「疑問」の提示

2006年11月27日(月) 21:09:27

「グレート・ギャツビー」の新訳を出した村上春樹が、毎日新聞のメール・インタビューに答えている。「今の日本人が『ギャツビー』を読むことに、どのような意味があるのか」と質問され、「現代を生きる我々にとってじゅうぶんに『同時代的である』」という意味のことを答えた上で次のように続けている。

優れた小説というのは、人に自然な疑問を起こさせ、自然な考察を要求するものです。そして読者それぞれが回答を模索し、その回答が読者にとって確かなアクチュアリティーを持つということです。どうしてニックはギャツビーという人間にうんざりしながら、彼に向かって「君は素晴らしいやつだ!」と最後に叫ばなくてはならなかったのか。その行為がどうして僕らの心を強く打つことになるのか。物語の中のそのような情景のひとつひとつの意味や成り立ちについて、あたかも「我がこと」のように真剣に考えさせられること---それこそが優れて現代的な物語の基準のひとつであると思います。

まぁ当たり前といえば当たり前のことを言っているのだが、冒頭の「人に自然な疑問を起こさせ」という部分に妙に納得してしまった。そうか。「疑問」なんだ。答えの提示でも考察の提示でもなく、「疑問」の提示なんだ。異化のしっぱなしでもないんだ。「疑問を起こさせる」んだ。つまらない小説やノンフィクションには「疑問」がないんだ。疑問がないから考察もなく、アクチュアリティーもない、と。なるほどー。

ふと手元にあった漫画「バガボンド」を読み直してみる。
あぁ「自然な疑問」にあちこちでぶつかる。考察と回答を要求され、自然と考え込んでいる自分がいる。そしてそこにアクチュアリティーが生まれていく。あぁコレか。優れた物語とか普遍性とか同時代性ってコウイウコトか。漫画も小説も一緒だ。と、ちょっと膝を打ったのでした。バシッ!


私信:こちらこそ。いつも豊かな気持ちにさせていただいています。応援してます。いつの日か、甘いの、待ってます。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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