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いしいしんじ
「麦ふみクーツェ」

amazon前作「トリツカレ男」でとんでもないストーリーテリング能力を発揮した著者が出した名作。
彼にしか書けない分野を創出したとも言えるかも。「いしいしんじものがたり」というひとつの分野。物語というより「ものがたり」。現代の寓話としていろいろと警句・隠喩・置き換え・教訓を探し分析することも出来るだろうが、ボクはこれを純粋にものがたりとして読みたい。そしてものがたり世界に浸りたい。
音楽家をめざしたでくのぼうのような少年の半生を、地球のどこかの架空港町を舞台に魅力的すぎる登場人物たちを散りばめて描いたものがたり。出だしはわりと退屈で、おやおやと思っていたけど、中盤から断然面白くなりラストまで一直線。淡々としたペースを最後まできっちり守り抑制もよく効いている。なのに何度も涙する。寓話的な部分で村上春樹をちょっと思い出させるが、必要以上に思わせぶりではないところが著者のイイトコロ。そして要所要所に出てくる音楽の本質に迫る言葉の数々もすばらしい。ものがたりというのはこういう細部の出来如何にかかっているのだなぁとしみじみ。
441ページの長編で、かなり浮世離れしている内容に、ちょっととっつきにくいと感じる読者もいるかもしれない。でも、きっと読んで後悔しない。オススメ。
2002年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:小説(日本)
「トリツカレ男」

amazon以前、町田康とこの著者の共著「人生を救え!」を読んだのだが、いしいしんじについてはまるで知らなかったし、彼が書いた部分は面白く感じなかったと書いた。ら、著者の兄の友達という方から「トリツカレ男」は面白いらしいですというメールが来た。んでもってbk1に注文して買ったのである。結果的には買って良かった。ええ、面白かったです。
なんか原田宗典の名作「スメル男」を思い出させる題名で、似たような展開を想像していたのだがずいぶん違った。
なんというか童話的であった。ジュゼッペとしゃべるハツカネズミとペチカという女の子が主な登場人物だったりするのだ。いろんなものにどうしようもなくとりつかれてしまう男ジュゼッペ。一度とりつかれたら世界記録が出るくらいそればかりやり続ける。そんな彼がはじめて女の子にとりつかれた(つまり、恋)。彼女にとりつかれたジュゼッペは、どうするか。え?ストーカー? いやいや、そんなありがちなことではない。本当にヒトにとりつかれる(恋する)とはどういうことか。それが後半のストーリーである。
あっという間に読める童話的小説だが、設定も結末もなかなかよく、気に入った。ちょいと温かい気持ちになりたい夜にオススメ。
2002年05月01日(水) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ファンタジー
「人生を救え!」

amazon町田康が毎日新聞紙上で連載した人生相談をまとめたものが前半。後半はいしいしんじと一緒に浅草とかを歩きながら対談したものだ。
前半の人生相談が圧倒的に面白い。
なんつうか、まぁしょーーーもない相談が多いのだが(スカートがはきたいとかネコがいなくなったとか何をやっても続かないとかうちのテレビが壊れたとか)、そのしょーーーもない相談に町田康が例のパンク文体で確信犯的生真面目さでトツトツと答えていくのが笑える笑える。特に、展開が読めない書き出しの妙、が見事。相談への答えなのに、質問を受けないで文章が始まる。そこらへんがうまいなーと思わせる。
いしいしんじ氏については実はよく知らない。要注目作家らしい。後半の散歩対談はそんなに面白く感じなかった。
2002年03月01日(金) 12:00:00・リンク用URL




