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「遠い朝の本たち」

amazon98年3月20日に急逝された著者の遺作である。
ボクは本当に彼女の本を愛していたので悲しくてたまらない。これを最後にもう彼女の作品は読めないことになる。なんということだろうか。
内容は著者が若い頃に愛した本たちについての随筆である。相変わらず読者の心を静かにそして透明にしてくれるその筆致。名文の連続でありとても速読はできない。その「まやかしのない言葉の束」が読者の心に直接に入ってくる。そして読者をして「私ってこんなに感性豊かだったかしら?」と錯覚させてしまうような効果すらある。
手を洗って背筋を伸ばしてゆっくりページをめくりたい名作だ。
向田邦子のように小道具が散りばめられてはいないしオチもないのだが、どこかで彼女の静謐な魅力に通じるところがある。文体の素晴らしさがそう感じさせるのか…。とにかく、日本語をここまで品よく書ける人を我々は失ってしまった。実に哀しい。
1998年06月01日(月) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:エッセイ
@satonao310