ニューヨーク旅 総括(レストラン編)

2008年5月13日(火) 8:36:14

アメリカはまずい、というのが定説だが、少なくともニューヨークはおいしい。
おいしい上に、スターシェフたちが競い合って新コンセプトの新店を出すので、旬が次々に変わっていく。旬の地域も次々変わっていく(MPDからロゥワーイースト、ヘルズ・キッチン…)。スターシェフたちも新店の成功を請け負って見事達成したら、その店を他の人に任せて次の出店に関わる。
そういう意味ではミュージカルのオジリナル・キャスト(初演メンバー)にシステムが似ている。初演メンバーで評判をとって、ロングランを狙うのだ。そして豪華な初演メンバーは次へと移っていく。

ブロードウェイとは層の厚さも似ている。
スターシェフの次に虎視眈々と上を狙っている若いシェフが待ちかまえていて、彼らが移っていった後の店の質をきっちりキープする。数店の支店を持つチェーンでも、コンセプトだけスターシェフが作って、あとは他のシェフに任せていたりするのに、意外とどの店も素晴らしいということがよくある。ここ数年躍進している「BLTグループ」もそういった例のひとつだろう。「BLT=Bistro Laurent Tourondel 」で、Laurent Tourondel というシェフが展開しているレストランなのだが、「BLT Prime」「BLT Steak」「BLT Fish」「BLT Market」「BLT Burger」など、どの店も評判がいい。David Chang の「Momofuku」もそんな感じになってきている(「Momofuku」についてはこちらでくわしく書いた)。

日本だとシェフが変わったり手を広げたりすると途端に店の質が落ちることがよくある。少なくともボクは、支店を出した店は警戒してしばらく行かなかったりする。でもニューヨークでは飲食店ビジネスが一桁違う規模で展開されているので、その辺の事情が違うようだ。ちゃんとお金が入った店はそれなりにちゃんとおいしい。

さて。
去年と今年、いろいろ回ってみた感じだけで話すと、ヘルシーでオーガニックという大きな流れの中で、「隠れ家」と「RAW FOOD」「洗練フュージョン」の3つが旬なのかなぁ、と。

「隠れ家」は、東京では「人に知られていないしっぽりな空間」として人気だけど、NYでは「La Esquina」「Freemans」を始め、単に意外性とハプニング性が人気のようだ。特に前者「La Esquina」はびっくりしたな。知ってる人しか辿り着けない秘密の扉を開くと地下につながっていて、その広大な地下ホールには怪しい人々が大勢たむろしていて…みたいなハプニング性。こういう隠れ家がどんどん出来ていると聞く。

「RAW FOOD」は、オーガニックを基本とした「最小限しか熱をいれない料理」で、なんだか美味しくなさそうだけどさにあらず。「Pure Food & Wine」なんか舌を巻いた。「Cookshop」も良かったな(ここは厳密にはRAW FOODではないか)。ある意味、鮨ブーム、オーガニック・ブームの行き着いたカタチ。これは「先端」だと思うし、今後もしばらく旬が続きそうな分野である。日本でももっともっと流行ってもいい分野だ。純和食とはまた違う、洋食系のRAW FOOD。おいしいよ。

「洗練フュージョン」は、数十年のフュージョン・ブームが行き着いた感じ。
エイジアン・フュージョンに日本料理が加わって、そこにジャン・ジョルジュやフェラン・アドリアの洗練が足され、ヘルシーさとオーガニックさをベースに出来上がった最先端、といった印象だ。
まぁこの辺の進化は想像できる範囲内ではあるんだけど、でも日本ではあまり食べられないタイプの料理だ。今回では「Park Avenue Spring」(←季節ごとにSummerとかAutumnとか店名を変える)なんか、洗練の典型だった。ありがちだけど、ちゃんとおいしい。

フュージョンではないけど、ごちゃまぜ系「アメリカン居酒屋」みたいなのも増えた気がする。
「Spotted Pig」「The Stanton Social」「E.U.」など、パブとも違うアメリカ人の居酒屋。料理はフュージョンをもうひとつごちゃまぜにした感じ。無国籍料理とはまた違う、ニューヨーク独特のカジュアル・フュージョン。こういうのって新アメリカ料理と言ってもいいのかも。

また、現地の人に聞いたら「ここ数年は地中海料理が旬ですよ」とのことだったが、確かに「Fig & Olive」とかに集まるニューヨーカーを見ていると旬みたい。あっさりヘルシーでオーガニックという意味では全体の流れの中にある。

あ、あと、ステーキやハンバーガーのレベルがここ数年、異様に上がっている印象も受けた。
ほんと5年前とは様変わり。もう「不健康」な印象はない。ヘルシー意識が強くなってきて、店側もかなり努力したのだろうな。

って、ちょっととりとめなくなっちゃったが、この辺で。
もう少し時間が経って自分の中で寝かせるとまた違った印象になるかもしれないけど、帰ってきてすぐの総括としてはこんなとこで。

※今年行った店はまだアップしてませんが、いままで行った店はこちらにまとめてあります。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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