青年団リンク 本広企画「演劇入門」を観た
2010年12月11日(土) 16:11:37
青年団リンク 本広企画「演劇入門」を観た。@こまばアゴラ劇場
青年団リンクとは、青年団に所属する演出家が青年団の俳優とともに作品を発表することができる「青年団若手自主企画」からのスピンアウト。青年団本公演ではないけど、青年団がやっている課外活動みたいな感じだろうか。
この作品は、本広企画と書いてあるように、「サマータイムマシン・ブルース」「UDON」「踊る大捜査線」などの映画監督・本広克行が演出を手掛けた異色作である。平田オリザ著「演劇入門」を原作に、青年団演出部の岩井秀人が脚本を手がけた。
というか、原作の「演劇入門」は演劇の解説本にしてHOW TOでもある。ボクも読んでとても面白かったが、この演劇論をいったいどう舞台化するのだろうか。まずはそこに興味津々だったし、青年団マニアとして知られる本広監督が映像手法をどう演劇に持ち込むのかも楽しみだった。
結果としては予想をだいぶ超えて面白かった。
ストーリーとしては脚本を書いた岩井秀人自身の回想として始まる。市民演劇で教わった大仰な手振り身振りと七五調の演劇に疑問を持ち、その後、大学で入った演劇サークルの、これまた学生演劇特有の叫びセリフに疑問を持ち、と、彼自身が「演劇とは何か」と考えていった過程をそのまま舞台にしている。
その後、岩松了作・演出の「月光のつ丶しみ」、そして平田オリザの出世作「東京ノート」の解題へと移って行く。
つまり古いスタイルの演劇から現代口語演劇への変遷を、その転換ポイントを観客にわかりやすく説明しながら追っていってくれるわけ。ちょっと「日本の演劇史」みたいな流れ。でも劇中劇の繰り返しでそれを具体的に見せながら追ってくれるので実に面白い。狂言回しの岩井役が次々に変わっていくのも妙にイイ。
特に「東京ノート」は再演を観たばかりで、いろんな場面を生々しく覚えている。その詳細な解説を聞かせてもらった感じ。なるほどそういうことか。まぁ説明されてわかることに意味があるのかどうかは別にして、いろいろ発見があった。
とはいえ、これらすべては「演劇人にとっての変化」であり、たまに通り過ぎるだけの観客にとってはあまり関係ないことではあるんだよね。その辺、岩井自身もわかっていて、ラストに向かってその疑問を投げかけていく。
岩井自身の家庭を描いた凄惨な物語が途中から混ざってくるのだが(後で知ったが彼自身の「て」という舞台らしい)、これはもうテレビドラマ的わかりやすさで人の心に迫ってくる。そこに演劇臭さはなく、観客であるボクたちは違和感なくその世界にのめりこんでいく(なかなか秀逸な修羅場場面)。
ただ、最後の最後に、その「て」を観ていた岩井の父親役(「て」のおける横暴な父親のモデル)が出てきて、「やっぱわかんないわ」とつぶやくことで、これだけわかりやすくなったことがどういうことなのかを放り出し、観客に考えさせるカタチで舞台は終わる。この放り出し方が「演劇のこの先」をも考えさせ、意外とボクは好きだった。
と、脚本に沿って書いてきたが、実はこの本のどこに本広監督の演出が入り、どう変わったのか、実はよくわかっていない。原作に「演劇入門」を使うことを決めたのは秀逸だったと思うけど、他がどれくらい本広色になっていたのかがもうひとつわからないまま終わってしまった。
役者はそれぞれ熱演。劇中劇の嵐だったしそれぞれが名作と言われた作品なので、演じる側としては実に大変だったのではないだろうか。最近青年団をよく観るようになったのでわりとお馴染みの顔が増えてきたが、今回は志賀廣太郎と桜町元のふたりが印象に残っている。
出演:山内健司、志賀廣太郎、永井秀樹、川隅奈保子、島田曜蔵、古屋隆太、古舘寛治、山本雅幸、荻野友里、桜町元、鄭亜美、中村真生(くわしくはこちら)
公演はあさって月曜日まで。もっと早く紹介してオススメすれば良かった。でも満席だったのでお客さんはわりと入っている模様。
