第一回 リアル鳩カフェ

2010年2月15日(月) 8:41:27

去年、鳩山首相とご飯して以来、いろんな縁があり、「国民と政治の距離を近づけるための民間ワーキンググループ」に参加することになったことは以前書いた。

この民間ワーキンググループ(以下WG)の活動の一環として、首相にツイッターやブログを提言した。トップダウン時代からボトムアップ時代への変化に首相が率先して対応することで、国民と政治の距離が圧倒的に近くなると考えたからである。

鳩山首相はそれに敏感に反応してくれ、今年の1月1日に両方始めてくれた。民間の意見に真摯に耳を傾けてくれるだけでも首相としてレアだが、すぐ取り入れて動いたそのスピードもレア。古い政治家や評論家、マスメディアなどには、この動きに批判的な人もいるが、ソーシャルメディアに首相がここまで関わってきたことは実は画期的だと思っている。いままでこんなに近くまで来てくれた首相はいなかった。自分のツイッター上のタイムラインに首相が毎日出てきて政治や日々のことを語る、ということが、個人レベルでどれだけ政治への関心をボディブロウ的に醸成しているか(現在ツイッター上での首相のフォロワーは30万人いる)。

ツイッターとブログは、でも、実はまだ提言の一部で、バーチャルだけでなく実際にリアルでもそういう対話の場(国民と政治を近くする場)を増やしていきたい、と、我々WGはずっと話し合ってきた。ブログ名を「鳩カフェ」としたのも、リアルでの対話を視野に入れていたからである。

この「カフェ」という概念には、西欧のカフェにあるような「フラットでオープンな対話の場」「ワークショップ的ニュアンス」「タウンミーティング的集会ではなく、テーブルを囲んで深く話し合うイメージ」などを込めた。陳情的なものではなく、実際に市民があるテーマについて話し合っている「場」に、首相が自然に加わって一緒にそのテーマについて話し合う、みたいなイメージ。そういうリアルな鳩カフェをなるべく早く始めよう、ということも年末に提言していたのである。

その「リアル鳩カフェ」の第一回目が開催されたのが昨日である。

提言してからたった一ヶ月半。いろんな障壁を乗り越えて実現した。単なる民間人たちのゼロからの提言だ。実現まで半年くらいは普通かかる。それも「首相官邸でカフェをする」という、セキュリティ上そう簡単ではないこと。それをたった1ヶ月半できちんと実行に移してくれた内閣官房もなかなかなものだと思う。

で、言い出しっぺである我々WGは、裏方として官邸の方々と一緒にいろいろ準備をし、昨日も首相官邸でその場に立ち会ったのである。ボクも昼過ぎから官邸に行ってきた。おとといまでは雨。今日からも雨。昨日だけ晴れた。勝負所では必ず晴らす!(笑)

窓から大きく官邸の庭が見える官邸の会議室の入り口に写真のような看板をしつらえ、鳩カフェに。
珈琲や紅茶はセルフサービス。ちょっと大きめのテーブルにみんなが囲んで座れるようにイスを配置し、花を飾り、ボサノヴァを流し、参加者10人を待った。

鳩カフェブログで告知した公募に応募してくれた方は約700人。
たった3日間の公募に数多くの方が応募してくれた。公募条件はこんな感じ。応募状況はこんな感じ。第一回目の昨日はテーマが「子育てカフェ」だったので、子育て中のお母さんやお父さんが子連れで参加してくれ、NPOの方々(駒崎さんのフローレンスと今村さんのカタリバ)の協力で臨時託児施設(会議室をひとつ使用)が設けられ、彼らが子どもを預けてカフェに参加できる段取りが組まれた。

13時すぎ。700人の中から選ばれた10人の方が官邸に到着した。
参加者の選定は、内閣がしたのではなく、我々WGが応募に当たって書かれた意見をすべて読み、年代、性別、お子さんの数や学年などを考慮してニュートラルに決めた。また、みんなで深く話し合うためには10人が限界と我々は考えた。それ以上多くなると順番に意見を言うだけのタウンミーティング的なものになってしまう。

官邸がある東京での開催なので(地方での開催も考えている)関東の方からの応募が多いかと思ったが、日本各地からたくさんの応募があり、中には海外からの参加もあった(自費)。みなさん、官邸で首相と会うのを楽しみにしている上に「子育てをしている同士」という連帯感もあるのか、集まってすぐ仲良くなり、笑い声が絶えない。いい雰囲気。

天気が良かったので、まずは官邸の中庭に出た。
官邸の中庭を子どもたちが走り回るという珍しい景色が展開(笑)。その後、官邸内にも子どもの叫び声が響き渡った(休日なので大丈夫)。何度も官邸に来ているが、こんなに雰囲気のいい、くだけた官邸は初めて(というか、官邸内に大勢の子どもというのもなかなか画期的なことらしい)。みんな笑っているし子どもは走り回っているし。こういうのって普通の会議でも将来実現してほしいな。子育て中の人が普通に参加できる政治。

で、臨時託児施設に子どもを預け、10人(お母さん7人、お父さん3人)がカフェに集まり、ファシリテーターとしてWGメンバーである平田オリザさんと佐々木かをりさんも入り、首相を含めて総勢13人でのカフェが始まったのである(ボクたち裏方は別室でモニターで見ていた)。

いや〜、ちょっとビックリした。
みんな首相を前にしても物怖じせず、次々と自分の考えを話し、それを受けて他の人も話し、と、どんどん話が広がっていくのである。確かに(政策に対する賛否に関わらず)積極的な意見や問題意識を応募時に書いてくれた方を選定したということもある。でも、それにしても、この議論の広がりは予想外。日本人ってこういう場で遠慮して話さないイメージがあったけど、みんな積極的に語る語る(笑)

というか、我々が考えてきた「カフェ」のイメージそのままだった。
首相の話を伺う、とかいうのではなく、みんなが話している中に首相が加わっている感じがそのまま出た。いわゆるタウンミーティングだと、首相に質問して首相が答えるみたいなカタチになる。そうではなくて、みんなが自分の問題意識を話し、そこに首相も加わるみたいなカタチが自然に出来た。すばらしい。この様子はそのうち動画が首相官邸サイトに上がると思うので、それを見ていただくのが早いと思う(上がったので、リンクします)。

子育ての苦労や切迫した問題、提言など、みんな「首相や政府に何かしてもらいたい」という陳情的なことではなく、「自分たちが何を出来るか、しているか」を首相に話しかける。これってまさに「新しい公共」だ。参加者の問題意識の高さにちょっと感動しながら聞いていた。

1時間半ほど、ずっと大盛り上がりに盛り上がり、その後、参加者とその家族と鳩山さんの全員で庭に出ての記念撮影や散歩も行われ、とても楽しい雰囲気の中、第一回の「リアル鳩カフェ」は終了した。WGもみんな晴れ晴れとした顔。いまから第二回目が楽しみである。

ちなみに、別にこの程度のことで「国民と政治の距離が近づく」とか能天気に思っているわけではない。まだまだ第一歩だし小さな一歩。でも、こんな一歩ですら、いままでほとんどされてこなかったことである。確実に少しずつ変わって行っていると思う。

少なくとも、民間の声をこれほどまでに聞こうとした首相はいままでいなかったことだけは確か(我々民間WGの提言然り。ツイッターの生の声やリアル鳩カフェの対話然り)。ツイッターでも、「国民の生の声を聞く」ために、首相執務室のデスクにツイッター専用のモニターまで置いている。一般人のツイートが首相執務室に届き続けている、というのも、よく考えてみたらなかなか画期的なことである。そういうことについてはちゃんと評価し、拍手を送りたい。そしてこれからも「国民と政治の距離を近づけるためのお手伝い」を微力ながらしていきたいと思う。

それにしても、昨日は楽しかったな。
終わってから鳩山首相と話をしたが、首相もとても楽しかったようだし、「本当にいろいろ参考になった」と繰り返し言っていた。まぁ政策面は我々WGの関知しないところだが(別に内閣サポーターでも民主党サポーターでもないニュートラルな立場)、何かしら政策に活かしていただけるのであれば望外の喜びである。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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