心が見事に晴天化 〜立川志の輔独演会
2011年4月23日(土) 22:09:04
もう一週間前になってしまったが(あっという間だー)、立川志の輔独演会に行ってきた@吉祥寺前進座
言うまでもなく志の輔の高座はプラチナチケットである。
でも、心優しい友人が「たまには笑った方がいいよ」とチケットを譲ってくれた。ありがとうございます。まぁそこそこ笑いながら生きてはいるんだけど、でも、毎日被災地のことを考えて作業したりいろんな団体と打ち合わせしたりしていると、確かに少しずつ心が曇天化していく。笑いのチカラが必要だ。そして「確実に笑わせてくれる」志の輔は確かに特効薬。ありがたし。
前座は立川志のぽんの「初天神」。
落語って不思議だ。何度も聴いた同じ噺が、演者によっても状況によっても違った噺になる。
親と子の滑稽はこの噺も、震災のあとに聴くと違うものになる。まぁ前座なのでコクはないが、妙に考えさせられてしまった。
そして志の輔。震災の話題で長い枕(30分以上)。
ある高座で、噺が最高潮に盛り上がったときに緊急地震速報が鳴り響いた、みたいな話題から入って、今回の震災でいろんな落語会が中止になった話題、海外の落語会に出かけた話題、出入国審査でいつも異様に感じの悪い審査官が日本人に実にやさしくなったという話題など。毎日のように震災の悲惨なニュースを見聞きして凝り固まっている聴衆の心をスムーズにほぐしていく。いつもより長い枕だが、この状況では絶対必要。それをとてもよくわかっている。さすが。
枕の中で話された言葉をふたつ備忘録的に。
震災のニュースを見ていて志の輔が感心したという被災者の言葉。
避難所の仕切り役のおじさんが行った言葉。「避難所で、酒も飲まず、規則正しく起きて、規則正しくご飯を食べて、これじゃ健康になっちまうよな。あははは」
床屋の人が土砂の中から商売道具のハサミを見つけて言った言葉。「前を向いて歩いて行かなくちゃね。でも、全部流されて平らになっちゃって、どっちが前だかわからないんだよ。あははは」
笑えない状況にあって、それでも笑い飛ばしちゃう人間の強さ。もう枕だけで泣き笑い。
長い枕で心をほぐしてくれたあと、一席目の「茶の湯」。
一転、ただただ、うははははと笑わせてくれた。何もかも忘れてうはははは。心がほぐされたあとのこういうバカ笑いがどれだけ効くか。ありがとう。
15分の仲入り後、長唄三味線の松永鉄六(女性)が出てきて、解説をしながら長唄三味線。
「へぇボタン」をたくさん押す感じ。なるほどねー。彼女は浦安で被災したそうだが(まだ水が出ず駅前のホテルにトイレに通っているとか)、きちんと20分ほど笑いも混ぜながら聴かせてくれた。震災後に何度か講演をしてみて実感しているが、震災前みたいには語れなくなっている自分がいる。そういう中で芸をするのはどれだけ大変だろう。リスペクト。
で、志の輔の二席目「メルシーひな祭り」。
創作落語。志の輔の創作落語は大好きなのだけど、4月も中旬なのに何故ひな祭りネタ?と最初は思った。でも、全編を聴いて理由がわかった。どうしようもない状況に追い詰められ、みんなで助け合って逆境を越えていく(しかもどこか滑稽なまでに愚直に)、というこの噺が、いまの日本の状況に実に当てはまり、ドタバタ喜劇なのに最後は実に泣けた。まわりも鼻をぐすぐす言わしていた。実にいい噺だった。
普通の二席に見えるけど、枕も含めて実に緻密な計算と気遣いが感じられる構成。さすがだなぁ志の輔。
二席終わって、志の輔はある避難所のエピソードを話した。
その避難所では、毎朝、リーダーが一本締めをして一日を始めるという。それにあやかって、会場全体で一本締め。ボクはこんなに厳粛で心がひとつになった一本締めをいままでしたことがない。
あぁ。笑いのチカラを本当に感じた2時間半だった。心が見事に晴天化。
被災地ごとにフェーズがバラバラで、まだご遺体を探している状態の被災地もあるので一概には言えないが、こういう「人の心を晴れさせるプロたち」のチカラを、なるべく早く被災地で発揮していただきたいなと思う。
