真にレストランを楽しみたい方へ。「東京百年レストラン」伊藤章良著

2010年12月 9日(木) 6:45:10

東京百年レストラン ‐大人が幸せになれる店‐友人の伊藤章良(あきら)さんが満を持して本を出した。「東京百年レストラン」梧桐書院/1680円。

伊藤さんはボクと「伊藤章良とさとなおのうまい店対談」を一緒にやっている仲間である。その経験値と健啖とレストラン愛は十二分に知っている。なので以前から「本を出したら」とは勧めていた。彼が本を出したらスゴイ本ができるとわかっていた。でも、出来上がりは予想を超えていた。素晴らしい。失礼ながら、まさかこれほどとは思わなかった。

え? あ、はい、確かに仲間の本を臆面なく褒めても説得力ないかもしれない。でもね、本屋で手にとって数ページ読んだらボクが言っている意味がわかると思う。これはいままで出たレストランガイドの中でも一頭地を抜けているのではないか。ここまで深くレストランへの愛や尊敬を書き記した本をボクは他に知らない。随所に記されている「食べること」への様々な想いの深さも圧倒的だ。だから読み物として面白い。読んでいて新しい視点を与えられる。そしてすぐにでもその店に行きたくなる。

タイトルにあるように、この本は百年続いて欲しい店を選んで書いている。彼が行ったであろう数千店からたった38店に厳選し、ボクたちに彼の主観とともに教えてくれる。そう、この本にはありがちな客観的スペック情報はほとんどなく、メニューやワインの記載もほとんどない。でも、この本には彼の感動がくわしく書かれている。そして、単なる情報やスペックではなく、そういう感動こそが店の価値であることが、読み進むに従って理解できていく。

ボクもそこそこ店を知っているが、彼にはまるでかなわない。競い合う気にもなれない。だからどこに食べに行こうか困ったとき、ボクはいつも彼に電話する。彼はしばし黙考し、いくつかの店を候補として教えてくれる。彼が選んでくれる店は流行の新店でも話題のシェフがいる店でもない。時代に合わせてマーケティングされた店であることも絶対ない。でもいつも見事に「感動的な店」なのである。これからも10年20年続けていこうという意志が感じられる店なのである。一見普通っぽくても奥底に熱い想いを隠している佳店なのである。

世にレストラン情報を教えてくれる本やサイトはゴマンとある。情報だけならそっちの方が早くて正確だ。でも、長く残って欲しい店の、長く残る感動を、ここまでしっかり書き記したものは他にない。「レストラン」を楽しんでいるのではなく「レストラン情報」を楽しんでいる人が多いこの時代、真にレストランを楽しみたい方にこそ自信を持ってオススメしたい。

ちなみに一般的にはあまり知られていない店が多く書かれている。無難な店選択にしたくなかったという狙いもあるだろうが、ボクは「東京にはまだまだ知られてない感動的な店がたくさんあるんですよ。みなさんも是非探してみてください」という優しいアドバイスと受けとめた。この本に書かれた店に行くだけでなく、自分でも百年レストランを探したくなる。そんな本なのである。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

アーカイブ

同カテゴリーの他記事