観客を暗闇に一定時間閉じこめる、という前提

2006年9月14日(木) 9:07:56

iTunes Music Store から Music が抜けて「iTunes Store」になった。

音楽だけでなく映画の配信もついに始まる(日本ではまだだが)。2時間の映画で1.3GBらしい。データとして映画を所有するのと、DVDとかビデオとかで物として所有する楽しさは別物で、特にコレクター志向の強い男性、そして高画質重視な人はこれからもDVDとかを買うだろう。でも、時代の大きな流れはネット配信に傾いていく。まぁ日本ではレンタルが発達してるのでまたアメリカとは違う状況になるとは思うが。

とはいえ、映画を作る側、特にハリウッドはこのネット配信の影響を相当受けるのではないかと思う。

封切作品がまず映画館に配信(配給)されている今は、「映画館という暗闇に約2時間観客を閉じこめておける」という前提があって、製作者は「映画はちゃんとラストまで観られるもの」と考えて製作している。もちろん途中で出ることもできるが前提としての作り方はそうであった。だから多少退屈な場面でもじっくり描いてこれたわけだ。途中が退屈でもラストで盛り上がって泣かせれば名作になる。そういう作り方が出来たわけ。ビデオやDVDで家で観られるようになっても、それは映画館でのものを家庭で観られるようにしただけで基本的には変わらない。

だが、ネット配信が前提の社会になり(特にアメリカ)、映画館とネットとで同時封切とかが増え、封切作品をネット配信で観る人が増えるようになると、映画の作り方も上映時間も変わってくるかもしれない。人は2時間根気よくモニターの前に座っているわけではない。少し退屈な場面が続くとラストまで観るのをやめて他のことをするかもしれない。そしてすぐブログやメールに「この映画は退屈だ」と書く。そういう評判を映画製作者も無視できない、という循環が始まるかもしれない(すでにビデオオンデマンドでそういう傾向は始まっていたが)。

つまり、テレビ番組的な「わかりやすい映画」「盛り上がりまくる映画」がもっともっと増えていくということかな。観客を映画館の暗闇に一定時間閉じこめる、という前提が映画芸術的にどれだけ大きかったか、後になってわかってくるかもしれない。

いや、もしかしたら原点回帰して映画館での鑑賞がまた流行り始める可能性もなくはないが、ハリウッドが「細切れ視聴」を前提に映画を作っていく傾向は止められない気がする。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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