娘は将来「談志の高座を聴いたことがある」とヒトに話せる

2010年5月 5日(水) 21:21:59

昨日はある方にお誘いをうけ、「立川志らく独演会」に家族で行ってきた。
ゲストはなんと立川談志家元。高一になる娘に談志を見せる大チャンス! 行けて良かったなぁ。この子は将来、歳をとってから「私は談志の高座を聴いたことがある」と胸を張ってヒトに話せる。それがどれだけ素晴らしいことか。娘の同年代ではたぶん相当レアな経験になるはずだ。

ボクは志ん生の高座を聴いていない。志ん朝も聴いていない。というか、10代20代にほとんど落語を聴かなかったので、聴いてない落語家がたくさんいる。でも談志には間に合った。シアワセだ。そして娘も間に合った。ラッキーなヤツである。

談志は去年の7月の独演会で「居酒屋」と「よかちょろ」を聴き、8月の立川談笑独演会のときのゲストで演った「疝気の虫」を聴いている。
8月のときは「まぁこれが最後だろうな」と覚悟した。そのときにも書いたが、それはもう落語になっていなかった(もちろん高座にいてくれるだけで客はみんな笑顔だし、ひと言ひと言に大笑いなのだが)。その数日後に入院が報じられたので、「あぁもしかしたらボクたちは談志の最後の高座を見たのではないか」と思ったものである。

それが、先月、見事に復帰。
復帰と言っても、声が出てないようで、高座も満足いく状態ではなかったようだが、でも、談志復活はうれしいニュースである。

そして昨日。
8月とは打って変わって、かなーり元気な談志の姿に触れられた。よかったなぁ。

幕があがったら、最初から高座に志らくが座っており、簡単な挨拶のあと、いきなり談志を呼んだ。ふたりの対談で独演会を始めるようである。

で、談志が舞台袖から出てきたのだが、8月のときはヨチヨチと、それこそ数センチずつ歩く感じだったのだが、今回はずっと元気。スタスタと歩いてきてさっさか高座に上がる(もちろん多少よろけてはいるが)。すごい。完全に良くなっている。復活だなぁ。

でも、対談内容はボヤキばかり(笑)

「何をしても面白くない」「何を食べても味がしない」「朝から何もすることがない。地獄だ」「困ったもんです」「そんな自分を違う自分がこの辺から見ているんだ」「落語の登場人物に感情を注入する体力がない。だからもう落語はしない」「ジョークを少し話すならできるけどね」「本当に談志のためを思うなら、こうして来てくれないほうが親切なんだ」「もう屍ですよ」「文楽が『勉強し直してまいります』といって高座を下りた気持ちがわかる」などなど。大笑いと大拍手を受けながら。

で、いったん談志が下がって、志らくの落語が始まった。演ったのは「寝床」。

やはり談志家元が見ているというのは気合いが入るものなのだろう。
いままでいくつもの「寝床」を聴いたが(だって有名演目だからね)、これはすごかった。なんだこのハイテンション。まぁもともとハイテンションな落語をする人ではあるが、それはもう絶好調。おもしろー。会場もドカンドカンと大笑いの連続だった。達者だ。すばらしい。

15分の休憩をはさんで、談志の登場。
落語はやらない、との言葉通り、ジョークをいろいろと。三十以上やったのではないか。売春婦ネタを特に多くやっていて、相当危うい下ネタも。高一の娘が隣に座っていたボクとしては冷や汗もの(笑)。途中で膝を崩して胡座にして(足が痛いらしい)、40分間、みっちり話してくれた。声はガラガラで聞き取りにくいが、頭は明晰。大笑いを取っていく。さすが。こうして笑いのパワーを受けてもっと元気になって欲しいと思う。

談志が引っ込んで、志らく。今後は「らくだ」である。お〜…。
「寝床」に比べるとちょっとテンションが落ちるが、さすがなうまさ。この人、うまいなぁ。しかし「寝床」と「らくだ」じゃ疲れたろう…。

終わってからロビーに出たら、なんと談志が立っていた。みんなに囲まれて握手とかに応えている(上の写真)。ボクも!と一瞬思ったが思いとどまった。声が聴けただけで充分です。どうもありがとうございました。

ちなみに娘には特に感慨はなかったようだが(「志の輔の師匠だよ」と言ったら「ガッテンの? へ〜」と言っていたが、その程度)、別に無理に感慨を強いることもない。いつか何かでこの夜のことを思い出してくれればそれで良い。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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