フランシス・アルバート
2007年2月16日(金) 12:20:47
不定期日記を始めたのはサイト開設して2年目くらいの1997年7月。
一番初めの日記は「愛しのフランシス」と題して、妙にキザっぽく書いている。今読むと文章がとても若くてイヤなのだが、でもその「フランシス・アルバート」というカクテルはあれからも折に触れ作っているし、飲んでいる。
で、先日、「バー・ラジオ」に久しぶりに行き、そのカクテルを作り出した尾崎さんの前に座る機会を得た。
「あぁ、そうですか。何十回と作ってくださったんですか。とてもシンプルなレシピですけどね、人が直線を書いてもそれぞれに違うように、やはり作る人によって違います。わたしが作るとまた全然違うと思いますよ」
なるほど。
フランク・シナトラ(本名:フランシス・アルバート)が好きだった二つの銘柄、ワイルド・ターキーとタンカレーを1:1でステアする、ただそれだけのカクテルがどの程度違ってくるのかぜひ知りたいと思い、尾崎さんにお願いした。彼はニヤッと笑い、ボクのために作り始めてくれた。なかなか光栄な瞬間である。
尾崎さんは意外と饒舌だった。
作りながら工程を一部始終教えてくれる。
「はい、ここがポイントです。ステアするときに左手をこういうカタチにするんです。そして『気』を送り込みます。そうするとおいしくなるんです」
…気ですか。
ジョークなのかマジなのか、お顔からは判断つかないが、でもそういえば「マジック・スパイス」の下村泰山さんも同じようなことを言っていたな。物を作り出す達人は共通してそのようなことを言う人が多い。わかる気もする。
さて、そんなことよりステアが止まらない。
「え、あぁ、多いでしょう。100回ではきかないくらいステアしますよ。そうすると味がまったく変わります」
とても時間をかけて作っていただいたフランシス・アルバート。
いよいよ飲ませていただく。
あぁ…こんな味になるのか…。これが本物のフランシス・アルバートなのか…。
確かにボクがいつも作っていたり、他のバーで飲んだりしたものとは「別モノ」だった。ターキーの田舎臭さとタンカレーのおしゃまさが完全に溶けあって見事にフランク・シナトラの放埒さに辿り着いている。でもどこかに孤独っぽさもあって、それが彼の本名でネーミングした由来なのかもしれない。あぁ、うまい。とってもうまい。
ワイルド・ターキーとタンカレーを1:1でステアする、ただそれだけのカクテル。
それがここまでうまくなる。ここまで深く表現できる。
きっと超シンプルな料理ほどそういうことっていっぱいあるんだろうなぁ。味って奥が深いなぁ。というか、グラスの中である人物をそのまま表現しきっちゃうってスゴイよなぁ。とか、ちょっと鳥肌立ちながら、ゆっくりゆっくり飲んだ夜だったのでした。
