完成しきったメディア。出来上がりつつあるメディア。

2009年10月16日(金) 7:15:17

パーティ嫌いなボクにしては珍しく、昨晩はパーティのハシゴをした。
ひとつはもうとっくに完成して成熟しきってしまったメディア。もうひとつは今まさにメキメキ成長している伸び盛りのメディア。短時間にハシゴして何だか感慨深かった。

まず18時半ごろに谷崎潤一郎賞・中央公論文芸賞の贈呈式に出かけた(@東京會舘)。
中央公論新社に知り合いがいて「ちょっと文壇系の集まりも経験してみない?」と誘われたのである。

こういう文学賞の授賞式みたいのを見に行くのは初めて。
中央公論文芸賞は村山由佳の「ダブル・ファンタジー」(谷崎潤一郎賞は該当者なし)。ボクが会場に着いたときには彼女の受賞スピーチも終わっており、歓談&立食の時間に突入していた。お、林真理子がいる。あ、渡辺淳一がいる。わ、浅田次郎がいる。と、一応文学好きなボクとしてはミーハー的なワクワクもあった。あとは編集者と思われる方が多数。銀座のクラブのおねえさまたちかなと思われるキレイドコロもわりと見かけた。華やかである。500人以上いたんじゃないかな。広いローズルームが満杯だった。年齢層は高く、48歳のボクで若い方だったと思う。伝統あるトラディショナルな賞と、それを祝うトラディショナルな方々の落ち着いた良さに溢れていた。あ、関係ないけど料理もとても良かった。さすが東京會舘。

ふと「ツイッターで書き込む人なんかいないかも」と会場から書き込んでみた。だいたい文系っぽい人自体がツイッターに少ない。文壇系はもっと少ない。というか、ほとんどいない。
で、「中央公論文芸賞・谷崎潤一郎賞 贈呈式会場に来てる。@東京會舘。ツイッター実況率ゼロ、かな?」みたいに書き込んだ。そしたらすぐに返信が入り、書評家の豊崎さんが来場していてツイッターに書いていたことを知った。この会場のどこかで書き込んでいるんだなぁ。でも会場を見渡す限りケータイとかPCとかiPhoneを手に持っている人すらいない。みんな飲み物片手に談笑している。

その光景がまさに「一変」するのは40分後。
東京會舘を出て恵比寿のガーデンプレイスにある「ガーデンルーム」に向かい、「Tweetup Tokyo 09 Fall」というパーティに行ったのである。数日前に主催者側に急に招待された。鳩山さんにツイッターを紹介した流れかな。まぁツイッター創業者もアメリカから来ているということでちょっと覗きに行ったのである。

入り口で名札に「satonao310」と書いて首にさげ、会場に入った。
狭い会場に400人くらいが詰め込まれてわんわん言ってる。もう雰囲気が違う。服装も全然違う。でもって熱気がすげー。立錐の余地もない中いろんなカルチャーが入り交じってぐじゃぐじゃになってる感じ。奥の壁際に飲み物とか食べ物が置いてあるのだが、その混沌の中を歩いてそこまで辿り着ける気がしない。圧倒的に若者が多く、ボクは上から1割って感じの年齢。かぶり物の人がいたり、NHKのカメラが入っていたり、なんつうか「今まさに出来上がりつつあるメディアの勢い」がハンパなく襲ってくる。

で、予想はしていたが、会場にいた全員がケータイとか iPhone とか PC を開いている(笑)。そして会場で起こっていることをみんながツイッターに書き込んでいる。
壇上では創業者やサードパーティの方々がスピーチしているのだけど、みんなそれを聞きつつ、隣の人としゃべりつつ、初対面の人と名刺交換しつつ、周りの人の名札をチェックしつつ、その上でケータイなどでツイッターを更新している。まさにリアル・マルチタスク。

いやぁ、なんというか、ちょっと客観的に見てたんだけど、大勢の人がリアルに集まって話しているのに、同時にツイッターに書き込んでサイバー上で別のつながりをもっていて、でもみんな意外と孤独、って感じがなんとも面白かったな。
つながりたいという情熱は強いし、実際こういうつながりが世界を変えていく部分もあると思うけど、意外とつながってない感じ。いわゆるコミュニティ系オフ会と違うのはココ。同好の士で閉じてる感じが少なく、妙にオープン。だから「つながっている」ようでいて「つながっていない」。オープンに開いている分、つながっていない。なんだか逆に新しい感覚。

ツイッター上でも、大切なこととか重要な考えとかが次々流れ去っていってしまうが、この会場でも(いい意味でも悪い意味でも)そういう感覚があったかも。簡単につながれる。でもそれは表面的で流れ去っていく。でも、流れ去るからこそいい。そんな感じ。そしてボクはこれがとても21世紀的だと思った。もちろん濃いつながりは大事。でもそれは他で持てばいい。リアルに濃くつながった「狭い自己」と、ゆるくオープンにつながった「広い自己」を同時に持つような感覚。リアルな自分と幽体離脱した自分が同時に存在しマルチタスクしているような感覚。

20世紀の匂いがする文壇系と、21世紀の始まりを象徴するようなネット先端系。
対立軸としてなかなか対照的だったかも。アナログ vs デジタル。古くからある完成されたメディア vs 最先端の今まさに出来上がりつつあるメディア。中年 vs 青年。閉鎖的 vs オープン。小説 vs 140字のつぶやき。などなど。一晩で本当に対照的な集まりを経験したなぁ。まだ自分の中で昇華できていないけど、いろいろと思うところがあった。

ちなみにボクは両方ともアレルギーなく楽しめるタイプかも。そして、もしかしたら「両方をつなぐ役割」でもあるのかとちょっと思った。年齢的にも経歴的にも。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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