感動! グルジア国立バレエ最終日「ロミオとジュリエット」

2010年3月15日(月) 8:24:14

感動的なステージだった。
ここんとこ連続で6本バレエを観ているが(笑)、その中でもベストな出来。実に素晴らしかった。

ニーナ・アナニアシヴィリや岩田さんが出ることもあって、東京公演の5回を皆勤賞してしまったグルジア国立バレエ。昨日はその最終日。よかったなぁ。演目は「ロミオとジュリエット」だった。

この、ラブロフスキー振付の「ロミジュリ」について、岩田さんはブログでこう書いている。

ラブロフスキーの「ロミオとジュリエット」はクラシックバレエ最高の名作の一つでしょう。現在色々な「ロミオとジュリエット」がありますが、これはその中でも最も古い作品で、他の大半の作品はこのラブロフスキーのバレエをもとにしてあります。
要するにバレエ「ロミオとジュリエット」の原型ですね。
時代背景、役の設定、音楽の使い方など、素晴らしいの一言です。
この、めったにやらないラブロフスキー版、それだけでうれしいところ、昨日は最終日ということもあってか、出演者全員ものすごい熱演だった。「開演前に全員で決起集会開いてました」(関係者談)というように、ものすごく気合いが入っていた。触れば火傷するような熱い舞台。どうやらNHKで放映されるらしいけど、生で見ないとわからない熱さかも。

実は、「ブログを読んで、バレエ初めて行きます」という方も多く来ていたし、友人たちもずいぶん見に来ていたので、勧めた手前「イマイチの出来だったらどうしよう…」と責任を感じてたんだけど(チケット安くないし)、それも杞憂に終わった。一般的ライブパフォーマンスとしても最高レベルだったと思う。多忙中時間を作って見に来た松井官房副長官(コンサートに通っている数は半端じゃない)は「ライブパフォーマンスとしてはクライバーの『椿姫』と並んで生涯ふたつに入る」とさえ。うれしいな。

もちろん、グルジア国立バレエ自体は一流とは言えない。ニーナはもちろん、ウヴァーロフ、岩田さんといったゲストの力がかなりの部分を占める。でも、昨日はみんなの心がひとつになっていて、奇跡的な舞台になっていたと思う。

白眉はやはりニーナとウヴァーロフ。第一幕の中庭場面のパ・ド・ドゥの美しさは魂抜かれた。そして結婚式の場面。アラベスクで長く静止するんだけど、一瞬世界が止まった。ラストの場面は、あまりバレエに馴れない15歳の娘(昨日は家族で観劇)も「泣けた」とひと言。いや、ほんと、昨日はロミオやジュリエットやマキューシオの心がよく伝わってきたいい舞台だったな。踊りの技術よりも心が伝わってくるこういう舞台がたまにあるからバレエはやめられない。

実はニーナは本当に調子が悪かったらしい(岩田さん談)。
来日初日ですでに足を引きずっていたという。10日の「ジゼル」でも右足が相当悪かったようで、とても公演が出来る状況ではなく、代役まで考えたとか。でも整体でなんとか治し、ギリギリの状態で出演していたらしい。13日のさなメモでボクは、

ただ、昨晩は、ニーナの調子がイマイチだったかも。いや、安定度は素晴らしかった。でも躍動感があまりなく、まとまりの良さばかりが感じられた。第三幕が始まるのが妙に遅れたので「まさかニーナの足が悪化した?」とか心配したくらい。
と勝手に想像して書いたが、これは本当にそうだったらしい。第三幕前に「急遽代役を」と騒ぎになっていたくらい足の調子が悪かったんだって(結婚式のアラベスクで静止する場面でまた痛めたらしい)。

昨日の公演も出演が相当危ぶまれたらしいが、整体がうまく行き、足も引きずらず会場入りしたとか。
いままでの不調を取り戻すかのようなラスト・ジュリエット。もう本当にこの役やらないの?ってもったいなく思うほど。第一幕の天真爛漫さ、第二幕の清楚さ、第三幕の悲嘆、どれをとってもジュリエットの心が直接伝わってくる。至福だった。

ウヴァーロフも渾身の演技。まったく隙なし。溜息の出るようなジャンプとリフト。190センチ以上あるのに鈍重さが全くない。リフトの安定感は一昨日のマチュー・ガニオと比較できたから特に感嘆した。これってさりげなくやってるけど実は超絶だ…。

そして岩田さん! 「途中で一回こけそうになりましたー」と後で笑っていた第一幕のバリエーション。そんなこと気づきもしなかったくらいキレもよくいいダンス。で、第二幕のマキューシオが死ぬ場面。刺されてからが実に長い演技なのだけど、3回の東京公演で一番いい「死に方」だった。

公演前、岩田さんと飲みに行ったとき、「佐藤さん、死に方がよくわからないんですよ。死ぬときってどうなるんでしょうねぇ」と質問をされたんだけど、答えようもなく(笑)。でも、「『傷だらけの天使』のとき、ショーケンが『撃たれたとき、映画みたいに格好よく死ぬわけない。イタタタタと奇声を上げて格好悪く死ぬのが本当だ』みたいなことを言ってたよ」とだけは伝えた。それを少し活かしてくれたのか、本当に痛そうに、ちょっと格好悪めに死んだ。迫真の演技。

全体的にダメダメだった東京ニューシティ管弦楽団の演奏も、昨日はなかなか。
金管とかは相変わらずちょっと…だったけど、かなり迫力ある演奏だった。岩田さんも「初日からどんどん熱い演奏になっていった」と褒めていた。きっと成長している過程なんだろうな。昨日は指揮者(ダヴィド・ムケリア)も燃えていたようで、「テンポがどんどん速くなり、踊りが追いつかないくらいだった(岩田さん)」とか。でもその分、熱は伝わってきた。

と、こんな感じで、すべてがうまく回って、奇跡的なステージに。
お客さんたちもかなり熱い反応だったので、ステージ上もどんどん熱くなる。このインタラクティブさがたまらない。やっぱり舞台は「生」だなぁ。

カーテンコールはニーナの娘さんであるエレーナも出てきたり、大きな音を立てて紙テープが発射されたり、ニーナがグルジア国旗を羽織って挨拶したり、とても楽しいものになった。もちろんお客さんもスタンディングオベーション。
ニーナはもともとカーテンコールが楽しい人で、いろいろサービスしてくれる(踊ったりもしてくれる)。今回は意外とサービスがなかったので「やっぱり調子が悪いのかなぁ」と心配してたけど、昨日は最終日でホッとしたのか、サービス多めだった(笑)。決して一流とは言えないグルジア国立を芸術監督として率いた責任感からも解放されたしね。足の調子悪さを押して無事に全公演を踊り終えた安堵感もあったのだろうと思う。
ちなみに、ABT最終日のカーテンコールが観られるのでご参考までに。これなんか、サービスの極致すぎるけど。

終演後、岩田さんに会いに楽屋に行ったら、ホールみたいなスペースにビールが用意してあって、ニーナやウヴァーロフも加わってみんなで乾杯となった。ちゃっかり参加してしまった。ニーナは相当ハシャギ気味。旦那さん(元グルジア外務大臣)のスピーチや即興のテノール披露もあったりして楽しい打ち上げ。

その後、岩田さんと、家族と友人夫妻(新潟から来ていた)、そして岩田さんのマネージャーさんとで恵比寿の「焼肉チャンピオン」へ。ここには書けない裏話なども聞けて楽しい一夜。岩田さん、本当にお疲れ様。あと11年。50歳まで是非踊ってください。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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