ミュージカル「ザ・ヒットパレード」観劇
2009年3月18日(水) 9:28:49
ミュージカル「ザ・ヒットパレード 〜ショウと私を愛した夫」を観た。@ル テアトル銀座
日本のショウビジネスを暗闇から明るい日光の元へ導き出し、虚業から実業へと価値転換したある夫婦の実話。言わずと知れた渡辺晋・美佐夫婦の物語である。いわゆるナベプロですね。彼らが日本のエンタメのために果たした役割は計り知れない。その出会いから死別まで、夢の一歩目から失意そして次の夢まで、一介のジャズマンから藍綬褒章を得るまで、を、昭和ヒット歌謡の数々に乗せて原田泰造と戸田恵子が達者に演じている。
題名はもちろん昭和の大ヒットTV番組「ザ・ヒットパレード」から来ている。
3時間にも渡る全体がその番組構成をベースに作られていて、番組と同じようにヒット曲のメドレーを歌いながら、番組「ザ・ヒットパレード」で花開いた渡辺夫妻の人生やザ・ピーナッツの栄光が綴られていく。この二重構造はとても面白いが、逆にちょっとマニアックになっていて、ストーリーに乗っていった気持ちが唐突に始まるメドレーではぐらかされた部分もあった。ストーリーに連関するようにもっと綿密にヒット歌謡が仕組まれていたら(たとえばアバの曲をストーリーと上手に組み合わせた「マンマ・ミーア」のように)もっと気持ちよかったかもしれない。
ま、それはともかく、日本オリジナルのミュージカルとして、とっても出来が良かったと思う。昭和時代っていい曲が多いなぁ。観劇後はフンフンと鼻唄歌いながら楽しく仕事に帰った。
主演のふたり、良かったなぁ。戸田恵子は滑舌が異様によく、早口セリフも完璧。存在感もあるし、なにより渡辺美佐感(?)がよく出ていた。素晴らしい。原田泰造は「笑う犬」シリーズや「篤姫」でその演技力は知っていたものの、なかなかすごい役者になってきた、というのが感想。ちょっと自信がない感じが目に出ちゃうのが惜しいけど、セリフも不自然さがまるでなくプロの仕事。
特に休憩後の後半、「Anything goes」の一連がよかった。
なんだかとてもブロードウェイっぽい演出。なんとなくニューヨークで観ている気分になった。あぁブロードウェイ、今年は行けるかなぁ(忙しくて行けそうにないけど…)。
敢えて言うなら、主人公ふたりの背景が描かれていないので、カタルシスがないのが残念だったかも。
せめて美佐の両親の話とか子供時代なんかが描かれていたら美佐のあそこまでの情熱とモーレツの理由もわかるし、渡辺晋の「スマイル」の秘密がどこかで描かれていたら晋のエンタメへの熱い想いがより伝わってきただろう。なんとなくふたりの人生の上澄みを辿った感じだったのが残念。まぁあれだけヒット歌謡を入れ込んだので時間がなかったのだろう(それがこのミュージカルの最大のサービス部分なのでそれもわかるのだけど)。ただ渡辺晋・美佐という素材があまりに素晴らしいだけに、もっと深く彼らの人生を観たかった気持ちは残る。そういう意味で「Anything goes」はちょっとダークサイドを描いている分、深みが増し、印象に残ったのかもしれない。
ラストは「シャボン玉ホリデー」のラストシーンの演出と同じだった(ハナ肇とザ・ピーナッツの例のアレ)。
スターダストを歌うザ・ピーナッツに挟まれ、渡辺晋が言う。「人生って長いようでこんなに短い。だから楽しまないと損だと思うんだよね」。このセリフを聞いて、今の激務を楽しんでない自分に気がついた。そう、楽しまないと損だよな。で、渡辺晋の口癖「スマーイル」を自分に言い聞かせながら仕事に帰り、なんとなくニコニコしていたら、後輩から「あれ? イイコトあったんですか?」と聞かれ、そのままにこやかに会議に入り、なんだかハッピーな結末となった。スマーイル。眉間にしわを寄せるようなことばかり起こる毎日だからこそ、スマーイル。
テアトル銀座では25日まで。大阪ではシアターBRAVA!で4/1〜5まで上演する。
日本のエンタメ創世記を知りたい方、たったひと組の夫婦が何を変えたかを実感したい方、昭和ヒット歌謡が好きな方などにオススメ。当日券もとれそうな感じである。
