「肝高の阿麻和利」東京公演 @厚生年金大ホール

2009年8月21日(金) 7:30:13

amawari.jpg沖縄では有名なこの演劇(組踊=いうなれば琉球ミュージカル)「肝高の阿麻和利」も、全国的にはまだまだ無名だろう。
というか、沖縄にそこそこ詳しいボクも(本を文庫含めて3冊書いているから、そこそこ詳しいと言ってもいいよね)、実はこの舞台のことを知らなかった。「肝高の阿麻和利」。何て読むんだ?(笑)

これは「きむたか の あまわり」と読む。肝高は「心が高い」つまり「誇り高き」みたいな意味。阿麻和利は人の名前。沖縄県うるま市勝連(地図でいうとこの辺)にある勝連城10代目城主。時は約550年前、1456年ころの琉球のお話である。

この舞台のものすごさをどう説明すればいいかな。
出演者は全員、うるま市の中高生である。音楽演奏から舞踊、出演、すべて中高生である(オケピでは中高生が三線などを演奏し唄う)。もともとは勝連町教育委員会が地域おこしを目的に企画したもの。最初は「中高生の演劇?」とちょっとバカにしてたし、それは舞台が始まってからしばらくも変わらなかった。学芸会の延長線上だろ?みたいな上から目線(笑)

でも、そんな上から目線も第一幕途中まで。
ん? んんん? と、思わず身を乗り出した。こ、これは、すごい、のでは、ない、か……。

途中からもう「中高生が演じている」とかいう意識はどこかに消え、そのストーリーと音楽と演技と踊りにのめりこんでいった。それでも第一幕終了までは冷静だったな。第二幕のすごさはそんな冷静さも吹き飛ばした。エンディングで観客は熱狂し、スタンディングオベーション。拍手が鳴りやまない。いやぁ、すごい。有名な演出家が「いままで見た舞台の中で一番いい」と言ったらしいが、それもよくわかる。あぁ…イイモノ見せてもらったなぁ。

以前「脳内ネーネーズ」という駄文の中で「うらやましすぎるぞ、沖縄!」と書いたことがある(この文は加筆して本にも載せた)。
沖縄の民蔵文化の継承され具合を心からうらやんだ文章なのだが、今回も本当にうらやましかった。住んでいる土地の歴史的な出来事。それをその土地に住んでいる子供たちが演じ、「いま自分が生きていることはどういうことか」「どういう血が流されどういう人たちが生きた結果、自分たちがあるか」みたいなことを世の中に、そして次の世代に伝えていく。実際この舞台は2000年の初演からこっち、たくさんのOB・OGを生みながらずっと続いている。そこにある「リアルな伝承」。これこそすべての文化の根っこにあるべきものだし、「生きていく誇り」を生み育てる基本となるものだ。そういう伝承が途絶えた土地に生きる者として、なんとうらやましく思えることか。

それにしても沖縄って芸能の島だなぁと改めて思う。
数々のアーチスト、男優女優を出しているのもよくわかる。音楽も唄も踊りも本当に素晴らしい。中高生たち、素晴らしく達者だ。というか、ちゃんと芸能が機能しているんだな。唄や踊りで年寄りと子供がつながっている。大和の民謡ではこうはいかない。

東京公演は昨晩でオシマイ。
長く伝承されていく舞台だと思うので、今後も観る機会があるかもしれない(23、24日は盛岡公演ですよ!盛岡のみなさん!)。もし機会があったら見逃してはいけない舞台だと思う。感動以上に「伝承していくとはどういうことか」がリアルに理解できる。それは本当に素晴らしく、そして滅多にないことだ。

総合演出の平田大一さんにも感謝したい。彼(彼は大人)の強い想いがあってこそ、の舞台だった。あと昨晩主演の宮里成明くん、ハッタラー熱演の前堂篤輝くんにも拍手を送りたい(本当は熱演熱踊熱奏の全員に拍手したいが、ふたりだけ代表で)。ありがとう。

さて。ボクは何をどうやって伝承していくか。観て感心しているだけでなく、やらなくちゃいけない。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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