映画「息もできない」

2010年4月17日(土) 16:17:46

映画「息もできない」を観た。@渋谷シネマライズ。

この邦題は英題「Breathless」の訳である。韓国原題は「糞バエ」だ。うんこ蠅みたいな人間たちのことを指している。そしてそう生きざるを得ない社会への痛烈な批判も隠されている気がする。「パルプフィクション」みたいな、三文芝居的ニュアンスもあるかもしれない。

もうほんと、観ている最中から、文字通り息もできない。そういう意味ではいい邦題だと思う。息が詰まる。圧倒される。呼吸しにくくなる。つらい。慟哭する。そして感動する。希有な映画であることは間違いがない。

製作・監督・脚本・編集・主演は、ヤン・イクチュン。
ひとりで全部やるリスク(自己満足になるリスク)を軽々と飛び越えて、ただひたすらリアルに観客の心に迫っていく。ここまでのリアリティはひとりで全部やらないと無理かもしれない。よくぞまとめきったと感心するし、随所にこの監督の力量が見えた。アングル、インサートカット、ひたすら寄りで撮る暴力シーンなど、本当に素晴らしい。俯瞰やハイスピードの挟み込み方も絶妙。時間軸の壊し方もぎりぎりのバランス。すごい。

この手の題材で「ひとりでやった」となると、金子正次の映画「竜二」が思い出されるが、あれは主人公が格好よく見えてしまったのが惜しい部分だった。でも「息も出来ない」にはそういう酔いしれがない。まぁ途中で空気が穏やかになり、多少ラストが見えてしまうあたりが多少どうかなと思ったが(ラストへの気配を消して欲しかった)、それ以外は文句のつけようがない。

俳優陣も文句のつけようがない。ヨニ役の女性はちょっと可愛すぎるが、その存在感、そして泣き方のうまさたるや。板東英二似のマンシクや、槇原敬之似のファンギュもよい。あえて言うとヨニの兄弟役(重要な役どころ)にもう少しだけ狂気が感じられると良かったか。

ちなみに、公式サイトで観られる予告編は、(日本向けに編集したのか)サンフンとヨニの心の触れあいに寄りすぎている。日本用のポスターも少々甘い。この映画はそんなものではない。だからここでは韓国版のポスターを貼り付けておく。ヤン・イクチュン。まさに糞バエ。でも実に愛おしい。この感じは実際に体験しないとわからないだろう。必見だ。

…シバラマー。
この言葉が脳にこびりつくなぁ。


終了後、ちょっと食欲もなくなったのだが、自分を奮い立たせて、韓国料理を食べに初台の「焼肉ウリ」に行った。
この店は宣伝会議でボクが話した講義に生徒として来てくれていた人が店主としてやっている店。なぜかボクの講義に感動してくれて、生き方まで変えようとしてくれた人。いつか店に行くねと約束していた。約束を果たしに行った。これからも行くよ。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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