会社の歯車であり続けることのクール 〜Dステ舞台「クールの誕生」
2012年9月 7日(金) 11:47:29
おととい、D-BOYS STAGE(Dステ)という演劇ユニットの公演「クールの誕生」を観てきた(サイト)。
この演劇ユニット、実はあんまりよく知らなかったのだがw、若者には大人気のようで、女の子を中心に新宿・紀伊國屋ホールはぎっしり満員。かなりアイドルっぽい若者が揃っているからかな。
3年前に観てとても良かったミュージカル「ザ・ヒットパレード 〜ショウと私を愛した夫」(当時の感想)の脚本・鈴木聡と演出・山田和也のコンビによるサラリーマン・コメディ。こりゃハズさない。というか、いまこの時代にこの若者たちを使ってサラリーマン劇をやるところが逆に野心的だ。
舞台は東京オリンピックを翌年に控えた1963年(昭和38年)。
敗戦からわずか18年。焼け野原から復興した東京の小さな商社のサラリーマンたちが主人公である。
喫煙、過度の飲酒、キャバレー接待、腹踊りに土下座営業、、、いまの若者たちには馴染みのない世界が繰り広げられるので、ストーリーは巧みに説明を入れながら進んでいく(ナレーションで説明するのではなく、ストーリー展開の中で自然に説明されていく)。
つか、ボクもリアルタイムには知らない。
だって昭和38年って2歳だからなぁ。でもあの時代のサラリーマンの空気は父親を通して色濃く伝わってきていた。なんというか家族ぐるみでサラリーマンしてた感じ。「サラリーマン家庭」という人生形態が確実にあった時代だ。
時代が伸びている中、会社はどこも大競争していて、社内での出世競争も熾烈だった(モーレツ社員なんて言葉すらあった時代だ)。でも、「社内の連帯感」も強烈で、みんな「戦友」として一緒に闘っていた。
終演後、一緒に観たある若者が「いやー、あの『仲間感』が本当にうらやましい…」とため息をつくように話していたのが印象的だったな。全員で横一列に競争しているんだけど、でも全員戦友、というあの独特の空気。これは昭和後期にサラリーマンを始めたボクもギリギリ体験している空気である。
脚本の鈴木聡は、本「社畜のススメ」(胸を張って会社の歯車になれ、という内容)を読んで、今の時代へのメッセージとして面白いと感じ、そこにジャズのクール(情熱的だけどそれを冷静にコントロールしていく音楽)を結びつけられないかと思った、と、パンフレットのインタビューで答えている。
もちろん「クールの誕生」はマイルス・デイヴィス。
ボクはこの題名は、題名としては少し意味がわかりにくいと思ったけど、でも内容的にはあの熱い時代をクール(表面上の冷静さと格好良さ)とまとめたことで観客に別の視点が入って良かったと思う。その視点がないと、単なる熱き仕事争奪ドタバタ劇と捉えられてオシマイだったかもしれないし。
そう、クール。歯車でいることのクール。優秀な歯車として機能することのクール。くだらないとわかっていながら必死に接待することのクール。人生をそこに捧げちゃうことのクール。。。
そういう意味で、去年会社を辞めたボクの心に波風を立たせる作品でもあったですね。
最近ソーシャルメディア上でたくさん共有されているホイチョイの馬場さんのこの「電通論・博報堂論 〜サラリーマン論」とでもいうべきこの記事とか、電通の営業の極意をまとめたこの記事とかを読んでからこの舞台を味わうと、また格別の美味しさになるかも。
サラリーマンという人生を考え直している人とか、是非。(9/17まで)
