イタリア旅行第2日目「26人の大パーティ」

2008年8月23日(土) 21:00:00

モーレツの朝はコケコッコーで始まる。
5時前から鳴き出した彼らの声で目が覚め、7時には本格起床。80度の酒やブランデーのせいかよく寝られた。

夜には暗くて見れなかった庭を眺める。絶景。遠くにグラッパ山。そこから畑が手前までずっと続いている。
「あそこに一本の大きな木が見えるでしょ。あそこまでがこの家の敷地」とマリさん。ひょえー広い。とうもろこし畑(飼料用)が3/4、あとは自家農園。自家農園にはありとあらゆる野菜が植えられ、なにやら200年まえの栽培法なんかも取り入れられているらしい。すべて無農薬有機農法。鶏や鴨もいる。犬は減って2匹になり、猫も少なくなったらしいが、十分賑やか。特に犬のビリー(本当はリリーという雌犬らしいが、みんなビリーと呼ぶ)は愛嬌振りまき系で、響子はすでに心を奪われている。カワイイ。

朝ご飯はその庭にて朝日を浴びながら。
でかいテーブル(この家のテーブルはどれもこれもでかい)に自家製サラミ(地下に熟成庫がある)、自家製パン、自家製野菜類、そして地元のチーズなどを広げ、コーヒーをいただく。実にシアワセ。暑くもなく寒くもなく、風は心地よいし食事はうまい。トウモロコシ畑がさわさわ鳴り、鳥がさえずり、犬と猫が歩き回る。極楽。

食事中も会話は賑やかだ。
マルゲリータは厳格かつ賑やかな働き者。明るく元気でマイペース。アントニオは研究者肌。温和で物静かだけどマイペース。このふたりのかみ合わないマイペースさがこの家の様々な騒動の元になっているようだけど、ふたりとも基本的にサービス精神旺盛で親切だ。そしてよく動く。じっとしていない(いられない)。感心するくらいじっとしていない(いられない)。とてもエネルギッシュ。マリさんによると「会って3日目くらいまでは大丈夫。あれでもこっちのペースに合わせてくれているから。でもそれを越すともう大変よ。振り回されまくるから」らしい。なるほどなるほど。

食後、ネットにつなごうと四苦八苦。
この家のPCは普通にネットにつながっているのだが、持ち込んだマックがつながらない。一瞬つながったのだが、またすぐダメに。おかしいなぁ。IPを厳密に設定すればつながりそうだが、でもいっそのことネットなしもいいかと思い直し、いさぎよく諦めた。

午前中はアントニオとマリさん、デルス、そしてボクたち3人、車2台で近所を案内してもらった。
まずは「Diesel」の工場横にあるアウトレット。Dieselって、ここバッサーノ・デル・グラッパが発祥なんだって。知らなかった。社長はバッサーノの街に25歳くらい年下の美人と住んでいるらしい。てっきりアメリカの店かと思ったらイタリアなんだね。最近わりとDieselを着るボクは喜んで買い物。工場横のせいかB級品なんかも置いてありなにしろ安い。本当の意味のアウトレット。いろいろ見て、結局37ユーロと39ユーロのシャツを二枚買った(定価では140ユーロくらいのもの)。ピンクとムラサキ。

次に地元のオシャレなワイン屋。
実は今日はアントニオの60歳の誕生日。夜は地元の友人たちが26人来宅しパーティになるという。そこで飲まれるワインを仕入れるのである。
この店、一本一本買うというよりは箱買いの店で、驚いたのが店内にガソリンスタンドみたいなマシンがあって、そこから自分で持ってきたタンクにホースでじゃばじゃば注ぐという買い方。イタリアではワインはまさに日常に欠かせないものなのだなぁ。

そこから、人間チェスで有名な街マロースティカに行き、ここ近辺では一番の品揃えといわれるチーズ屋「Casa del Parmigiano」へ。
実はアントニオが異様なチーズ好きと判明。かなりマニアックに好きなようで、技師をやめてチーズ屋になろうかと画策しているほどなのだ。で、優子とふたりでそのチーズ屋のマエストロとチーズ談義に突入するものだからたまらない。長いのだ。ボクは途中で飽きて、子供たちを連れてジェラート屋へ行ってイタリアン・ジェラートを堪能。本場のジェラートはさすがにうまいけど、最近日本も追いついたんだな、と確認。

一度家に戻って荷物を置き、総勢8人で「Vecchia Trattoria DA DORO」へ。
スローフード協会からの認定証をもらっていたり、イタリアのマニアックなグルメ本で絶賛されているわりには交通の便もあってか空いていて、観光客にも無名な、知る人ぞ知る穴場店。マリさんの本には「看板が出てない名店」として出てくるが、どうやら看板をつけるようになったらしい(小さくて見逃す程度だけど)。素材を厳選し、バターや砂糖を全く使わないイタリアン。田舎の小さな小さな街の小さなレストランとは思えないほどモダンな料理で、盛り付けも美しい。スローフードを基本にしつつ、前衛も忘れない感じ。

前菜の鱒のムースが絶品だった。胸腺肉を使ったリゾットも素晴らしい。ホロホロ鳥とフンギのパスタ、カタツムリとポレンタなども良かったな。ピーチのセミフレッド、温かいチョコのタルトも良し。とっても都会的な料理である。地のワインもおいしかった。マスカットの甘い微発泡ワイン(アスティ)をちょっとだけ響子に飲ませたら気に入ってしまい、数杯飲んだ。これが響子の「酒をおいしいと思った」初体験(笑)。旅の地での印象的な初体験は人生を豊かにする。うらやましいくらいである。

シェフのScapin Giovanniはとにかくよくしゃべる。客席でずぅっとしゃべっている。
「いつ料理をしているのか不思議になるでしょう?」とマリさん。まさにその通り。あんなにしゃべくっているのに料理は待たせずサササと出てくるのだ。でも彼のトークがこの店の良さの数割を締めるので文句はない。そういう意味では、イタリア語、それもヴェネト方言のイタリア語を解して通訳してくれるヒトが同行しないと楽しさ半減する店かもしれないので注意が必要。

一度家に帰って休み、疲れ切った響子(時差で死んでいる)とデルスを置いて、ヤギのチーズを作っている農家にお邪魔し、ヤギのチーズを作る工程を見学させてもらった。アントニオと優子、大盛り上がり。このふたり、昼のチーズ屋以降、意気投合したらしい。チーズ好きの連帯感恐るべし! 帰りには地元の小さなスーパーにも寄った。地元に根付いた小さなスーパーって大好き。面白すぎる。

さて、夜は20時からパーティ。
26人の大宴会。これだけの人数が着席できる、ということでこの家の広さをわかっていただけると思う。というか、椅子の数が足りているのがスゴイ。

長くつなげられたテーブルに大皿とワインとコップが数限りなく並ぶ情景はまるで古いイタリア映画のよう。モーレツ家族の特徴としてパスタを食べないので(アントニオが炭水化物を控えている)、「イタリア家庭のパスタはどんなだろう」と楽しみにしていたボクとしては少し残念だったが、それ以外のマンマの味が充実しているので気にならない。生ポレンタ、クスクス、数々の野菜、煮込み系などの大皿が次々と手渡しで回ってくるのと別に、お客さん自らが26人を巡ってよそっていくというパターンもある。箱で買い込んだワインが次々空く。

ボクたち家族のすぐ前に、地元では有名な食評論家のオジサンが座り、優子とチーズやワイン談義の花を咲かした。途中音楽家によるピアノ演奏で「ハッピーバースデイ・アントニオ」の大合唱もあり、オジサンたちとのボード型サッカーゲームの対戦もあり、とにかく賑やか。
というか、イタリア人、全員が口を開いてしゃべっている。聞き役がいない。全員明石家さんま状態。これがスゴイ。んでもって「じゃ、帰るね」と立ち上がり、チャオを言い合ってから1時間くらいしゃべり続けてたりする。日本の静かなホームパーティとは別物。喧噪きわまる。いい意味で。

言葉が通じない上に疲れもあり、ボクたちは23時くらいに部屋に退散。マリさんをずっと通訳にしているのも悪すぎるし。で、即寝。夜半に大雨・落雷があったのはうっすら覚えている。でも雷よりも1階のお客さんたちの声の方がでかい(笑)

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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