「鮨 水谷」の極上

2006年11月29日(水) 8:43:26

「あれ? 大阪かどっかに転勤したのかと思ってたよ」
と開口一番に言われつつ「鮨 水谷」。水谷さんにそんな皮肉言われるくらいは間が空いた。ていうか、年一回来れるか来れないかっていうお値段だから仕方ないんです。銀座のこの店にコンスタントに通うのは(自分の中では)10年早い。

それにしてもうまかった。凄みすらあった。
銀座に開店してしばらく、多少酢飯に塩がきつすぎる時があったのだが、昨晩はそんなこと微塵も感じさせない安定感抜群の美味。ここまで高レベルで安定していると客って別の意味でくつろぎきるのね。もう真の意味での「おまかせ」になり、身も心も預けてしまっちゃう。四の五の考えず心をすべてオープンにしてまかせきる1時間。極上だった。

ぐっと柔らかく歯の侵入を許しつつ、最後に「やっぱりいや…」と静かに抵抗を試みる煮アワビ。その抵抗時にふんわりと芳香を放出する。あぁこれ。しとやかなのに奥の方から気の強さが立ち上がってくるこの感じ。歯を入れたままずっとじっとしていたくなる。

大スズメバチの焼酎漬け

2006年11月28日(火) 6:55:40

岐阜県は瑞浪市の、とっても悪い人たちから贈り物が届いた。

過日、瑞浪市での夜、大スズメバチ(しんこ蜂)酒にやられて3日も死んだワタシに対しての挑戦状である。生まれて初めて「何も食べられない。水すらも飲めない」という状態に陥ったあの日々…。

しかもオリジナル・ラベルだよ。うぅ。悪夢が蘇る…。
ボトル全体像の写真がコレ。ラベルはコレコレを見ると全体がわかる。3つめの写真で沈んでいる大スズメバチが少し見えますね。大スズメバチを生きたまま焼酎に漬けるそうである。つまり猛毒成分が溶け出しているわけ。うぎゃ〜。精力増強に抜群に効くと言われてるらしいが、そんな精力いりませんから。というか、ボク、絶対、ハチ毒アレルギーですから! もう二度と大スズメバチ酒は飲みませんから!

「疑問」の提示

2006年11月27日(月) 21:09:27

「グレート・ギャツビー」の新訳を出した村上春樹が、毎日新聞のメール・インタビューに答えている。「今の日本人が『ギャツビー』を読むことに、どのような意味があるのか」と質問され、「現代を生きる我々にとってじゅうぶんに『同時代的である』」という意味のことを答えた上で次のように続けている。

優れた小説というのは、人に自然な疑問を起こさせ、自然な考察を要求するものです。そして読者それぞれが回答を模索し、その回答が読者にとって確かなアクチュアリティーを持つということです。どうしてニックはギャツビーという人間にうんざりしながら、彼に向かって「君は素晴らしいやつだ!」と最後に叫ばなくてはならなかったのか。その行為がどうして僕らの心を強く打つことになるのか。物語の中のそのような情景のひとつひとつの意味や成り立ちについて、あたかも「我がこと」のように真剣に考えさせられること---それこそが優れて現代的な物語の基準のひとつであると思います。

まぁ当たり前といえば当たり前のことを言っているのだが、冒頭の「人に自然な疑問を起こさせ」という部分に妙に納得してしまった。そうか。「疑問」なんだ。答えの提示でも考察の提示でもなく、「疑問」の提示なんだ。異化のしっぱなしでもないんだ。「疑問を起こさせる」んだ。つまらない小説やノンフィクションには「疑問」がないんだ。疑問がないから考察もなく、アクチュアリティーもない、と。なるほどー。

ふと手元にあった漫画「バガボンド」を読み直してみる。
あぁ「自然な疑問」にあちこちでぶつかる。考察と回答を要求され、自然と考え込んでいる自分がいる。そしてそこにアクチュアリティーが生まれていく。あぁコレか。優れた物語とか普遍性とか同時代性ってコウイウコトか。漫画も小説も一緒だ。と、ちょっと膝を打ったのでした。バシッ!


私信:こちらこそ。いつも豊かな気持ちにさせていただいています。応援してます。いつの日か、甘いの、待ってます。

美しい解

2006年11月26日(日) 10:55:05

ロバート・アルトマンとかアニタ・オディとかフィリップ・ノワレとか仲谷昇とか斎藤茂太とか灰谷健次郎とか次々と他界されてますね。季節の変わり目。みなさんもお大事に。というか今「他界」という字を思わず書いて美しい言葉だなぁと思ったです。そうか他の世界へ行ったのか。ボクもそのうち行く。どんな世界だろう。楽しみだ。


話は変わるけど、最近読んだ明るいニュースの筆頭は「東京都内の公立小中学校の校庭を、10年かけてすべて芝生にする」ってヤツ。

ヒートアイランド現象を抑制するとか、子供の運動能力を上げるとかいう面で報道されているみたいだけど、この「校庭を芝生にする」っていうコンセプトは「登校拒否が劇的に減る」という側面がある。実例も報告されている。学校に行くのが楽しくなるわけね。
シンプルで美しい解だと思う。精神論よりそういう「実質的で物理的な施策」が効くのだと思う。校庭が緑の広〜い芝生になるだけで、もしかしたらイジメだって自殺だって減るかもよ。美しいものって陰湿さを一掃するもん。「あ〜きれい!」「あ〜気持ちいい!」って思うだけでいろんな気持ちがポジティブになる。

井上雄彦「DRAW」

2006年11月25日(土) 16:24:48

昨晩、井上雄彦さんの新しいDVD「DRAW」のプレミアム試写会に行ってきた(予告編的なものはコチラ。音が出ます)。

彼がバガボンドを描いている手元をひたすら、ひたすら撮り続けた実にストイックな映像作品。
ナレーションもBGMもストーリーもない。観客はただただ彼の手元から次々と奇跡のように素晴らしい絵が紡ぎ出されていくのを見続けるのみ。退屈? いや、とんでもない。圧倒されて凍り付くとはこのことだ。久しぶりに「惚(ほう)ける」という実感を持った。なんだ?この人。モーツァルト的「神の寵愛」を感じてしまう。次郎物語的「ミケランジェロのノミ」も感じてしまう。あーすげーおーすげーと感嘆しつづけた2時間。特に単行本24巻で武蔵が伝七郎を手刀で斬る場面など、ため息のみ。
これは是非見て欲しいなぁ。漫画家志望の人は作画技術を。芸術を志す人は天才の裏側にある不断の努力を。そして我々一般人はその根気と情熱と一途な愛を。何かをやり遂げることの尊さを。マジ驚嘆し、刺激されます。

ちなみにボク的には海外で上映してほしい。できればMoMAやポンピドーで。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。