カレーニョ、日本最後のABT「ドンキホーテ」

2011年7月24日(日) 22:10:35

アメリカン・バレエ・シアター(ABT)は相当うまいダンサーを幾人も抱えているが、その中でも(ボク的には)ダントツに存在感ある大スターがホセ・マヌエル・カレーニョである。

2005年に彼とジュリー・ケントの「ドンキホーテ」を観て以来の大ファンであり、ボクの中でのベスト・バジル(ドンキホーテでの役名)もカレーニョであった。最近ではボリショイのワシーリエフのバジル(動画)の方がいいのではないか、という部分もあるのだけど、いずれにしても世界トップのバジルのひとりには違いない。

その、カレーニョの「ドンキ」をふたつ続けて観る機会を持てた。
しかも彼の引退のシーズンに。もう日本で観られる最後のカレーニョ・ドンキと言っても過言ではない。

ひとつめは「スペシャル・ドン・キホーテ」。
金曜の夜に観た。一幕二幕三幕、それぞれキトリ役とバジル役が変わるというスペシャルな企画物。ABTならではの華やかさとサービス精神。

【第一幕】 パロマ・ヘレーラ/ホセ・カレーニョ
【第二幕】 シオマラ・レイエス/アンヘル・コレーラ
【第三幕】 加治屋百合子/ダニール・シムキン

楽しかったなぁ。ここで第一幕でカレーニョも観られたし、コレーラとシムキンも楽しめたし、満足だった。お祭り感があったせいか、出演者全員ノリノリでとてもいい舞台。特にコレーラとかノリノリもいいところ(ここでノリすぎたせいか日曜のマチネーは体調不良で交代したらしいw)。加治屋百合子はもちろん応援したけど、軸がぶれぶれでちょっと残念。

脇役の中ではキューピッド役のサラ・レインが群を抜いて良かった。
と思ったら、彼女、映画「ブラック・スワン」でナタリー・ポートマンのバレエシーンの代役は彼女がやったらしい。うまいはずだ。調べたら2005年の来日公演でも彼女のエンジェルを観ているんだな…。


で、今日観てきた通常の「ドンキホーテ」。
キャストはキトリがパロマ・ヘレーラで、バジルがホセ・カレーニョ。事実上、日本で観られる最後のカレーニョ・バジル。

ボクの中では切れ味抜群のカレーニョの幻影があり、もう期待はそこに行っているのだけど、考えたら「引退前」ってことはやっぱり衰えがあるということ。うーん、さすがにジャンプや回転は数年前のカレーニョではない。

でも、決めポーズの美しさ、回転軸のブレなさ、その超絶的な安定感、そして優雅な所作。これらはもう絶賛に値するし、見惚れきってしまった。すばらしい。

そして、パロマ・ヘレーラも良かった。
「スペシャル・ドンキホーテ」では、わりと固い彼女のダンスがあまり好きではなかったのだけど、全幕を通してみると素晴らしい技術の持ち主とわかった。でもボリショイバレエにあるような迫ってくる感情表現みたいなものがないのが残念。

あと、今夜はダニール・シムキンがジプシーで素晴らしいダンスを披露。加治屋はエンジェル役だったけど、エンジェルはやっぱりサラ・レインの方がうまかったかも。

それと、意外に大きかったのは、ガマーシュ(キトリと結婚しようとする貴族)役が、「スペシャル」のときはクレイグ・サルステインだったのだけど、彼がとってもよく、妙な存在感の熱演だった。たくさん笑いをとった。でも今夜は彼ではなく、とっても普通のガマーシュ。つまらなかったなぁ。

とか、いろいろあるが、とにかくカレーニョの最後の勇姿、とくと観させていただいた。
カーテンコール、何回あっただろうか。観客たちのスタンディングオベーションはすべてカレーニョに向けられ、キトリ役のヘレーラも遠慮して先に下がったくらい。いやぁ最後に二回も観られて良かった。


冷静に少し書くと、ABTのドンキは全体に薄味だったと思う。
とってもテンポがよくて楽しいけど、たとえばボリショイの「これでもか!」な熱さがなかったし、サンチョ・パンサの振りや演出もなくて不満。わかりやすいけど、全体に浅い感じ。プティパの振付をずいぶん端折った印象。振付改訂したケヴィン・マッケンジー/スーザン・ジョーンズの趣味かもしれないけど。

でもまぁドンキは楽しければいいじゃん? という感もあり。
今週の「ロミジュリ」に期待しよう。ケント&ゴメスのロミジュリも楽しみだけど、個人的にはオーシポワのジュリエットが超楽しみ♪

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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