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ダダ泣きの最終到達点。アナニアシヴィリ最後の「白鳥の湖」

2012年6月28日(木) 10:20:17

まぁね、たしかに最近よく泣いている。
仕事の間隙をぬって観劇しては感激して泣いている。泣き上戸になったのかと疑うくらいすぐ泣くw

最近で一番ダダ泣きしたのは「いわき市総合高校の演劇」かな。
これにはまいった。人が近くにいなかったら声を出していたかもしれないレベルの泣き方。

でも、昨晩もちょっとまいったな。
嗚咽まではしなかったけど、もう我を忘れて見入り、そして気がついたらホッペが濡れていた。うぅすまん。50男が泣く絵など想像したくもないだろうけど、でもね、「あーいま死ねたらいいのにな」と思うくらいは美しい瞬間がいくつもあった。こういう瞬間のためにボクは生きている。

ニーナ・アナニアシヴィリ、グルジア国立バレエとの来日公演。
どうやら彼女が踊る最後の「白鳥の湖」らしい(来日において、かも)

会場(東京文化会館)に着いてすぐ、顔なじみのジャパン・アーツの方に「ミラクルですよ」と囁かれた。

期待は高まる。
だって、ボクはあらゆる「白鳥の湖」の中で、ニーナ・アナニアシヴィリの白鳥が一番好きなのだ。

というか、ボクのバレエの原体験が、モスクワのボリショイ劇場でのニーナの白鳥。
本拠地で、本場の観客を前に、秋のシーズンのド頭公演。気合いの入った最高のダンスを見せてもらった。一瞬彼女が空に浮かぶ瞬間が確かにあった。そのくらい夢幻の舞台だったのである。

それ以来、彼女を超える白鳥を探してはいる。
何十回と白鳥を観た気がするが、でも、何度観ても、どれも観ても、彼女がベスト。彼女を超える白鳥に出会っていない。彼女の白鳥も何度も観たが、すべてが素晴らしい。

でも今回はまた成長が感じられた。49歳にして到達した頂上。そんな感じの舞台だった。
グルジア国立バレエは熱演ではあったけどちょっとヘタクソだったが、でもそんなの気にならない。彼女が出てくるだけで眼福だ。

昨晩はバレエ・スタジオから始まる現代解釈の「白鳥の湖」だったが、湖のシーンからはいつもの白鳥。
彼女の登場以降はもう文字通り「目を皿にして」観た。まばたきするのを惜しんだ。

最後に彼女のダンスを観たのは、同じくグルジア国立との「ロミオとジュリエット」で、このときは計5回観に行ったのだが、足の故障を押しての壮絶なダンスに感涙したものである。

でも、今回は本当に「ミラクル」だった。
あらゆる所作がきっちり決まり、手先から足先まで柔らかく優雅に表現され、バレエ・パンフに雑文を寄せたことがあるライターがこんなことを書いてはいけないが「筆舌に尽くしがたい」ダンスだったと個人的には思う(←思い入れがずいぶん入ってはいるが、思い入れのない人生なんてつまらない)。

たとえばリンク先に彼女の黒鳥のパ・ドゥ・ドゥ動画があるが、このダンスも充分素晴らしいが(この安定感と表現力を見て欲しい!)、でも、これでもまだ「カタイ」と感じてしまう。そんな感じ。
手・腕の柔らかい表現が今回は図抜けていて、すべての動きに余韻が残像と余韻が残る感じ。もうあり得ないようなダンスだった。これがニーナの最終にして最高の到達点か!

一幕ラストの羽ばたく腕の超絶技巧も健在で(いや、凄みを増していて)、会場中が「ハッ」と息を呑むのが感じられた。思わず声が出るのだ。そしてその声を呑み込むのだ。

そのちょっと前の歓喜のダンス(ここがボクは一番好き)もすごい。すっと空間に浮かび上がる。歓びが顔ではなくてカラダで表現されている。

二幕の黒鳥がまた強烈。
なんだこのダンス。いままで観てきた白鳥の湖はなんだったんだ。性格転換の踊り分けも素晴らしく、気持ちもどんどんのめり込む。特に二幕終盤の勝ち誇ったダンスのすごさ。安定感がここまであると、表現の方に目が行く。手先の優雅な表現の豊かさよ。

以上、3点、気がついたら泣いてました。
口をポカンと開けて、目も皿のように開いて、頬ぬらすオッサンw いいのキモくて。心を洗ってるときは他人の目などどうでもいい。

昨日は本当にバタバタだったけど、無理矢理走って観に行って良かった。

ニーナ・アナニアシヴィリ。
こんなに「いい時間」をくれて、本当にありがとう。大感謝です。49歳での到達点。一生忘れない。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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