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クール
東京都中央区銀座7-2-14
17〜23/土日祝休
5000円
バー。
残念ながら閉店してしまったが、古き良き銀座の代表的名店として記憶しておきたい。
銀座の草分け、古川緑郎バーテンダーが守っていた典型的スタンドバーであった。
マーティニ、サイドカー、ギムレット、そしてシンプルな水割りなどもうまいが、ここではやっぱり緑郎氏が作る伝説のハイボール。グラスのクールの文字のところまで正確に注がれるそれは完璧なバランスだった。
山口瞳に書かせると「ちなみに古川さんのハイボールは、十二オンスのタンブラー、サントリーオールドのダブル、氷三箇、炭酸はタンブラーに書かれたクールのマークまで。こうすると、飲み終わるときに三箇の氷が溶けるのだそうな。まるで指物師の名人の話を聞くようだ」となる。お見事。
店内の雰囲気抜群。
テーブルもあって座れるが、カウンターに折り重なるようにして立って飲む方がずっとこの店に似合っている。
古川さん以外にもふたりベテラン・バーテンダーがおり、それぞれ味がある。
おねえさん(おばあさん?)もふたりいて、ホールで接客してくれるのだが、それがまたとても古き良き銀座な雰囲気でたまらなかった。どちらかが古川さんの奥様のはずだが、いつもわからなくなってしまう。年月とともにどんどん似てきた気がする。帰りに「行ってらっしゃいまし」と送られるあの感じ。得難かったなぁ。
メニューも独特の小さなもので、よく読むといろんな発見がある。オリジナルカクテルもいい。それらすべてに銀座の粋とはこういうものなのだと若者に教えてくれる雰囲気が漂っている。
2003年11月19日、古川緑郎バーテンダーの88回目の誕生日に閉店した。
ちゃんと立てるうちにきれいに辞めたいという彼の美学のようである。確かに最後の方はカウンター内の右端で座ってらっしゃったようだった。
ボクは閉店前日の18日にギムレット、19日の最終日にハイボールとマーティニを、彼の前に立って彼からいただいた。
20回以上通って、初めて「彼の前」に立った。
ずっとずっと憧れていたのだが「まだ自分には十年早い」と自覚していたのである。
古川さんの前に立って作ってもらうなど、人生最後の方の「目標」ですらあったくらいで。
あのカウンターで彼の真ん前でそれらをいただいただけでも一生の宝だと思う。幸せであった。
当日、遠慮するボクを彼の目の前に連れていってくれた常連さんには一生頭が上がらない。
ちなみにその日のギムレット。
5回ほどチャチャチャとシェイクしただけ。それで見事にやさしくもとろける味に仕上がっていた。魔法を見ているようだった。いったいなんだったのだろう、あれは。たった5回だぜ?
あの味だけは一生忘れられないと思う。
2006年01月01日(日) 19:03:28・リンク用URL
@satonao310