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LV4「光ってみえるもの、あれは」

川上弘美著/中央公論新社/1500円

光ってみえるもの、あれは
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高校生の頃の、不安定でリアルじゃなくて自分の存在をどこか遠くへドライブしたい気分が、この小説では実に巧みに描かれている。
そういう意味では、主人公の翠(男)より友達の花田の方がその不安定度が高くて共感できそうな感じだが、著者はそういう「作家が高校生を描くとこうなる、の典型である小説的高校生」を主人公に持ってくるようなことをしない。ぼんやりしているがよりリアルに近い翠をあえて描き込んでいく。そこらへんのシャイさと程の良さが川上弘美。渋いのだ。

ボクは著者の、著者と同年代っぽい(例えば「センセイの鞄」の主人公のような)女性像が好きである。ふわふわと宙を漂うように現実と快楽といつかはなくなる生命との間を生きている感じを実にうまく書いていると思っている。その感じはこの本でも味わえる。主人公の家の祖母と母の日常だ。高校生たちのふわふわ感より、ある一定年齢以上の女性のふわふわ感の方が著者は圧倒的にうまい。物語の展開よりもこの家の日常にずっと浸っていたいと思ったのはボクだけだろうか。

高校生の瑞々しい描き方でこの本は好評のようだが、ボクは彼らに瑞々しさを感じなかった。逆に年老いて感じたくらい。リアルな感じとふわふわ感で独特の世界を紡ぎ出してはいるが、物語としては芯がなく、少し物足りないのも事実かな。

2003年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

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