伊藤若冲の妖気にやられた

2010年4月28日(水) 7:54:14

昨日は会社を休んで早朝から「こだま」に乗り込み、静岡に行ってきた。目的はこれである。「伊藤若冲アナザーワールド」@静岡県立美術館。有志3人での酔狂弾丸ツアー。

GW前に休むなよ、って感じだし、実はこの展覧会、静岡のあとは千葉に来る。GWに行ってもいいし千葉を待ってもいい。
でもね、GW中だと確実に混む。千葉も東京から至近なので確実に大混雑する。「静岡でGW前の平日の午前中に『ガラガラにすいた状態で観る』」ということに価値があるのである。つまり、いまや異様な人気の伊藤若冲を「ガラガラにすいた状態で観る」という贅沢に新幹線往復1万円を払ったということ。それだけの価値がある。だってさ、若冲の屏風絵とかを「人混みに邪魔されずに3m離れて観る」とか出来るんだよっ!

ってわけで静岡に行ってきた。
夕方に東京で打ち合わせがあったので、展覧会観て昼ご飯食べたらすぐ帰ってくるという弾丸ツアーになったわけ。

この展覧会は、「アナザーワールド」と題するだけあって、いま人気の伊藤若冲の違う面に迫るもの。つまり、あまり取り上げられない水墨画を中心とした展示である。サイトの説明を引くと、

伊藤若冲(1716-1800)は、近年一般の美術愛好家にも広くその名を知られる存在となりましたが、その作品については代表作《動植綵絵》をはじめとする華麗な着色画を中心に語られることが多く、遺作の大半を占める水墨画については必ずしも正当な評価を得ているとは言えません。しかし、晩年に至るまで生涯描き続けた水墨作品には若冲の独特の造形感覚が遺憾なく発揮されており、彼のもう一つの魅力をかたち作っていると言えるでしょう。
本展覧会は、若冲の水墨の作品を中心に、関連する着色の作品も含めて構成します。加えて、黄檗僧・鶴亭(1722-85)らの作品によってその水墨表現の前史を示し、若冲水墨画の世界に迫ります。

でね、これがね、凄かったのだ。
まずその「自由さ」。あぁなんて自由なんだ…と、途中で声に出してつぶやいてしまったくらい。着色画よりシンプルな墨絵ということもあるが、構図も筆致も実に奔放。枠に囚われず筆の勢いを活かしてキレイで図太い線を描いていく。そしてその「妖気」も凄い。若冲って誤解を恐れずに言うとダーク・パワーがある。「観て元気になる」というより「観て疲弊する」タイプ。どんどん精気が吸い取られていく。

もちろんそのクリエイティビティには感動するし刺激を受ける。一点一点集中して観ざるを得ない凄みがある。でもカラダの奥底から何かが失われる。展示半分くらいで「酸素が足りない!」とアクビが出だし、後半はイスを見つけては座って休み、フラフラになりながら観た。急激に体力がなくなっていった感じ。そのあとで観た常設のロダン展ではいつの間にか元気が戻っていたので、若冲の妖気にやられたとしか言い様がない。こいつ、魔的な何かと切り結んだな(笑)

最初期から晩年まで時系列で展示されていたので、晩年まで観てから初期に戻って線の違いを楽しんだり、お気に入りのものを何度も観に行ったり、樹花鳥獣図屏風や仙人掌群鶏図や蔬菜図押絵貼屏風なんかの大作を「人混みに邪魔されずに3m離れて観る」みたいなことを何度も繰り返したりして、約2時間、十二分に楽しめた。静岡に来て良かった〜。

ちなみに一番気に入ったのは、シンプルなラインで描かれた「馬図」(宝暦14年以前)。中期の作品だがなんとも好き。あとは有名だけど「白象群獣図」かな(上の写真)。


若冲展を鑑賞後、常設のロダン展へ。
これもよかった。静岡に行った価値があった。展示空間もよかったが、世界に7つしかないという巨大な「地獄の門」が(東京でも観られるけど)やはり圧巻。学芸員に聞いたら、これは石膏の型で作っているようで、全部で12個作れるそうである。つまりあと5つ「地獄の門」のブロンズ像が造れる。ちなみに7億円だそうだ。どうすか富豪な方(笑)

静岡県立美術館はユニークで、ロダン展の入り口横に「ロダン体操」と書いた部屋がある。
ロダン体操? そう、あの、様々な格好をしているロダンのブロンズ像のポーズをまねて体操にしてしまったという荒技。おもしろい〜。ビデオでおねえさんが指導してくれるので、思わず同行者たちと踊ってしまった。楽しい♪


ということで、静県美、楽しかった。
昼ご飯は、名物の静岡おでんか、旬の桜海老かき揚げか、迷った挙げ句ハシゴすることに(笑)
まずはツイッターでもオススメが多かった「大やきいも」という店。この店、焼き芋店なのだが、おでんも置いている。というか、静岡で「おでん」と言うと、食事というより駄菓子に近い感覚の食べ物らしい。いや〜この店、よかったなぁ。おいしいというより楽しい感じ。黒はんぺん(静岡名物!)や牛スジ、糸こんにゃく、昆布などの黒いおでんを食べつつ、焼き芋や大学芋を食べる。なによりもこの店の雰囲気が素晴らしい。昭和初期なのだ。テーマパークにいるような楽しさ。

その後、静岡駅ビルの「升亀」という居酒屋で(ここもツイッターでのオススメ)、桜海老かき揚げ(悪天候で生桜海老は無理だった)とか生シラスとか初カツオとか黒はんぺんのフライ(うまっ!)とか、いただいた。この店もとても良かった。

で、新幹線に飛び乗って、打ち合わせ開始の1分前に会社に着いたのであった。えらく楽しい半日だった。大人の遠足とはこういうものである(笑)。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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