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LV5「センセイの鞄」

川上弘美著/平凡社/1400円

センセイの鞄
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話題作。というかヒット作。
川上弘美は芥川賞受賞作「蛇を踏む」のとんでもない異化の世界の印象が強く、体調がいいときにしかトライする気になれなかったのだけど、巷に「これはいい!」という声が溢れているので手に取ってみた。結論から言うと、これはいい!です、はい。

37歳になる独身女性ツキコと30歳以上年上のセンセイとの静かな愛の物語。
冒頭から引き込まれ、何も起こらないのにワクワクし、最後には読み終わるのが惜しくなってくる。特に会話がいい。お行儀のよい会話にお行儀のよい展開をつけて、昭和時代っぽい純な味を出している。主人公同士の小津安二郎的距離感も心地よく、小説を読む楽しみを思い出させてくれる。
著者はどこかのインタビューで「私は何かを伝えようと思って小説を書きません。伝えようとすると小説ではなくお説教になってしまう」と言っていたが、その通りの作法で書かれており、それも心地よい原因のひとつであろう。なんというか、フランス料理で商売できるほどの腕の人が作る家庭的お総菜を個人的にゆっくり味わわせてくれた後のような、滋味溢れる充足感がここにはある。静かで温かい気持ちになりたいときなど、おすすめ。

2002年07月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

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