大工よ、屋根の梁を高く上げよ
2012年3月16日(金) 8:34:07
手を合わせながら「大工よ、屋根の梁を高く上げよ」というサリンジャーの小説の題名をなぜか思い出した。
親しい友人である作家・駒沢敏器さんの火葬に、昨朝、立ち会ってきた。
ニュースで見た方もいらっしゃるかもしれないが、事件性がある亡くなり方をした。
そのせいもあって、ほとんど人を呼ばず、ここ数ヶ月に駒沢さんと関わりのあった数人だけが参列した。ボクも急遽招かれた。無理矢理時間をこじあけて長津田まで行ってきた。
先週沖縄に行ったのはこの件である。
駒沢さんが亡くなったのは東京でだが、那覇に母親のように彼を愛した人がいる(彼も彼女をおかあさんと呼んでいた)。その山本彩香さんのショックを和らげたいがために、兄弟分として沖縄に飛んだのが先週である。そんなこともあって火葬に呼ばれたのかもしれない。もっと親しい方もたくさんいらしたと思うがご容赦願いたい。
1961年。同じ年の生まれである。
そういえば先週亡くなった山口美江さんも1961年生まれだったなぁ。死がとても身近になってきた…。
駒沢敏器さんはいくつも本を出しているが、「アメリカのパイを買って帰ろう」がやはり突出して素晴らしいと思う。ボクはこの本の書評を週刊文春に書いた。
その中でも書いたが、彼は、いまの沖縄を理解する上で避けては通れないのに、いままで誰も通らなかった地下の道、封印されていたこの地下道への扉を開け、新たな光で満たした。
すばらしいことだと思う。
彼には雑誌「COYOTE」で連載した山本彩香さんの評伝もある。これが一冊にまとまること。これが目下の願いだ。沖縄の違う面が、彩香さんの評伝という形を借りて、そこに描かれている。
沖縄は、駒沢敏器という最大級の理解者を亡くしてしまった。これはもっと悲嘆に暮れてもいいことだ。
彼は静かに荼毘に付された。
彼が築いた小宇宙が、彼の脳の中にある豊かな知識や知恵が、彼の中にあった沖縄への愛が、この世から消えてなくなることが耐えられない。
大工よ、屋根の梁を高く上げよ。
彼の高邁な精神にふさわしい高さに梁を上げよ。
狭い狭い火葬炉に入れられる彼を見ながらそう思った。
※ 彼はボクの「明日の広告」を大絶賛してくれて、自ら申し出て週刊朝日に1ページ、書評を書いてくれたことがある。ボクは一時期それを励みに生きていた。駒沢敏器さん、本当にありがとう。
