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「イラクの小さな橋を渡って」

amazonアメリカによるイラク侵略戦争(とあえて呼びたい)がいまにも起こりそうな雰囲気の中、ひとりの作家がペンの力を持って戦争への流れを止めようとした気高い試みとして評価したい本。本橋成一の写真に池澤夏樹の文章がつき、「この子たちをアメリカの爆弾が殺す理由はなにもない」と訴えている。
本は「もしも戦争になった時、どういう人々の上に爆弾が降るのか、そこが知りたかった」と始まる。実際にイラクを訪れ、人々の生活を見、それをウェブと本で世界に伝えた。国際政治的に進行する戦争について思考していくと、ふと、人々の暮らしという身近なレイヤーを忘れそうになる。作家の目はそこを鋭く突き、ボクたちに「想像力を取り戻せ」と訴える。そしてアメリカとの関係についても平明な論点で訴える。戦争を正当化する理由など、やっぱり何もないではないか、と。巻末の年表も役に立つ。イラクがいままで何をやってきたか。客観的事実も出しておくことでより狙いが明確になっていると思う。
国際政治を情緒で語るなと思う人もいるかもしれない。でもこの本に実は情緒はほとんどない。理系の目と感じるくらいである(写真はちょっと情緒的)。しかし、人を殺すかもしれない戦争に、情緒的になって何が悪い?ビジネスライクに考えていて良いのか? そんな反省を強く求められる一冊でもある。
※英語版・フランス語版・ドイツ語版が無料でダウンロードできます。
2003年03月01日(土) 12:00:00・リンク用URL
@satonao310