海老蔵の「にらみ」で風邪退散! 〜初春花形歌舞伎『壽三升景清』
2014年1月26日(日) 20:53:23
ブログには書き損ねたけど、昨年末に『吉例顔見世大歌舞伎 仮名手本忠臣蔵』を、午前の部、午後の部と、違う配役で観た。
秋に志の輔らくごで『中村仲蔵』のスペシャルバージョン(前半は忠臣蔵の詳細な解説で、後半は落語)を聴き、『忠臣蔵』欲がでてしまい、通しでもう一度忠臣蔵を観たいと思っていた。だから実に勉強になったし(志の輔師匠のおかげ)、歌舞伎座新開場こけら落としの一環でオールスターキャストだったので、それはもう楽しかった。
ちなみに志の輔の『中村仲蔵』は4回目(いや、5回目かも)。
そのスペシャル・バージョンも2回目である(前回の模様はこちら)。もう『中村仲蔵』のスペシャリストと言ってもいいw あぁ今回は浪人が酒を欲しがるあたりの描写が違ったな、とか、かなりマニアックに聴いている。
で。
その忠臣蔵。
12/2に観た午後の部は、幸四郎が由良之助、玉三郎のおかる、海老蔵が寺岡平右衞門というキャスト。ここに尾上菊之助、中村七之助までが絡む若手オールスターだった。しかも落語『中村仲蔵』で語られる五段目の斧定九郎は中村獅童がやるという豪華さ。
ただ、ボクは以前に「吉右衛門(由良之助)、玉三郎(おかる)、仁左衛門(寺岡平右衞門)」という超スペシャルな舞台を2007年に観たことがあって(こちら)、ちょっと海老蔵の寺岡平右衞門がもっさり野暮ったく見えて仕方なかったんですね。
いや、実際は田舎足軽の寺岡平右衞門、もっさり見えた方がいいのかもしれないけど、あまりに片岡仁左衛門が格好よくて、それと比べて市川海老蔵、おやおやあらら、と見えてしまった。まぁ幸四郎より吉右衛門の方が好きということも手伝って、年末の『忠臣蔵』での海老蔵は、熱演だったし玉三郎との共演も美しかったけど、そんなには印象的ではなかったのでした。
あれから一ヶ月半。
初春もぎりぎりになった1/26の今日、思いもかけずチケットが手に入ったのです。
市川團十郎家に伝わる「歌舞伎十八番」のうち、あまり上演されていない「景清」「関羽」「鎌髭」「解脱」の4作品を、市川海老蔵がつないで、新作の通し狂言にしたもの。
これ、「ことほいで みます かげきよ」と読む。
三升とは、市川家の家紋(舞台左右に特別に作った一幕見席 -三升席- も掛けているのかも)。つまり新春を寿ぐ、市川家の景清、である。
ボクは『忠臣蔵』で「仁左衛門と海老蔵を比べてしまう」という野暮な見方をしたので、今回は虚心坦懐、海老蔵のエッセンスをしっかり観よう、とワクワク出かけたのでした。
いやー、それにしても、てんこもりだったなぁw
めでたい要素と新しいアイデア満載。
緞帳が團十郎が描いたものを元にしたというエビ。
そして、一番の見せ場には舞台を圧するほどの巨大なエビが出て来て(道頓堀の「えび道楽」の十倍くらい)、その前方には巨大な鏡餅まで出て来て、その鏡餅の上で海老蔵が「睨み」で決める! なんという派手さ!
その派手なクライマックス以外も常に派手。
芝雀の本格的な花魁道中はものすごかったし、大薩摩に上妻宏光の津軽三味線が合わさるし(津軽三味線奏者が歌舞伎の舞台にあがるのは歴史上初めてだとか)、ドラえもんにふなっしーにイヤミなんかもキャラとして出てくるし(笑)、海老蔵の「にらみ」は大判振る舞いだったし、中村獅童の道化はアドリブだらけでおもろかったし、桜は散るし蓮の花は舞うし舞台は豪華だし、ロビーには美しい着物を着た小林麻央がいるし(この着物)、なんというか「ザ・初春!」な艶やかさ。
特に海老蔵の「にらみ」は超多発だったなぁ(写真は他興行での海老蔵のにらみ)。
ボクは花道上手の12列といういい席だったこともあり、「いや、これ、確実に目が合ってんだろ」と思った瞬間もあった。「にらみ」は成田屋(市川家)の役者だけに伝わる邪気払いの所作で、無病息災を呼ぶらしい。なんだか風邪気味で土曜とか寝込んでいたんだけど、その風邪も一気に退散した模様。
とにかく、なんにも考えずに楽しむには超おもしろい舞台だった。サービス精神旺盛すぎw
で、海老蔵なんだけど。
この人のちょい抜けの悪い声は少し気の毒に思うのだけど、きっとそれも味になっていくだろうと思わせる華があるのを再確認。観客の目を釘付けにして息を呑ませることができる数少ない役者。年末のもっさりした印象は霧散した。これに仁左衛門の色っぽさが加わったら...(しつこい
今回はもうひとつ、思いもかけぬ知的喜びがあった。
志の輔の『中村仲蔵』の中で語られる『鎌髭』を、偶然見ることができ、ボクの中での『志の輔の中村仲蔵』がまた完成に近づいたのである。
これは海老蔵が二百数十年ぶり復活させた演目で・・・、って、もういい加減長いので、それはまた次回に書くことにしよう。
