アナニアシヴィリ、日本最後(?)の「ジゼル」
2010年3月11日(木) 8:33:39
アナニアシヴィリの「ジゼル」や「ロミオとジュリエット」、空席がある、と、数日前に書いたらニューヨーク在住の方からこんなメール。
> 東京って、バレエ環境、恵まれてますよね。
> それに気づいているのか東京都民。空席? ああ勿体無い。
いや、本当にもったいないと思う。
昨日も1階席は9割の入りながら、2階席はガラガラ。あー、アナニアシヴィリ渾身の「ジゼル」が! なんか、もったいないというか、彼女に申し訳ない…。
ということで、昨日は「ジゼル」。東京では今回ラストの「ジゼル」である。
宣伝文句によると「アナニアシヴィリ、日本最後の『ジゼル』」だそうである。ホントかな。でもあり得るな。ちなみに、12日と14日に「ロミジュリ」があるが、ジュリエット役も「日本最後」とポスターに書いてあった。うーむ。来日自体が最後にならないことを祈るのみ。でも、まだ会場でチケット売っていたから、空席あるんだよなぁ…(もったいない…)。
会場は五反田ゆうぽうとホール。なんというか、ニーナが五反田に来ている、ということ自体が現実離れしている(笑)。ニーナ・アナニアシヴィリが五反田。ニーナ・アナニアシヴィリが五反田。何度書いても現実離れしている(笑)
開演前に、稽古に来ていた岩田さんと少し話した(彼は「ロミジュリ」しか出ないので)。
なんか体調が悪かったのだけど、彼と会うと途端に元気になるのでありがたい。よく「横綱の四股は魔を払う」とか言うけど、それにならうと「岩田さんとの握手&ハグは疲れを払う」である。ボクにとって。
で、「ジゼル」。
1回目は第一幕の狂気の場面に心底驚いたが、今回は第二幕のウィリのニーナの完璧なダンスに目を奪われた。なんだこの安定感。安定しすぎていて凄さがわからないほどさりげなく見える。流れるように滑らかな踊り。美しすぎる。
というか、どうしてトゥで立ってあんなに安定するのだろう。アラベスクの深いの(用語は知らない)も驚異的な安定。安定しているから「踊り」ではなく「演技」の方に気持ちが行く。だから泣ける。他にこういう経験はギエムくらいしかしたことがない。
この安定感が、逆にグルジア国立バレエのコール・ド(群舞)の不安定感を目立たせてしまったのが哀しいところ。ミルタ役のラリ・カンデラキも昨日はかなり不安定。相当不調だったと思う。どこか悪いのかと思わせるくらい。
余談になるが、「ジゼル」の第二幕を観るときによく思い出すのが、モスクワのボリショイ劇場(建て替え前)。
ザハロワのボリショイデビュー公演の「ジゼル」を観たのだが、第二幕でお墓の横にジゼルが現れる場面が、ボリショイ劇場の場合、下からのせり上がりになる。お墓のところにすぅっと下から浮かび上がるウィリ姿のザハロワ。ものすごくキレイな場面なのだが、せり上がりが手動で、それも油をちゃんと差してないらしく、「キコキコキコ」と手動で回している音が響く(笑) あれには笑った。
って、まぁそんなことはどうでもいいや。
ウヴァーロフも相変わらず良い。なんか一皮剥けた。全盛期のフィーリンやツィスカリ-ゼみたいな華はないが、プリマバレリーナを脇からさりげなく盛り上げる素晴らしいプリンシパルに成長したと思う。着地の柔らかさ、リフトの美しさなどすばらしい。演技も幸せの表現もいいが、怒りの場面が意外といいのに驚いた。ロミオ役のときはそこに注目して見てみたい。
もちろん、ニーナの第一幕の狂気の場面は今回も凄かった。今回は席が前の方だったので表情がよく見えたのも大きい。細かい表情まで完璧に演じている。気が狂って、髪をほどき、客席をゆっくり振り向いたときの恐ろしさ。ホラー映画というか……、ファンは怒るかもしれないけど、楳図かずおの描くホラー少女そっくり。マジこわい!
完璧に演じたといえば、第一幕で家から出てきた母親に見つからぬようウヴァーロフの背中に隠れた場面の演技が本当に「少女」だった。すごいなぁ…。
終了後、五反田の「江戸間」に行って軽くご飯を食べて帰った。
会社帰りにササッとアナニアシヴィリを観て、ちょこっと食べて帰るなんて、ほんと贅沢。こういった贅沢を味わわないと、過酷な東京に住んでいる意味はないと思う。グルジア国立バレエの東京公演もあと2回。ありがたいことだ。
