モスクワ3日目 〜ボリショイ劇場見学と公演リハーサル

2011年11月25日(金) 8:54:53

モスクワで泊まったマリオット・オーロラ・ホテルはバレエ関係者が泊まるホテルらしく、ABT(アメリカン・バレエ・シアター)からボリショイに移籍したデイビッド・ホールバーグも泊まっていた。何度かすれ違った。顔がほそーい猛禽類系。鷹顔。なんというか透明感ある好青年なのだけど、存在感が薄いのが難。クセの強いボリショイで目立てるかな。

モスクワ3日目のこの日は朝から楽しいこと満載であった。

まずは、新装ボリショイ劇場に行き、朝のレッスンを見学する。
これは8年前ももう毎日毎日見させてもらったものだけど、とても楽しいのである。なにせ世界トップクラスのダンサーたちが目の前数メートルでダンスするのだ。汗が顔にかかる距離で!(笑)

見学したのはモリ(岩田守弘くん)が取っているクラスであるアキーモフ先生のレッスン。
これはアトリウムがある方の旧館で行われた。旧館のレッスン場なわけですね。

8年前もこの先生のレッスンを見たなぁ。ボクはアキーモフ先生のファンである(昔ロットバルト役で鳴らした人)。一枚目の写真の左側がアキーモフ先生。奥の方にモリも立っている。

二枚目はモリのジャンプ。
ちなみに、モリの後に写っているピンクのジャージの人はザハロワである(!)。

レッスンをひと通り見学させてもらったあと、いよいよモリと一緒に新装ボリショイ劇場の見学だ。

新装ボリショイにはレッスン場が大きいのがひとつと小さいのが4つだったかな。あとは最上階にリハを通しでできるようなオケピ(オーケストラピット)もある舞台レッスン場がひとつ(とても趣があって格好いい)。

でも、大きいレッスン場は広すぎてダンサーには使いにくく(モリ談)、小さいレッスン場のうちいくつかは天井が低くてリフト(女性を持ち上げる)ができない。

背の高いダンサーだと頭が上にぶつかりそうである(三枚目の写真。背が低いモリが手を伸ばしてこのくらい)。これは屋根裏にあって屋根の勾配によって片側の天井が低くなっているわけなのだが、これについてツィスカリーゼが公にかなり文句を言っていたらしい。まぁ写真のとおり本当に低いし、ボクがジャンプしても手が天井に届いた。これは確かに稽古しにくいなぁ…。

ちなみに大レッスン場では女性たちのレッスンが行われていて、目の前にアラーシュ(四枚目の写真)。
アントニチェワもいた。こういうところがバレエファンにはたまらないところ。(というか、館内歩いていると普通にアレクサンドロワとかに会ったりするからすぐ慣れてしまうのだけど)

その後、本劇場周辺へ。
8年前は奈落の下の下(ネコが住み着いていた)まで見られたが、今回は見られない。でもまぁ裏の裏まで見たw

※ 余裕ができたら、8年前に撮りまくった旧ボリショイ劇場と、今回撮った新ボリショイ劇場の写真を両方並べてフェイスブックででも共有したいと思うです。

五枚目は翌日の「眠りの森の美女」の豪華絢爛な舞台セット。

六枚目は大劇場を舞台の上から撮ったもの。わりと貴重?

もともとボリショイの舞台は前に傾斜がついている。客席から奥まで見えるよう、地面に平行ではなく、客席に向かって傾斜がついていのである。でも、オペラとかだとそれではやりにくい場合もある。なので今回の大改修では電動式でフラットになったり傾斜がついたりいろいろできるようになったらしい。すごい!

舞台から眺める客席。

金箔が貼られた2階〜5階バルコニーはそれはそれは美しい。
木の椅子は昔のままでとても雰囲気がいい。

そして客席と舞台の大きさがほぼ同じか、どちらかというと舞台の奥行きの方が広いくらいなキャパシティ。
ボリショイ(大きい)ということを体現しようと思ったらもっと「ホール」みたいに大きく作る手もあっただろうに、ちゃんと「劇場」の大きさにとどめているところに心を感じた。芸術に触れる適切な大きさというのがあるのだろうと思う。

オケピはコンクリート製だったのが木製に変わったらしく、音の響きが全然違うと音楽監督がどこかで書いていた。
昼からある明日の初日の通し稽古(ゲネプロ)で実際に演奏を聴いたが、たしかに柔らかくいい響き。とてもいい音がオケピからあふれ出してくる。というか、オケピが広い。こんなにゆったりしたオケピ、あまりないような気がする。

お昼からリハーサルというかゲネプロが始まった。
明日の「眠りの森の美女」初日のため、本番の衣装を着て本番通りやる稽古である。リハを見るのは楽しいな♪

振付・演出のグリゴロービッチ(高齢なのに超お元気)が、どうもまだ出来が不満らしく、「プレスも関係者も見てはならぬ!」と怒り狂っているようだったので、1階席は諦め、4階バルコニーにこっそり入って見学。すっかりボリショイの顔になったザハロワとホールバーグが主演する通し稽古が始まった。

ザハロワは、マリインスキーから移籍してきたボリショイ・デビュー公演(「ジゼル」)を旧ボリショイで8年前に偶然見ることができた。そのときは「教科書通りに踊るつまらない人」という印象だった。いい意味でも悪い意味でもマリインスキーっぽい静的な感じだったし。でもあれから8年、完全にボリショイの人になっていたし(熱く迫ってくる踊りをする)、責任感も増し、メンバーを引っ張っていた。

オケを指揮する音楽監督のシナイスキーはもともとオペラ指揮者。つまりバレエは振り慣れていない。

だからダンサーたちはとっても踊りにくいらしく、特にザハロワは何度も何度もストップをかけ、シナイスキーに注文を出していた(写真は舞台上から指揮者と話し合うザハロワ。リハーサル中なので写真を撮らせてもらった)。

ちなみに、このリハでの注文が本番で活かされるか、興味津々だったが、結局活かされてなかったw 
ザハロワ、怒っただろうなぁ…。でも二日目の舞台ではかなり改善されていたので、シナイスキーも勉強しているのだと思う。

3時間以上にわたったリハーサルを見終え(こけら落とし初日前日のぴりぴりしたリハなんてめったに見られない。グリゴロービッチは終始どなってたしw。希有な体験)、劇場内の他の部分も隈無く見させてもらった。古い劇場も迷路だったけど、今回も迷路だったなぁ。廊下では金箔貼りがまだ進行していたw


520億円、6年の歳月をかけた大改修である。
ボリショイが新しくなって、期待と違ったとか、前の方が良かったとか、いろいろ言う人もいるし、関係者でも賛否両論だったりするようだ。

確かに古くて歴史ある、あのボリショイの趣きは失われてしまった。
でも、これからまた数十年かけて趣きというものはダンサーやお客と一緒に作っていくもの。ボクはこれはこれでいいと思ったなぁ。特に大劇場内部。金ぴかで壮麗だけど、どこかに「人の魂」が宿っていて、親密なのだ。冷たくない。椅子が木製ということもあるかもだけど、なんか「芸術」の匂いが隅々までする。こういうところが、日本で作れない部分なのかもしれない。

それにしても6年。
短いバレエダンサーのキャリアの約半分とも言える。
つまり、この6年で引退をしてしまい、新劇場の舞台で踊れないダンサーもたくさんいるし、旧劇場を知らないダンサーもたくさん入団してきた。旧でも新でもちゃんと踊ったダンサーは数えるほど。モリはその中の貴重なひとり。これはとってもすごいことなのである。

というか、モリと一緒にボリショイ内を歩いていると、彼がいかに団員やスタッフやちょっとした用務員みたいな人にもすべて好かれているか、よくわかる。
案内してくれたエテレさんも「モリは本当に聖人みたいな人。アピールが強く、ライバルを蹴落とすようなダンサーたちの世界の中で誰からも嫌われていない。みんなと仲良し。これは本当にすごいこと」と言っていた。

いや、それは本当にすごいことだと思う。いまではほとんど最年長。今年引退。「モリの引退の年だということはみんなが意識している。なんとか気持ちよく辞めてもらうために、いい演目を用意したいと思っているんだ」と、これは人事を司っている人の談である。あぁみんなに愛されているなぁ…。


さんざん見学をした後、ホテル近くのアゼルバイジャン料理店へモリや寺沢さんと。
初めて食べたなぁ。グルジアとちょっと似ている。スープ、小籠包的なもの、肉料理…。アゼルバイジャンのワインとともに食べたけど、まぁなんというか、あまり印象がないw

さて。
明日はバレエこけら落とし公演初日である。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

アーカイブ

同カテゴリーの他記事