こんなに自由に劇場という空間を使ったバレエは初めて。パリ・オペラ座バレエ「天井桟敷の人々」
2013年5月31日(金) 14:57:05
マルセル・カルネ監督の映画「天井桟敷の人々」を初めて観たのはたしか高校生のとき。
白黒名作映画が大好きだった時期で「嘆きの天使」とか何度も観てた。「天井桟敷の人々」は200分近い大作なので二度くらいしか観てないけど大好きだった。当時の映画ノートでも熱く語っているw
つか、この映画、雑誌「キネマ旬報」で「外国映画史上ベストワン」とか穫っていて「名作中の名作」と言われていたから、それに影響されて「名作だー」とか思っていたのだと思うけどw あのころはその程度の審美眼。まぁいまもあんまり自信ないけどw
で、この映画、映画のくせに幕間があって、第一幕「犯罪大通り」と第二幕「白い男」に分かれている。
ストーリーも人間相関図も複雑で少し油断するといろいろわからなくなる。
そんな大作映画をパリ・オペラ座がバレエ化した。
昨晩はそれを観てきたのである。@東京文化会館。日本初演。
よくこんな複雑なストーリーのものをバレエの演目に選んだなと思う。
いや、もしかしたらこの映画はフランス人にとってある種の常識的な教養なのかもしれない。つまり日本人なら黒澤明の「羅生門」をバレエ化するみたいなもので、ストーリーはある程度の教養人なら知っていることを前提として選んだのかもと思った。そのくらいはストーリーも複雑だし、場面もころころ転換していくのだが、常識なら充分ついていける。
そういう意味では、この映画が常識的なものになっていない日本人にはかなり厳しい映画となる。これ、ある程度ストーリー知ってないとちんぷんかんぷんだろうなぁ。
それにしても、さすが名門パリ・オペラ座。
ジョゼ・マルティネスの演出・振付が実によく出来ていて、いつの間にかググィと引き込まれた。
珍しい演出がてんこ盛りで、まず、開演前、ロビーで大道芸が行われていた。
これは「もうあなたは舞台となる犯罪大通り(タンプル通り)にいるんですよ」という演出である。つまり観客であるボクたち自身が「天井桟敷で芝居を観る人々である」という趣向である。なるほどねー、とその時点で楽しくなる。
この趣向は一幕二幕通して貫かれ、たとえば第一幕が終わったら客席に天井からビラが降ってきて、「オテロ(オセロ)」の上演が告知される。そして幕間にロビーの階段を利用して「オテロ」が踊られるのである(ストーリー上必要な場面)。
ボクはロビーに出たのが早かったので、最前列にしゃがみこんだ。
目の前数センチまで来て激しく踊るダンサーたち(写真参照)。ふと周りに目をやると観客たちが七重八重に群がってニコニコしている。これってまさに天井桟敷で観ている人びとそのもの。あー、おもろい演出だなぁ。この辺でもう惚れまくっている。
ラストも、なんと主演プリマであるイザベル・シアラヴォラが客席に降りてきた。
そうして犯罪大通りの天井桟敷の人々(つまり客席の我々)の中に紛れ込んでいき、バチスト(マチュー・ガニオ)との距離が開いていき、幕が下りる。ふえー、おもろいー。こんなに自由に劇場という空間を使ったバレエは初めてだ。
ストーリーが長大なのでわりと段取りを追う舞台ではあったけど、ダンスは第二幕冒頭の劇中劇を稽古している場面でサービスカット的に楽しめるし、マチュー・ガニオは線の細さを感じさせない熱演だったし、カール・パケットや日本によく来るバンジャマン・ペッシュもレティシア・ピュジョルもとても良かった。
ただ、原作映画を観たことない方は、とにかく「ストーリーを予習していくこと」が絶対必要。
Wikipediaとか映画サイトでよくよく知ってからでかけるといいと思う。ストーリーさえわかっていればかなり楽しく、おもしろくも希有な劇場体験ができると思います。
昨日は満席だったけど、今日はまだチケット余っている模様(売っていた)。
サイトはこちら。
パリ・オペラ座の粋が感じられる名作。ぜひ。
