外は暗く定かではない。
一応、まどろみに帰って5時半にもう一度、起きてカーテンを開ける。

!!!!!!!!!

なんと、大快晴だ!
朝焼けのまだ薄暗い空に、雲もまばらなその空に、アールデコ調のクライスラービルディングがぽっかり浮かび上がっている。
晴れ男、本領発揮と言ったところか。いわゆる「ピーカン」。ピーク・コンディションだ。

6時半の出発まで、ゆっくり風呂につかる。
窓から眺めたクライスラービルディングのせいか、頭の中は「ラプソディ・イン・ブルー」が鳴り響いている。ニューヨークの摩天楼を見るとこの曲が頭の中に現れるのはもう癖に近い。

今日は暑くなりそうだ。
撮影場所は、マディソン・スクエア。現場に7時前のつくともうスタッフたちはセッティングにかかっている。なにしろ最高のコンディション。今日中に撮り終わろうという強い熱意が現場に充満しているようだ。
ケータリング・サービスの用意したベーグルなどで朝飯を済まし、いよいよ本番突入!

順調に午前中の予定をこなし、昼は近くで各自取ることに。
ボクたちは何人かで近くの和食屋「Yama」へ。寿司を頼んでみたが、うーんいまいち。アメリカ人に受けるようにネタがやけに大きいだけ。「ZAGAT」で点が高い寿司屋はすべてネタが巨大な店らしい。和食に関しては「ZAGAT」を信用してはいけない。

午後もとっても順調に仕事は進み、なんと6時前に終了。すばらしい! こっちは8時くらいまでは楽勝で明るいからね。いやはや。
で、せっかくなので(なにがせっかくやら)、ソーホーあたりをそぞろ歩く。このごろはラファイエット通りの東がとても面白いと聞いたので歩き回ったが、確かにとても良い。あー、もっと早く来れば良かったと後悔する。
鞄屋の「Amy・8・Chan」とかをひやかしつつ、歩く。

夕食は明日の撮影の準備に忙しいスタッフと分かれて、スポンサーと音楽プロデューサーと二日目にジャズライブに一緒に行った村田さんの4人でまたまたイタリアンへ。「Le Madri」という店。岡田さん絶賛のレストラン。
7番街の18丁目にしてはめちゃめちゃお洒落な作りで雰囲気はとてもいい。料理もそれぞれこなれていて全体に上品な仕上がり。ただインパクト的には前の日に行った「I Trulli」の方が上。ボクは大人しい料理という印象を持った。パスタがイマイチだったのが特に痛い。

寺島靖国氏(!)のジャズライブ行きをアテンドしないといけない村田さんと別れ、我々は「Iridium」に「The Jazz Messengers, A tribute to Art Blakey」を聴きに行く。ここは前回レス・ポールのライブを聴きに来たところ。
看板を見ると、おいおい、まだ毎週月曜にライブやってるじゃん、レス・ポール。彼はもうすぐ死んじゃうからすごい価値があるって言ったのは誰だったっけ山崎さん、あれから1年半、生きてるじゃんよ、などと山崎音楽プロデューサーを責めつつ、店に入る。
ベニー・ゴルソンを中心としたジャズ・メッセンジャーズはイマイチかと思ったらこれまたいい出来で、最後にお決まりの「チュニジアの夜」をやったときは泣けました、はい。

外ロケが順調に終わった開放感もあって(明日も撮影あるんだけどね)、わりと気分良くバップの世界に浸り、ホテルに帰る。
上機嫌。
日本に電話などして、寝る。
明日は本番二日目。わりと早いのだ。

Yama

212-475-0969/122 E. 17th st.

まぁこんなもんかな、の和食屋さん。ネタが大きい寿司はアメリカ人好みなのでしょう。でもバランス・味ともに日本人の舌には合わない。少なくともボクの舌には。他に定食類は充実しているが、同行の人が取ったのを見ている限り、うーんレベル。カツ丼とかも味はしつこいようだった。特に行く必要はない。99年6月。

Le Madri

212-727-8022/168 W 18th st.(corner of 7th Ave.)

イタリアン。高級系。店内は広く、テラスも気持ちがいい(駐車場しか見えないけど)。7番街の18丁目にしてはめちゃめちゃお洒落な作りで雰囲気はとてもいい。料理もそれぞれこなれていて全体に上品な仕上がり。ただインパクト的にはちょっと弱い。ボクは大人しい料理という印象を持った。パスタがイマイチだったのが特に痛い。10点満点なら8点かな。いい店だけどもうひとつパワーが欲しい。こういう軽さがニューヨーカーには求められるのでしょうか。99年6月。

6/16(水)

本番二日目。
今日は室内撮影だから天気は関係ないのだが、これまたピーカンもいいとこ。
めちゃめちゃいい天気の中、室内にこもるのはなんだか損をした感じだ。

場所は5番街の79丁目。
とてもいいところなんだけど、室内だからねぇ・・・
撮影は非常に順調。昼飯は室内でケータリング・サービスのもの。わりといけるが、日本人を意識したのか蕎麦があって、これがマリネしてサラダにしてあるのよ。うーん。これはイマイチ。というかまずかったぞ。気遣いはうれしいけど。

で、午後4時に全撮影終了!
お疲れさん!と肩をたたき合って、ミュージシャンたちと別れがたい別れをして(8月に日本ツアーがあるっていうからまぁまた会えるよね)、撤収。

ホテルに行くロケバスを断って、ボクはひとりスーパーに向かった。
Dry Jackというチーズを買いに1st Avenue(79th st.)のスーパー、「Agata & Valentina」まで歩く。ロケ場所からまっすぐ東に20分ほど歩いたところ。とてもいい食材店だ。
そのチーズは日本ではお目にかからないということで、妻の優子の「買ってきて」という一方的命令がかかったのだが、ソーホーの有名な「Dean & DeLuca」などでは「そんな名前のチーズは聞いたことがない」と店員に言われ、いったいどうやって探したらいいのか途方に暮れていたら、コーディネーターの里見さんがいろいろ電話して「Agata & Valentina」にあることを突き止めてくれたのだ。
チーズ売場はさすがに充実していて、「Dean & DeLuca」や「ゼイバーズ」を凌ぐほど。この店はいいなぁ。他の食材もなんでも揃う感じだ。

タクシーで一度ホテルに戻り、着替えてからカメラマンのHideokiさんの事務所へ。
そこでワインでも飲みながら打ち上げをしよう、というお誘いなのだ。みんなでありがたく受ける。
チェルシー地区のとあるビルの11階にあるその事務所は、まさに雑誌かなにかの世界。北西の角を60畳くらい切り取った造りで、とってもお洒落で快適だ。
窓からはエンパイアステートビルも見える。そこで、「Le Barn Chateau Hout-Brillon 1994」「Ch. Certan 1994」「Ch. Trontanoy1995」などをばんばん飲みつつ、元モデルの白人奥様や娘さんが作る気の利いた料理を食べつつ、気の知れた仲間たちと周りを気にすることなく酔っぱらうのは誠に快感だ。

途中でバスケのプレイオフをテレビ観戦しつつ(ニューヨーク・ニックスが出ていて、NY中浮かれているのだ)、テラスからエンパイアを眺めつつ、だらだら赤ワインを23時くらいまで飲む。 かなり酔っぱらう。グラスで15杯は飲んだのでは? 1ボトル5杯くらいしかとれない注ぎ方していたから、ボトル3本は行ったということか!?
うーん・・・

一緒にいたニューヨーカーの女性に「あなたの英語はとてもわかりやすく美しい」と酔った勢いで誉められる。いったい人生を生きてきて英語を誉められたのは初めてかも。しかも発音。うーむ。一生懸命現地っぽい発音を心がけていた成果かな。とってもうれしい。

「酒蔵」というSake Barがあると聞いていたから、ひとりでちょっと行ってみようかという気になるくらいいい気分だったが、やっぱり自重することにする。
毎日あまり睡眠時間をとっていないのだ。ここで体をこわすと、日本に帰ってからの商品撮影・編集などにさしさわるし。

ホテルの部屋に帰って日本にちょっと電話したりして、寝る。

結局、今日は一軒もレストランに行かなかったな。
でも、無事、本番がすべて終了して、祝着至極。バタンキュー。

6/17(木)

今日はロケの天気予備日。
つまりは、天気が悪くなかったから、この出張はじめての「オフ」ということ。
で、朝8時半までゆっくり寝て、ゆっくり起きあがりカーテンを開けたら、なんと雨ではないか!
ロケの二日間だけ晴れるという離れ業をなしとげたということか・・・でもせっかくのオフが雨になるのもなんだかせつないものだねぇ。

お土産関係はだいたい済ましていたのと、雨の中歩き回るのも億劫なのとで、ホテルでマックを打つ。ニューヨークで感じたことを日記ではなくなにか散文ぽい表現で書こうとするも、なかなかまとまらず、ちょっと途方に暮れる。
書きたいことは頭に渦巻いているのに、難しいものだね。
もうちょっと訓練が必要なようだ。

13時くらいまでメシも喰わずパワーブックの前でうんうんしていたが、さすがに腹が減ったので出かけることにする。
MoMa(Musium of Modern Art〜現代美術館)に行きたいからそこに近い和食レストラン「鬼ヶ島」に行くことにする。
どこかダイナーでも良かったんだけど、ここはわりと評判がいいので押さえておきたかったのだ。なにしろ「手打ちのさぬきうどんがある」らしいのであるからして、ボクとしては押さえとかないといけないっしょ!
有名な「めんちゃんこ亭」と関係があるらしく、「めんちゃんこ亭」の2階にある。
店内、黒田征太郎さんのイラストだらけ。天井、壁、メニュー・・・
やっぱり征太郎さんの線は天才の線だな、と確認しつつ「今回は征太郎さんに逢えなかったなぁ」と残念に思う。いつもはニューヨーク在住なのだが、いまはちょうど日本に行っているのだ。タイミング悪し。
うどん定食を取る。
手打ちというさぬきうどんだが・・・評価不能、かな。でも東京や大阪で食べられるうどん程度のレベルは来ている(偉そう)。丼物と一緒になった定食だが、丼もいまいちで残念。本当は夜の実力を評価すべきだろうが、とりあえず一つ星かな。

そそくさと食べ終わって、MoMaへ。
メトロポロタン、グッゲンハイム、ホイットニー、フリック・・・。
美術館はいろいろあるが、毎回行かずにおれないのはMoMaだけ。あ、あと自然史美術館も行きたくなるけどね。ここ2回行っていないし。
いまやっている展示も知らず、まぁ最悪でもポロックと会えればいいや程度の期待で行ったのだが、なんといまやっているのは「ヒッチコック」。素晴らしい!
古いポスターやら、実際の絵コンテ、撮影で使われた小道具、ヒッチコックの手紙などなどなど。しばらく夢中で展示を見る。
その後、やっぱりポロックは見ておこう、と2階に上がるがいつもあったと思われる場所にポロックはなく、3階を探すももちろんなく、あれ〜ポロックはどっかに貸し出し中かなぁとがっくり肩を落とす。
社員食堂みたいだったダイナーがちゃんとしたレストラン風に変わっているのを発見。ここはなかなかいいかもしれない。

観終わってから横にあるMoMa shopへ。
そこで見つけたのはMoMa特製「ヒッチコックCD」。ヒッチコックの映画で使われた音楽を集めたCD。これはうれしいぞ・・・と思っていたら隣になんとMoMa特製「ポロックCD」!!!
これはポロックのジャズレコードコレクションから抜粋したCDで、ポロックが愛し、制作中にもかけたようなジャズ(わりとディキシー系が多かった)を収録したもの。わーい。めちゃめちゃうれしい。ポロックに会えなかったけど、これを手に入れた!

MoMaを出て5番街をそぞろ歩く。5番街、マディソン、レキシントン・・・52丁目、65丁目、43丁目、34丁目・・・
雨はやんだが、エンパイアのてっぺんは煙っている。
異国にて異邦人、孤独な瞬間。思った以上にそういう瞬間を愛していることに気がつく。
孤独に独りで死んでいく一個の物体というスタンスが、明確に心の中に浮かんでくる。

ふと気がつくとソーホーまで歩き通していた。
プロダクションのオフィスに行ってメールを打って、それから最小限スタッフでの打ち上げに出かける。
今日は韓国料理の「ウーチョン」。まぁどのガイドブックにも載っている有名店で、ボクもたしかかなり前に行ったことがある。味は・・・まぁ普通かな。いまいちに近いかも。そりゃ「カムミオ」とかの方がうまいに決まっている。

食事は適当に切り上げて、ブロードウェイに「Fosse」を見に行く。
フォッシー。超有名にして一時代を築いた振り付け師ボブ・フォッシーの振り付けの粋を集めたダンス・パフォーマンスだ。いまブロードウェイでは大人気でまずチケットは取れないだろうとのことだったけど、なんとか隅っこの方の席が取れたのだ。
感想は・・・うーん。フォッシーの振り付け自体がちょっと古くなっているのもあるが、全体に散漫で退屈。昔からフォッシーを追いかけた人とかにはうれしいかもしれないけど。
なんというか、土居甫特集をやったらある年代は異様に盛り上がるけど、それ以外はきっと乗り切れないでしょ。そんな感じ。ダンス好き以外にはオススメできない。
あ、それでも観るなら、高くても無理矢理でもいいから「正面一階席」を手に入れること。二階の隅とかでみると演出効果まるでなし。

明日でこのニューヨークもお終い。
もう一軒、バーでも行こうかなと思いつつ、いや、ホテルでゆっくりひとりで飲もうと考え直して部屋に帰る。風呂に浸かりながら遠き日本のいろんな人の顔を思い浮かべる。これだけ遠く離れると彼らが死んでいようが生きていようが関係なくなる。あるのは自分ひとり。そんな風に生きていけたら、それはそれでいいのだが・・・。

いつの間にかかなり酔っていたようだ。
ちょっと意味不明な哀しさに襲われ、ベッドに潜り込む。
ため息と共に就寝。

Onigashima

212-541-7145/43-45 W. 55th st.(bet. 5th & 6th Ave.)

「めんちゃんこ亭」の2階にある。天井、壁、メニュー・・・店内、黒田征太郎さんのイラストだらけ。一応「うどん」「すし」が売りみたい。特にうどんは手打ちらしいのだが。メニュー名はさぬきうどん。うーん、これはさぬきうどんではない。麺がとってもいまいち。でも東京や大阪で食べられるうどん程度のレベルは来ているとは思う。丼物と一緒になった定食をとったが丼もいまいちで残念。本当は夜の実力を評価すべきだろうが、とりあえず一つ星かな。99年6月。

Woo Chon

212-695-0676/8-10 W. 36th st.(bet. 5th & 6th Ave.)

ウーチョン。どのガイドブックにも載っている有名な韓国料理店。でも味的には特に驚きはない。プルコギもキムチ関係もなんだかいまいちだ。この店は奥に喫煙ルームがあって(法律的にはNGなのだが)喫煙しながら食べられるので愛煙家にはうれしい店かも。ボクは全く吸わないので逆にイヤだけど。99年6月。

6/18(金)

7時起床。
こういうまどろみのなか、プープー、ファオファオファオ、などのクラクションやらサイレンやらの音を聞く気持ちよさももう今日まで。
日本で聞いたらただうるさいだけのクラクションが、なんでこんなに魅力的に聞こえるのだろうね、この街は。

シャワーを浴びて外に散歩に出かける。
この辺からホットドッグ屋は一掃されてしまったらしく、ベイグル屋とフルーツ屋の屋台しか見あたらない。あーあ、好きなのになぁ、ニューヨークのホットドッグ屋台。

諦めて部屋に帰り、ゆっくり風呂に浸かる。
いまから長い空の旅。カラダの隅々まで洗っておかなくちゃね。

enginの運転でJFK空港へ。

今回はいままでに比べてニューヨークに対するときめきはあまりなかった。
それはたぶん「ニューヨークにひざまずく気分」がボクの中で消えたからだ。
いままではニューヨークのすべてが好きだった。
アスファルトの汚い地面にキスが出来るくらい、ニューヨークという街の魅力の「奴隷」だったのだ。
今回はそれがない。
「奴隷」ではなくなった。
ニューヨークを普通の街として見ることが出来るように、やっとなった。

そうすると、また違う気分にとらわれるようになった。

ニューヨークにいなくても、ニューヨークにいるみたいに生きることは出来るのだ。
生きている場所などもとから関係ない。
ニューヨークに刺激をもらうなどという他力本願ではなく、ニューヨークを自分の中に持って、自分の回りにニューヨークを作り出すこと・・・

そう、要は「自分」なのだ。
いくらニューヨークにいても「自分」がなければ話にならない。
自分を見失ってニューヨークに惚れても、それはニューヨークの奴隷であるだけで、「自分」ではないのだ。

ニューヨークとの別れが今回はまるで辛くない。
その状態を妙に客観的に評価しながら、後ろも振り向かずJALに乗り込むボクなのであった。




p.s.

JFK空港はデパーチャーも新しくなり、免税店には「オーパス・ワン」とかも並んでいた。199ドル。高い、よね。
機内では「恋に落ちたシェークスピア」を2度も観る。個人ビデオシステムならではの贅沢。それにしてもこの映画、良くできてるわ。何度も泣いてしまった。シェークスピアのセリフってこんなに美しかったのか・・・。セリフだけで泣ける。
あとはトラボルタの「民事裁判」をみる。いまいち。


今回気に入った言葉。
カメラのセカンドが着ていたTシャツに書いてあった言葉。

DO WHAT YOU LOVE.

これをひっくり返して「LOVE WHAT YOU DO」にしたら「自分のしていることを愛せ」となって「ニュー・シネマ・パラダイス」の主題みたいな趣になるんだけど、「DO WHAT YOU LOVE」もいいよね。

「自分」がしっかりないと、「DO WHAT YOU LOVE」は出来ないだろう。


さて。
反省している暇はない。
たった一度しかない「生」を「自分」のために、生きようではないか。
たった独りで死んでいくというスタンスを忘れずに。

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