近来稀に見る大傑作舞台! ABT「マノン」

2014年2月28日(金) 10:17:27

oth_det_blog_image2_537.jpg本当はおととい行ったローリング・ストーンズの超絶ライブを先に書こうと思ったのだけど、昨晩行ったABT(アメリカン・バレエ・シアター)がこれまた異様に良かった上に、今日と明日、まだ当日券ありそうなので、「これは是非見逃さないで!」という気持ちを込めて先にご紹介する。

ABT来日公演「マノン」 @東京文化会館

いやー、近来稀に見る大傑作舞台だったと思う。

第一幕40分。第二幕45分。第三幕20分。
普通、このくらいの長尺になると、それなりにダレる時間があったりするが、この「マノン」にはそれがない。あっという間。ぐっと引き込まれて観ているうちにラストを迎えた。正直終わってほしくなかった。

ストーリーはプレヴォーの有名な小説「マノン・レスコー」。
いわゆるファム・ファタール系「魔性の女」物語で、ボクはギエムとムッルの「マノン」を2005年に観ている

でも、ギエムの印象を越えるくらい今回はよく、それはもちろんダンサーの出来もあったのだけど、まずはABTの全体力に舌を巻いた。
さすがエンタメの本場アメリカのバレエ団、構成も演出も出演者の演技も隙がない。観客目線で何度も試行錯誤が繰り返された跡がある。舞台美術も極上。ロシア系バレエ団より少しだけリアルで実在感がある。衣装も適度にリアルで極上。そのうえ(ABTとは少し関係ないけど)東京シティフィルの演奏もかなり良く、舞台全体を支えた。

で、そういう環境に支えられつつ、昨晩は奇跡の演舞がそこかしこに!
マノン役のディアナ・ヴィシニョーワも、デ・グリュー役のマルセロ・ゴメスも、なんだかバレエの神様が降りてきたのではないかと思わせる出来。呆然としたなぁ。

第一幕のベッドのシーンのパ・ド・ドゥなんて「終わってくれるな!」と思った。こんな強い思いはアナニアシヴィリの白鳥第一幕やロミジュリのパ・ド・ドゥのとき、あと、岩田守弘の道化のときくらいしか記憶にない。

ヴィシニョーワは、超絶技巧を使ってるのだけど、それを感じさせない自然な演技。ギエムのときにたまに感じる「ギエムだけ踊ってない!」という印象に似てる。うますぎて、自然すぎて、ダンスではなく「演技」に見える。

あまりの渾身のダンス/演技ゆえ、カーテンコールのときとかへばっているようだった。
モスクワの新ボリショイ劇場こけら落としに行ったとき、彼女の稽古を身近に見る光栄に浴したことがあるのだが、そのときの「もしかして性格悪い?」という印象が一気に払拭されたw いやー、すばらしいダンサーだわ。というか、昨晩は特に出来がよかったように思う。

ゴメスも、あんな女性経験豊富そうな顔してw、「純情なデ・グリュー」を見事に演じきった。もともと彼のことは好きで、先週もABT「くるみ割り人形」を彼とパールトの主演で観に行ったのだが(「くるみ」自体はいまひとつ乗れず)、デ・グリューは当たり役かもね。彼も、ダンスというより演技になってた。隙のない演舞。

で、「善人顔すぎて、悪人のレスコー役はどうかなー」と危惧したダニール・シムキンなんだけど、これがまた素晴らしい!
第二幕の酔っ払ったシーンのダンスのなんと素晴らしいこと! 目を奪われた。見せ場以外の、舞台の隅っこにいるときも、細かく細かく演技していて各所で笑いを誘った。シムキン、こんなにうまかったっけ!?

というか、コール・ド(群舞)を含めて、みんなが細かく細かく演技している。大勢が出てくる舞台なのだけど、みんなが隅々で熱演している。ダンスではなくて「演技」。この感じはボリショイ以上。

いやー、ABTさすがだわ。バレエはこうでなくっちゃ。
最近はダンスの超絶技巧ばかりが持てはやされてるけど、バレエって、音楽とストーリーを台詞なしの肉体だけで伝える「演劇」であると思う。ダンス<演技。ボクはそう思うし、そういう舞台に出会ったときは心から震える。だからロシアではボリショイ(のちょっと前)が好き。ABTも大好きだ。

それにしても、振付のマクミランの天才ぶりを身に染みて感じたな。
観ながら「次はどうくるか」と身構えてしまう感じ。必死に見た。一挙手一投足に意味が感じられる。

ABT「マノン」、大傑作だとボクは思う。
なのに。なのになのに、空席がちらほらあるという入り。もったいないなぁ。

今日は昼と夜の公演がある(こちら参照)。
まだ当日券がある模様。お時間がある方、ぜひ見に行ってください。

2月28日(金) 13:00
ポリーナ・セミオノワ/コリー・スターンズ

2月28日(金) 18:30
ジュリー・ケント/ロベルト・ボッレ

ケントのマノンも良さそうだなぁ。。。観たいなぁ。。。でも、ボクはいま大阪出張に向かっている新幹線の中。物理的に観られない。

でも!
明日の土曜日の昼に、昨晩のキャストで千秋楽がある!

3月1日(土) 13:00
ディアナ・ヴィシニョーワ/マルセロ・ゴメス

みなさん、当日券あるみたいですよ! これ、観ないと人生の損ですよ!(当日券はたぶん東京文化会館で買える)

明朝、大阪を早めに出て、昼公演に間に合うように帰ってこようっと!
この舞台はどうしてももう一回観たい!

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター
(株)ツナグ代表。(株)4th代表。独立行政法人「国際交流基金」理事。復興庁政策参与。公益社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。東京大学大学院非常勤講師。上智大学非常勤講師。
朝日広告賞審査員。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。
現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。
本名での著書に「明日の広告」「明日のコミュニケーション」(ともにアスキー新書)。「明日のプランニング」(講談社現代新書)
“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(光文社文庫)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。
花火師免許所持。
東京出身。東京在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園夙川芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao[a]satonao.com まで(←スパムメール防止のため、@を[a]にしてあります)。

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