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九州の瞠目すべき2軒

2012年2月17日(金) 8:11:21

そういえばここ1ヶ月、九州で2軒、すばらしい時間が過ごせる店に出会った。

1軒目は宮崎県延岡の「きたうら善漁。」。きたうらぜんりょうまる、と読む。
ここでも書いたが、もう本当に美味な店で、各地から食べ好きがその噂を聞いてわざわざ訪れるという割烹である。

つか、延岡というのはとても不便な立地。宮崎市から北へ電車で1時間半くらい。こんなところへわざわざ??と不思議に思うのだけど、行ってみるとわかる。こりゃわざわざ来るわ。そのくらいインパクト強い料理を出してくれる。

周囲に似つかないモダンな一軒家割烹。その佇まいも尋常ではないが、料理がすごい。
コース構成も完璧だし、善漁と名乗っているだけあって魚の質も抜群。それを「もっとも美味しい鮮度」で繊細に食べさせてくれる。新鮮一番の地方都市には珍しく熟成も考えてくれているのだ。

そして火入れがすごい。
この日は地元の吉玉家という農家でエサに気を遣って丁寧に育てられた豚がメインだったが、低温で三週間熟成した肉を六種類の熱源で火入れしたという。その出来上がりが素晴らしかった。ここまで繊細かつ完璧な火入れをする店は、他に白金の「カンテサンス」くらいしか思い浮かばない。というか、これはもう和食という領域ではない。かといってフレンチでもない。グローバル料理とでも言えるもの。

驚きは最後にもうひとつ待っている。
ここまですごくてコース5500円なのである。あぁ東京だったら12000円でも驚かないなぁ。今年中にまた行きたい店である。


二軒目は福岡の「手島邸」
ここも和食だが、やはり和食という領域を越え、手島邸ならではの料理、という感じ。

手島貢という洋画家の一軒家を、趣やアトリエの雰囲気をそのままにリノベーションして利用しており、なによりその雰囲気、そしてそこに流れる時間が素晴らしい。

住宅街の一軒家の階段を上がって玄関に入ると、まずアトリエに通されてウェイティング。
残念ながらすぐにカウンターに通されたが、このウェイティングで食前酒でも飲みたいくらいいい雰囲気で、カラダがゆっくりこの空間に馴染んでいく。

料理は水出しの最高級煎茶から始まり、それぞれ繊細かつ工夫に満ちた品々が続く。ボクは九州の甘い醤油がちょっと苦手なのだが、ここはわさび漬けを混ぜて刺身を食べさせた。甘い醤油とわさび漬けと刺身の相性の素晴らしさ。この一点を持っていい店だとわかるよね。

メインが終わると場所を移して、ソファでくつろぎながらデザートと珈琲。
趣がある部屋がいろいろあって面白い。というか、この洋画家がセンスある暮らしをしていたのがよくわかる。その暮らしの中に身を沈めこんで時間を味わう贅沢さ。


ここ10年、こうして志ある店が地方にどんどん出来はじめた。
日本が近代化を終え、成熟した文化を楽しみだしたのを感じる。「老いる」のではなく「成熟する」過程。いい国になるんじゃないかな。

そう、こんな店たちに出会うと、ボクはどんどん楽観的になる。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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