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すばの細道(1)沖縄そばを攻めてみる

丸安そばロング・アゴー、といっても、妻の優子の顎の長さを言っているのではない(めちゃ長いのは事実だが)。


あれはボクが大学に入学した年だから、もう20年近く前のことだ。

高校の仲間と一緒に沖縄に遊びに行ってはじめて「沖縄そば」なるものを食べた。
期待いっぱい食べたのに、なんだか脂っこいし麺はボソボソだし、全然おいしくはないなぁと思ったのをよく覚えている。
それ以来「沖縄そばはイマイチだ」と思いこんでいたのであるが、どうもあれは入った店が悪かったのではないかという当然の疑問がこの頃になってふつふつと湧き出したのである。


それは「さぬきうどん」のせいである。


香川の奥地に点在する製麺所……
その片隅でセルフ方式で食べるさぬきうどんのあの驚異的なうまさ。

そば党のボクを一瞬にして回心させてしまったあの口中快感。
少食な優子をして一日11軒ハシゴさせてしまうあの宝探し的魅力。
当時3歳の響子をして毎日「おうどん食べゆ!」と騒がせてしまうくらい本能を直撃するあの強烈なインパクト。

とにかく「うまひゃひゃひゃひゃひゃ〜!」と笑ってしまうくらいうまいのだ。

まぁそのあたりの話は本「うまひゃひゃさぬきうどん」(さとなお著/コスモの本)にイヤってほど書いたからそちらを読んでいただくとして、つまり何が言いたいのかというと、そこまでうまいさぬきうどんでも「観光客相手の店はやっぱりイマイチだったりする」という事実である。

地元の人間しか行かないような住宅街の片隅や、絶対たどり着けないような山奥にポツリとあったりする店にこそ、その驚異のうまさが存在していたのであった。


沖縄そばも、そうなのではないだろうか?

沖縄の人はなによりも好んでこの「沖縄そば」を食べる(現地では単に「すば」と呼ぶ)。
それこそ香川におけるさぬきうどんのようにどこに行っても「沖縄そば」が食べられる。専門店はもちろん、食堂、居酒屋、バー、喫茶店、パーラーと、どこにであるのである。沖縄そばが食べられる店は信号の数より多いと言われているのだ。

県民がそこまで愛している沖縄そば。

もう少し、奥が深いはず。

あのときボクは、観光客相手のイマイチな店に入ったのではないだろうか?


そんな疑問が胃袋に激しく渦巻きだし、ボクはリサーチを始めた。

沖縄在住の詳しい人に聞いたり、沖縄でしか売っていないような情報誌を手に入れて熟読したり、マニアックなそばの本を買い込んだりして研究に研究を重ねたわけである。

そしたら、出てきた出てきた。大手のガイドブックには決して載っていないような穴場のお店がザックザク。住宅街の片隅にあったり、山奥にポツンとあったり、地元民しか絶対たどり着けないロケーションにあったり……
ん?

住宅街の片隅? 山奥にポツリ? 絶対たどり着けないロケーション?


……それって、さぬきうどんと、一緒ではないか!


それに気がついた時点で期待満開。
もしかしたらさぬきうどんみたいな強烈な美味にめぐり会えるかもしれない!
そうして矢も楯もたまらず飛行機に飛び乗ってしまったのである。


用事がある優子・響子を置いて、4泊2日(夜遅く沖縄インして朝早くアウトしたからこういうことになる)、土日を利用したひとり旅。

リゾートなど目もくれず、ただひたすら「沖縄そば+アルファ」を食べまくってみた。

   ●沖縄そば  12軒
   ●居酒屋   3軒
   ●バー    1軒
   ●寿司屋   2軒
   ●ステーキ屋 1軒

実質2日でどうやったらここまで食べられるのか我ながら不思議であるが、まぁ沖縄の夜は県民性として「めちゃ遅い」とだけ言っておこう。24時でも中学生が闊歩している。27時くらいまでは寿司屋でも居酒屋でも平気で開いていて、しかも混んでいるのである。
だから、夕食を18時に食べても22時、26時と、なんとなくまたお腹が減ってくるのだ(ひょっとしてボクだけ?)。

まぁそんなことはどうでもいい。健康には良くはないかもしれないが、どうでもいい。
大事なのは、回った店の中にめちゃうまい店があったという事実なのである。


ところで沖縄そばについて、あなたはどのくらいご存知であろうか。

とにかく不思議な麺なのだ。

なにしろ「そば」という名前なのにそば粉をまったく使用していない。100%小麦粉なのである。そう、うどんと一緒なのだ。なのに「そば」と呼ぶ。
まぁ「中華そば」もそば粉使ってないのに「そば」って呼ぶから同じだな。
中国や台湾が近かったせいもあって、どうやらアッチから伝来してきたもののようである。もし沖縄に中華街があったなら、沖縄そばではなくて「中華そば」という呼び方に統一されていたかもしれない。

ただ、100%小麦粉を使うのはうどんと一緒だが、つなぎ方がうどんとは違う。うどんは塩水を使って粉をつなぐのに対して、沖縄そばは昔からアクを使うのである。

ゆーじ小「アク? 津軽海峡冬景色?」
「それは阿久悠!」


阿久悠を使ってどうする。

アクはアクでも灰汁(アク)なのだ。
木の灰だ。
そう。木を燃やすと灰が出るでしょ。その灰が入った桶かなんかに水を入れて、その上澄みをとる。それが灰汁である。その灰汁でつなぐのである。

そんな麺、聞いたことないでしょ?
木の灰だぜ? なぜわざわざそんなものを使う?

だしも独特だ。
とんこつと鰹で取る澄まし汁が基本。
ただ、とんこつを煮込むとき脂を徹底的にすくいとるから、とんこつラーメンみたいに白濁はしない。背脂も浮かさないから、脂っぽさも少ない。透明感のあるとんこつスープなのだ。で、そこに鰹節をどさっと入れる。あっさりしたとんこつ味に鰹が強く利いていて、実にさわやかなだしとなる。
透明なとんこつスープで、鰹がプーン!

これまたあまり聞いたことないだしでしょ?

とんこつだけだっておいしいのに、なぜ鰹も合わせるのだ?

とにかくユニークなのだ。

で、そのユニークな沖縄そばの中に驚異的にうまい店を発見してしまったわけなのだ。

おおお! これか!
これが沖縄そばなのか!
沖縄そばってば、めちゃうまい!



旅から帰って、さっそく優子に報告したのは言うまでもない。

「うまいぞー沖縄そば。めっちゃうまい店をとうとう見つけたのだ!」

「沖縄そばってソーキそばのこと?」

あぁ、そういう誤解をしている人は多いよな。
沖縄そばの具としてソーキ(豚のあばら肉)を乗せたものがソーキそば。沖縄海洋博の頃、本島北部の名護の『我武祖河食堂』って店から広まったメニューで、要するに沖縄そばの一形態でしかないのだ(『丸隆そば』っていう店から広まったという説もある)。

「ふーん……沖縄そば=ソーキそばと思っていたわ」
「普通の沖縄そばってのはソーキなんか具として乗らない。豚の三枚肉とかまぼことネギと紅生姜が乗っているだけ」
「へー、そーキ」
「そーばイ」

だいたいボクは思うのだけど、良くできただしならソーキは邪魔だ。

あじゃず上に書いたように沖縄そばのだしはとんこつを煮込むとき脂を徹底的にすくいとる。せっかく脂を丁寧にすくいきっただしなのに脂っこいソーキをどかんと乗せたら元も子もないではないか。
ソーキは沖縄そばのだしを邪魔をする。そういう意味では、ソーキそばは邪道そばなのだ!


「ふーん、でもソーキはソーキでおいしそうだけどなぁ。まぁいいや。で、沖縄そばはホントにそんなにおいしいの?」
「ボクは沖縄そばをみくびっていた。あれが沖縄そば本来の力であるなら、かなりのもんだ」
「さ、さぬきうどんよりおいしい?」

「いや、さぬきうどんは、ボクの中の麺類ダービーでは12馬身ほどの差をつけて圧倒的にトップ。これにはさすがに勝てないって。勝てっこないよ、あのうまさには。でもね、日本蕎麦といい勝負するくらいはうまいぞ。ラーメンにはとりあえず勝っている」

「相変わらずラーメンに対して厳しいわねー。まぁそれはいいとして、結局日本蕎麦と沖縄そばはどっちが上なのよ」
「うーん、総合的には日本蕎麦の勝ちかもな。でもあの店の麺だけとったらどうかなぁ。ボクは沖縄そばに軍配をあげたい気分だな。あの沖縄という土地の空気感も点数に入れると単独2位にしてもいいかもしれない」

「……ねぇあなた、わかっているでしょうね」
「……なにが?」

優子のアゴがギラリと光る。

「そんなの一人だけで楽しんでいいと思ってるわけ? 私たちも連れてってよ! 連れてかなかったら頭頂部にガムテープ貼ってベリッて剥がしてやる!」
「ひえ〜〜〜〜!」


優子は気が早い。というか、短い。
次週末の飛行機予約状況をさっそくインターネットで調べている。

うう。
この分だと来週は、親子三人、海など眺めもせず「すば」を食いまくっていることだろう。


いざ、すばを食べるためだけに、沖縄へ!!


「すばらし〜!」


非常に低レベルの洒落を言っている優子と、おもちゃより食べ物が好きな4歳児・響子、そしてどうにもとまらない我が食欲を道連れに、幼稚園と会社を一日休み、海を越えて食べに行く……

つくづくお馬鹿なトリオなのである。


矢印 すばの細道(2)「独特すぎるその食感」へつづく。

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