鈴木さんの田んぼ、自遊人の田んぼ

2010年6月24日(木) 8:46:48

おととい、会社を休んで、ひとり、長野・新潟まで「田んぼ見学」に行ってきた。
雨の予報だったのだけど、陽射しが出て(これが晴れ男クオリティ)、頭頂部が日焼けした。つっぱる。剥けなければいいな(笑)

ご存じの方も多いと思うが、「自遊人」という雑誌がある。
「サライ」とかと同じ分野になるのだろうか。大人の雑誌として人気があるが、2004年、もともと東京・日本橋にあった編集部を新潟県南魚沼に移し、そこを拠点として隔月で出版している。「自遊田」という自社田んぼも持っていて、米を作って今年でもう6シーズン目になるという。田舎暮らしを口にし実践する個人は多いが、会社ごと田舎に移して、兼業農家(出版兼農家)として実践している例は少ないだろう。

その「自遊人」に数ヶ月前に寄稿したことが縁で、「自遊人」がやっている通販サイト「オーガニック・エクスプレス」で売っているお米をいくつか食べ比べる機会があった。その中のひとつ「鈴木和夫さんのコシヒカリ」をとても気に入ったこともあって、生産者である鈴木さんに会わせて欲しいとお願いをした。ではどうせなら推薦原稿を「自遊人」に書いてください、ということになり、まぁ半分「大人の遠足」、半分「取材」で、鈴木さんの元へ出かけたのである。

鈴木和夫さんのお米は「米・食味鑑定コンクール国際大会」において金賞を獲っている。
金賞レベルの農家の米をいくつか食べさせていただいたが、鈴木さんの減々農薬・有機質肥料100%使用米が一番好きだった。噛めば噛むほど甘みと香りが出てくる奥深い味で、もうずぅぅぅっと噛んでいたい感じ。そのうえ後味が素晴らしい。甘さが上品でスッキリしている上に品のいい香りが重なり、それが長く口の中でキープされる。そう、余韻が長いのである。うまひなぁ。優しい味で、最初は少し物足りない感じから始まるのだが、食べるに従っておいしさが出てきて、飲み込む寸前にうまさがピークに達する感じ。右肩上がり上向き直線系のおいしさ。

それが認められたのか、京都の名旅館「美山荘」(ボクの大好きな宿で二回泊まっている)も「鈴木さんのが日本一!」と実際に使用しているそうである。そんなお米なのである。


思わず「この沿線に住みたい」と思ってしまうほど車窓風景が美しい飯山線に揺られて長野県飯山へ。
飯山駅へは「自遊人」編集長と編集部員が迎えに来てくれ、一緒に鈴木さんの田んぼへ向かった。

実際にお会いした鈴木さんは理科の先生みたいな雰囲気の理系稲作家で、お話がすべて「理にかなっている」。とても論理的で几帳面な稲作をする。くわしいことは原稿を書き終わった後にまたご紹介したいが、特徴的なのは株間の短さ(14センチ)と、見事なまでに一直線になった植え込み。田植機を使えば誰でも直線になるのかと思ったらそんなことはなく、周りの田んぼはうねうね曲がっているのに、鈴木さんのは定規で引いたみたいに完璧な直線になっている。「いろいろコツがあるんですよね」と笑って答えていただいた横顔はもう稲作家というより職人か建築家のそれだった。

キレイに整備されたトラクタや耕うん機や田植機、コンバイン、遠赤外線乾燥機なども見せていただき、お宅にもお邪魔してお茶をいただいた。もう当分鈴木さんとこのお米しか食べたくない!と思うくらい好きになってしまった。生産者を知っていると味わいも変わるよね。うれしい出会い。常に工夫を加えていく鈴木さんのお米が今後どういう味に変わっていくか、毎年食べて体験していきたい。

鈴木さんのお宅を辞した後、新潟県南魚沼に移動して、「自遊人」が稲作をやっている「自遊田」も見学。
山間の耕作放棄3年目の田んぼを借りて、整地するところから始めた自遊田。え?と聞き返してしまうような少人数で、苦労して苦労して田植えまで漕ぎつけた、汗と涙が染みこんだ田んぼである。5月の連休にはまだ雪があったという山間部。カモシカも出没するという。うーむ、想像を絶する苦労だったのだろうなぁ。

これだけ食べることが好きなくせに、こうしてきちんと意識して田んぼを見学したのは初めてかも。
米づくりのなんたるかも知らないで、日本の食は語れないよなぁ。遅きに失したが、やらないよりマシ(←なんでもマシ論者)。来年はここで田植えや雑草取りや稲刈りを体験させてもらおうかな。とか、そんな甘いこと考えていたら、「でもね、雑草取りって、丸一日がんばって畳二畳くらいしか取れませんよ」と脅された。まぁ逆に言うと人手がたくさん必要、ということ。来年どなたか雑草取りご一緒しませんか?(笑)


最後に「自遊人」のオフィスにも遊びに行った。
窓外にホタルの乱舞が見られるロケーション。観光バスが来るくらいなホタルの名所らしい。いいなぁ。

編集長の岩佐さん曰く。

こっちに移ってきて一番びっくりしたのは、打ち合わせ時間がほぼなくなったこと。いままで際限なくやっていた外部の方々との打ち合わせが(東京との距離の問題もあって)皆無になったが、それでもほとんど困らないことに気づいた。何とかなる。そして、その結果うまれたのが膨大な「時間」。こんなに時間が創出できるとは思わなかった。これが一番びっくりした。東京にいるときは365日不夜城と言われ、忙しすぎて毎年のように身体を壊す人が出た自遊人編集部だが、いまでは農家兼業で健康的にやっていける。これはとても大きな変化。
素晴らしいなぁ。
実際、ネットと電話を駆使すれば、(業種は限られるとは思うけど)仕事なんてある程度できる。膨大な時間の創出か。「お金持ちより時間持ち」。人生において実に大切な考え方。

とにかく、理想や空論を語るだけでなく、実際に行動に移し、曲がりなりにも軌道に乗せていることに敬服する(経営はかなり厳しいらしいが)。こういう先駆者が大きく成功することが、後進への道を開く。応援したいと思う。

ということで、雑誌「自遊人」と通販サイト「オーガニック・エクスプレス」。みなさんもちょっと見てみてくださいね。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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