荒川修作 講演会「死ぬのは法律違反です」

2008年2月 3日(日) 9:52:21

先週、荒川修作の講演会に行ってきた。
題して「死ぬのは法律違反です 〜死に抗する建築〜」。英語で言うと「Making Dying Illegal」。ご存じない方のために説明すると、荒川修作は芸術家・建築家・哲学家で、有名なのは養老天命反転地三鷹天命反転住宅かな。

彼の講演をちゃんと聴くのは2回目。1回目より荒川節に磨きがかかって自由自在だった。珠玉の言葉の連続。でも彼の講演は「荒川修作の言葉を受け止めようとする人には珠玉の言葉の連続に聞こえるが、荒川修作の言葉を受け止めようとしない人には支離滅裂に聞こえる」という特徴があるので、会場の他の人がどう思っていたかは知らない。「このオッサン、何言ってるか全然わかんねぇよ」というような顔で聞いている人が多かったと思う。

というか、明らかにボクは有利だ。
2年半前に彼が作った三鷹天命反転住宅の住宅内特別公開に参加している。つまり彼が訴える「死なない住宅」「生命の外在化」を体験・体感しているのだ。彼がバリアフリーの風潮に反対して言っている「負荷のない暮らしはかえって人を衰えさせます」という言葉も、体感してようやく心底理解した。あの住宅を体感しているといないとでは理解の度合いは違うだろう。

彼は言う。

ここに住めば普通に生活するだけで身体の細部のあらゆる細胞や筋肉の活性化が始まり、共同の免疫力や新しい感覚が出現し始めるのです。健康になり長寿になる。だから今までの建築や住居とは全く目的が違います。ここに住むには「使用法」があって、その通りに住まなくちゃならない。それほどプリミティブ(原始的)につくってあります。使用法がなくても使えるような家はもうつくってはいけないのです。
この言葉も、あそこに実際に行って、家の中を歩き回ったり体感したりするとよくわかるのだ。

というか、笑うなよ。
マジな話なのだが、その日、ひどい風邪をひいてその見学会に参加したのだ。で、約2時間あの家の中にいただけで見事に風邪が治っていた。いやホント。その顛末は昔のさなメモ(ココココ。写真も見られます)にも書いたが、あれには本当にビックリした。脳でなく、身体が勝手に反応したのである。

あの家はすごい。お金があったら買って住んでみたいな、とたまにぼんやり考える。人間の日常を「異化」してくれる家。毎分毎秒「異化」が起こるのは、ココロにもカラダにもとても大きな影響を与えるだろう。あの体験を元に彼の話を聞くといろんなことがよくわかる。いや、正確に言うと言葉や論旨はよくわからない。でも身体が納得する。「意味はわかんないけど『そうなんだ』と知っている」みたいな感覚。

荒川修作の素晴らしいところは、哲学に終わらせず、実践として「運動」にするところだ。
彼はいま高知に理想郷を作ろうと画策しているらしい。「それにはお金がいる」と衒いもなく訴える。なんでこういう素晴らしい哲学にみんなお金を出さないんだ、と訴え、営業する。その辺がユニークだし面白い。

身体は使い方次第で「生命」という現象を外在化できるのだ、と彼は訴える。だから「死なない」し、死ぬことはイリーガルなのだ、と。「僕たちは太陽だって作れちゃうんだよ。そんなことも知らないでみんな生きているんだ」。あぁ気持ちいいなぁ、荒川節。でも荒川さん、ボクも最近少しわかるようになりました。死なない、という意味が。まだ茫洋としてはいるけど。


彼の本「死ぬのは法律違反です」は死ぬのは法律違反です―死に抗する建築:21世紀への源流こちら

ちなみに、3年半ほど前に彼の講演を聴いて印象に残った言葉はこんなの。
「ヒトは形あるものに名前をつけたが、目や手から出た力みたいなものに名前をつけず、認めない。形あるものしか認めないから死ぬんだ。身体がなくなったと同時に死ぬんだ。でも身体がなくなっても人間は死なないんだ。それがおまえらバカは誰もわからない」

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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