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すし與兵衛
東京都江東区大島2-24-5
03-3682-3805
18〜22.30/水休
14000円〜
カード不可
鮨。
2006年現在、東京でトップクラスに好きな店。
江東区西大島の寂しい路地にぽつんとあるカウンター8席程度の小さな店だが、握られている鮨はすべてに工夫があり、すべての鮨ダネで別次元に連れてってくれる。新鮮さを売りにする店が多い中、この店は生ものが一切出ない。すべてのタネに酢飯に合うための仕事がしてある。そのうえ、トロとかウニとか余計な握りがほとんど出ない。旬の走りも使わない。鮨として完成が見込める質(時季)になってからちゃんと熟成させて使う。だから他の店と出る物が少しずつずれる。
というか、この店はタネを握るというより、店主である鈴木信夫さんのイメージを握っているのに近い印象。だから旬の走りなどにはあまり興味がないのだと思う。彼のイメージに合うタネしか仕入れない感じ。
作り出したいイメージが彼の中に明確にあり、その一点に向かって握りを収束させていく。
イメージに近づけられるタネしか仕入れない。
だからどのタネを握っても同じような味に完成されていく。シマアジ、マコガレイ、コハダ、ヅケ、イワシ、アユ、アナゴなど、この店の白眉はいろいろあるが、すべて味がある一点に向かって整えられている。
そういう意味では「一本調子」と感じる人もいるかもしれない。でもボクはこの首尾一貫したイメージが大好きで、鮨を食べに来るというよりは鈴木さんのイメージを食べたいと思ってこの店に来ている。タネごとの味の違いを驚きに来ているのではない。この辺は相性もあるだろうが、鈴木さんのイメージと合う人にとってこの店は極楽と化す。
鈴木さんはよく「鮨は結果ですから」という。
たとえばシマアジは「養殖です」と悪びれず言う。自分のイメージに近いなら天然物にもこだわらない。口に入った結果としておいしいかおいしくないかが問題で、使っている魚が旬だろうが新鮮だろうがどこの産地だろうが天然だろうが養殖だろうがまるで関係ないと言うのだ。酢飯とのバランスがちょうど取れた時季に、口に入ったときに結果として完成するように、そして自分のイメージに近くなるように握る。そういうことを目指しているのだろう。(鈴木さんと、酢飯や「鮨は結果」ということについて会話した日のメモ参照)
その通りだと思う。結果がすべて。
口に入ったときのタネ・酢飯・煮きりなどの一体感が鮨の命。
新鮮なだけのタネなら刺身を食べている方がうまい場合が多い。鮨という「料理」にするなら酢飯や煮きりとのバランスでタネの質・仕事を考えていくのは当然だ(有名な職人でも新鮮信仰・産地信仰などから抜けられない人は多い)。
鈴木さんは『久兵衛』で9年修行したあと一時デュッセルドルフで握り、帰国してからかなり方向を変えたと言っていた。確かに『久兵衛』とは全然違う方向性だし、炙ったり唐辛子を使ったりと、海外特有の創意工夫もある。握りは『久兵衛』っぽい小振りさだが、江戸前の仕事にまたひと工夫足して完成度を高めている。
お酒は6種類ほど厳選されて置いてあり、たいていの客が数種類を順番に楽しんで飲んでいく。
ご主人、結構すごい仕事をしているのにまったく偉ぶらず、ニコニコさばさば明るく握る。ちょっと蘊蓄を言ったりダジャレを言った後必ず照れる。その感じもとてもいい。奥さんもほがらかで親しみやすい。この店に行くと本当にくつろいで鮨が楽しめる。
あらゆる意味で一度は知っておくべき名店だと思う。飲んだら15000〜17000円くらいするが自腹でもその価値はあるだろう。
この店に通い出してから新鮮さとか魚の仕入れとかが売り物の鮨屋が急に色あせて見えて困るほどである。
苦言を言うなら、タネの温度と酢飯の温度について、もう少し気を遣って欲しいと思う。
温度、というのも鮨の一体感の重要な部分だと思うからである。
ちなみに「與兵衛」という名前は、江戸時代末期に両国で「與兵衛ずし」を起こし、握り鮨の考案者 といわれる華屋與兵衛から取ったらしい。この名前を店につける辺りに志を感じる。
04年6月初訪問。再訪多数。
※なお、この店では店主とよく話したりしているので「面割れバイアス」がかかっているかもしれません。
2006年01月03日(火) 0:21:20・リンク用URL
@satonao310