20世紀最後の日々、中標津にて
2009年10月17日(土) 17:01:28
約10年前。ミレニアムの年(2001年)の1月1日を、ボクは中標津(北海道)のムツゴロウさんの家で迎えた。家族でお邪魔して、20世紀最後の晩を過ごし、24時にはカウントダウンを動物王国の人たちと全員でした。ムツさん手作りの料理といいワインとで大騒ぎをしたっけ。
なんでそんなことを唐突に思い出したかというと、今週ふたつもそのことを思い出させる出来事があったから。
ひとつは広尾の「マノワ」というレストラン。
数日前に例のフリュイ・ド・メールを食べた店なのだが、ここ、中標津の「ヘイゼルグラウス・マナー」と同経営なのである。リンク先を読んでいただければわかるが、「ヘイゼルグラウス・マナー」はイギリスのマナーハウス(荘園主の邸宅)をイメージしたオーベルジュ。建物も料理も凝りに凝り、執事までついてサービスしてくれる。まだ開店まもなくに伺ったので今とはずいぶん違っているかもしれないが、外は美しく雪が降り、隣の部屋では暖炉がパチパチはじける中で、シェフ自らが撃ってきたジビエ料理を食べたのは得難い経験だった。
そのオーベルジュに行ったのが、ムツさんちにお邪魔する前日の12月30日。
「マノワ」でシェフに「ボク、ヘイゼルグラウス・マナーに行ったことありますよ。あれは確か……」と話しかけ、「はて、あれはいつだったか」と記憶を探っていたら色鮮やかにあのミレニアムの年越しの夜を思い出したのであった。思えば20世紀最後に伺ったレストランだった。
もうひとつはNHKの番組「プロフェショナル」。
録画しておいた「酪農家・三友盛行」の回(10/6放映)を先ほどようやく見たのだが、一緒に見ていた妻に「この牧場、ミレニアムの北海道旅行で行ったの覚えてる?」と聞かれ、またしても色鮮やかに思い出した。そうだ、確か「ヘイゼルグラウス・マナー」に泊まったまさにその日に立ち寄ったのだった。
当時は「酪農のカリスマ」とボクは知らず、単に(妻の専門である)チーズのおいしい牧場ということで出かけた(妻は彼のことを知っていた)。チーズを造る工場や牛舎を見学させていただき、とれたての牛乳を飲み、チーズを購入した。とても清潔で豊かな牧場だったと記憶している。あぁ、この三友盛行という人はあの牧場の人なのか!
三友盛行の「プロフェショナル」はとても面白かった。
大規模経営酪農が当然の時代に、牛の数を平均の半分以下に抑え、飼料を使わず牧草だけで牛を育てていくのが彼のやり方。生乳の量は周りの3割程度しかない。周りからはバカにされた日々であったが、飼料高騰の今、えさや設備投資の経費が圧倒的に少なく、小規模なのに逆に利益があがる彼の「マイペース酪農」は注目され、「神様」とすら呼ばれているらしい。
番組の中で、いままで牛を増やそうと努力してきた酪農家たちにこう言う。
「だからこれからはさ、増やす喜びまで来たんだから、減らす喜びに触れなきゃ」「それが結局、適正規模なのさ。それを受け入れた方がいいのさ」「自分の経済的欲求だけで走ろうと思ったらいくらでも走れちゃう。心を置いてもいいから走るっていうのが今の傾向だから。そうじゃなくてね、守るという節度の中で人はここで持続的に暮らしていくんだから」。
その言葉の上に「立ち止まり、足るを知る」と、タイトルが出る。
もっと大きくすること、もっと儲かることを望んでひたすら走ってきた日本。バブル崩壊で一度大きく挫折して学んでいるのに、まだぜんぜん価値転換が出来ていない。モノを買い大規模にやる豊かさではなく、モノを捨て適正規模でやる豊かさに移行しないといけないのは目に見えているのに。
ま、「立ち止まり、足るを知る」は、日本に向けてだけでなく、自分に言い聞かせないといけない言葉ではあるのだけど。最近ちょっと走りすぎてるから。いや、朝ランの話ではなく。
