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「麦ふみクーツェ」

amazon前作「トリツカレ男」でとんでもないストーリーテリング能力を発揮した著者が出した名作。
彼にしか書けない分野を創出したとも言えるかも。「いしいしんじものがたり」というひとつの分野。物語というより「ものがたり」。現代の寓話としていろいろと警句・隠喩・置き換え・教訓を探し分析することも出来るだろうが、ボクはこれを純粋にものがたりとして読みたい。そしてものがたり世界に浸りたい。
音楽家をめざしたでくのぼうのような少年の半生を、地球のどこかの架空港町を舞台に魅力的すぎる登場人物たちを散りばめて描いたものがたり。出だしはわりと退屈で、おやおやと思っていたけど、中盤から断然面白くなりラストまで一直線。淡々としたペースを最後まできっちり守り抑制もよく効いている。なのに何度も涙する。寓話的な部分で村上春樹をちょっと思い出させるが、必要以上に思わせぶりではないところが著者のイイトコロ。そして要所要所に出てくる音楽の本質に迫る言葉の数々もすばらしい。ものがたりというのはこういう細部の出来如何にかかっているのだなぁとしみじみ。
441ページの長編で、かなり浮世離れしている内容に、ちょっととっつきにくいと感じる読者もいるかもしれない。でも、きっと読んで後悔しない。オススメ。
2002年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:小説(日本)
@satonao310