地球と一緒に頭も冷やせ!

2008年6月28日(土) 19:02:31

ロンボルグの新作が出たそうだ。「地球と一緒に頭も冷やせ!」。原題は「COOL IT」。

ボクが地球温暖化を巡る一連の騒ぎにあまり乗らず、客観的もしくは中立的なスタンス(少し懐疑的寄り)を取っていることは、以前からこのブログを読んでくださっている方々はもうご承知かもしれない。このスタンスはロンボルグの前作「環境危機をあおってはいけない」を元にしている。
ロンボルグに偏りがないとは言えない。彼の論のすべてを信じてるわけでもない。地球温暖化をキッカケに環境問題をみんなが考えるようになったことは尊いし、環境が崩れ始めていることも否定しない。が、「みんなが大騒ぎするほど優先順位が高いのかどうかはどうも怪しい」とは、この本を読んで思った。「他にもっと緊急課題はあるはずだ」ということだ。その後いろいろ他の本も読んだが、やはり諸手を挙げて「CO2削減!」とか言う気にはならなくなっている。

その辺の懐疑は、この本の発売を報じている今日の池田信夫ブログに端的にまとめてあるので、それを読んでいただくのが早い。
彼もそこで書いているが、ボクの大きな疑問はふたつ。「本当に温暖化しているのか」ということと「最善の策がCO2削減なのか」ということだ。彼はこう書いている。ちょっと長いが引用してみよう。

  1. 「地球が温暖化している」という大前提が疑わしい:ここ18ヶ月連続して、0.7℃以上という観測史上最大の寒冷化が進行しており、東工大の「理学流動機構」のモデルによれば、これは2000年ごろをピークにして始まった寒冷化の局面の始まりである。
  2. かりに温暖化しているとしても、その主要な原因がCO2かどうかは疑わしい:IPCCの報告書でさえ、「人為的なCO2排出が温暖化の原因だ」と書いているだけで、それが最大の原因だとは書いていない。人為的な要因があることは明らかだが、その比重が50%なのか0.01%なのかは不明だ。線形の因果関係がないので、その排出量を削減すれば温暖化が緩和するかどうかもわからない。
  3. かりに人為的温暖化が主要な原因であるとしても、CO2の排出削減によって温暖化を防止することはできない:京都議定書が完全実施されても、CO2の絶対量を減らすことは不可能であり、それは温暖化を5年ほど先延ばしするだけである。
  4. かりに京都議定書によって温暖化を先延ばしすることに意味があるとしても、その効果がコストに見合わない:Beckerなども指摘するように、100年先の気温をわずかに下げる政策の割引現在価値はたかだか500億ドルであり、1兆ドルを超えるコストに見合わない。同じコストを飢餓や感染症への対策にかければ、数千万人の生命を救うことができる。
  5. かりにCO2削減に意味があるとしても、排出権取引による統制経済は莫大な経済的損失をもたらす:今週のMankiw's Blogでも指摘しているように、この種の絶対的基準のはっきりしない問題には、Coase型(財産権方式)よりもPigou型(課税方式)の政策のほうが望ましいのだ。
繰り返すが、世界人民が環境意識を持つのは素晴らしいことだ。今回の一連の流れはいいキッカケになったと思う。
でも、いつの間にか、本当に効果があるかどうかわからないのに、世界中がCO2削減の大合唱をしている。この、大合唱的「環境保護ファッショ」がボクはちょっと怖い。最近では我が愛しの「白熱灯」までやり玉に挙がり、憎し「蛍光灯」への買い換えが叫ばれている。生産終了するメーカーまである。その決定の根拠が薄弱かもしれないのに、そんなに早く生産終了してよいのだろうか。というか、世の中が蛍光灯の品のない白い光で満たされるなんて、ちょっと耐えられないなぁ。

毎度のことであるが、環境問題について疑義を呈すると超エキセントリックなメールが舞い込む。せめてロンボルグの著作を読んだ上でメールください。んでもって、ボクが「反環境スタンス」ではないこともご理解ください。環境を保護するのは素晴らしい。でも、この方法が本当に正しいのかがどうも疑わしい、と思っているだけである。やんないよりマシというにはコストがかかりすぎている。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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