奥田民生「ひとりカンタビレ」を観てきた

2010年5月 8日(土) 13:25:41

奥田民生によるレコーディング・ライブ「ひとりカンタビレ」を観てきた。@SHIBUYA-AX

レコーディング・ライブとは何かというと、要するに、ステージ上で1曲のレコーディングを仕上げる様子をライブで見せる、ということ。
ってわかりにくいな。つまり、奥田民生がドラム、ベース、ギター、と、各楽器を弾いて録音していき、最後に歌とコーラスも自分で入れて、ミックスしてバランスとって完パケにするまでを延々とステージでやっていくわけ。だから3時間〜4時間いて1曲しか聴けない(笑)。でも、制作過程といろいろな工夫、そして曲が誕生する瞬間に立ち会えるユニークなライブである。

会場は1階だけで500人ほど入っていただろうか。
ワンコインで焼きそばなどが買えて、食事もおしゃべりも自由。つか、奥田民生も普通にさりげなくステージに出てきて挨拶もそこそこMac前に座り、DAW(Digital Audio Workstation)をいじり出す。もうぐだぐだのゆるゆる。というか、いわゆる「宅録」をそのまま再現して、そこにたまたま観客がいる感じ。Ust的に言うと「レコーディング状況ダダ漏れ」的なぐだぐだ感だ。

DAWのソフトは「ProTools」な模様で、大画面にMac上のその画面が映し出され、民生が「ここにこうやって録音してってですね」とか説明し、そのままさりげなく「ひとりカンタビレ」が始まった(写真はこちらから拝借。他にもいろいろ写真あり)。

ステージ上のマイクが拾っちゃうほどの大声や笑いや拍手じゃなければ、観客はしゃべっても音出しても何しても自由。というか、ビールサーバーを背負った売り子さんも会場内を歩いている。長丁場だし「各自適当に楽しんでよ」って雰囲気なのだ。

どんな曲を録るのかの説明はなく、まずはドラムの録音から。 だんだんと曲の全貌がわかっていく趣向だ。
「この曲はあまり響かない音でドラムを録りたいんだけど、SHIBUYA-AXって音が響いちゃうんですよね」と民生からの説明があって、いきなりステージ上にテントを運び込みドラムを囲んでその中に奥田民生入っちゃった(笑)。響かない音にするためにテント。会場にはドラムの音しかしないし、民生見えないし(笑)

でも、ドラムのリズムからミドルテンポの曲とわかる。
で、テントから出てきてまたすぐMac前に座る民生。どうやらDAWのオペレーションも奥田民生が全部やるらしい。完全に宅録だ。

次はベース。
一回目を弾き終わって「ちょっと固いな」と録り直し。二回目は確かによくなったが、最後の最後でミスをしてガックシ。会場大笑い。部分直ししてベース終了。

エレキ・ギターはバッキングとリードを別々に。
アンプについて丁寧に説明してくれたり(というか、奥田民生ってMCうまいよなぁ)。少しずつ曲が見えていく。メロディアスな曲っぽい。ユニコーンの「雪が降る町」によく似てるな。名曲の予感♪

次はアコギ。
無難にキレイに弾き終わってMac前。で、「できました!」と叫んでアコギパート終了。会場は拍手。その途端「あ!!」と民生が叫ぶ。「コマンドZしちゃったよー!」(笑) って、Macなヒトしかわからないと思うけど、コマンド+Zキーって「UNDO」なんですね。つまり入力取り消しちゃったわけ。でもまぁすぐ復帰させてなんとか無事に終了。

アコギ二本目。小さいアコギ。「この弾き方、三連っていってレノンがオールマイラビングでやったやつね」とか解説がいろいろ入る。次はタンバリンと鈴。真面目に鈴振る民生に会場から笑い。「笑うと(音が)入っちゃうから。でもまぁ笑うよな。わはは」とか。

休憩を挟んで、ギターソロ。テイクワンでOK。なんかいい曲っぽいぞ。

で、いよいよ歌である!
「なんとこの曲、雨という言葉からはじまるんですねえ。まさか今日、雨が降るとはスゴイねぇ」とかいろいろしゃべり。歌はダブル録音。ようやく曲の全貌が見えた。ふーん、こういう曲かぁ。サビがなかなか格好いい。Bメロのコピペ技みせたり、コーラス録ったりなど、地味な作業を続け、ようやく完成!

「じゃ、いまからミックスとか、余計な音とか取る作業するから、トイレ休憩!」と民生が言って、みんなわさわさとトイレ行ったり携帯で電話したり。その間も民生は普通にステージにいる。あ、バーボンっぽいロック飲んでたな。銘柄は確認できなかったけど。

で、最後、会場からの質問に少し答えて、その後ようやく曲名発表!
なんとこの夜に創り上げた曲は、このツアーのテーマ曲でもある「ひとりカンタビレのテーマ」という曲だった。なかなかいい曲。というか、延々と3時間半、この曲しか聴いてないので、もうほとんど脳味噌に貼り付いてしまった(笑)

終わったのは22時すぎ。18時半から3時間半ちょい。「おっかしいなぁ。今日は段取りよかったはずなんだけどなぁ」とボヤく民生。でも1曲作るのに3時間半は、普通のスタジオ録音だったら早いほうである。

「じゃ、今夜の配信に向けて(ここで出来たてホヤホヤを配信するらしい)、まだ作業してるけど、とりあえずみなさんは解散!」という言葉をうけ、ステージ上に奥田民生がいるのにみんなわらわら帰り出す。これも普通では見られない光景だなぁ。3時間半たっぷりと彼の素を見られて、たぶんみんなお腹一杯。満足感一杯なのだ。

ボクはその後また仕事があって、24時半くらいまでかかったのだけど、その間もずっと「ひとりカンタビレのテーマ」が頭の中にまわっていた。出来上がるまでのすべての工程を目撃したこの曲。奥田民生の中でも特別に愛おしい曲になりそうである。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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