ツイッター「ホコテン」論

2010年4月18日(日) 12:06:48

先月だったか、銀座の歩行者天国(ホコテン)を歩いていてなんとなく思ったのだけど。

こうしてリアルタイムを共有して大勢が思い思いにぶらぶら歩いているホコテンって「ツイッター」にとてもよく似ているな、と。

それぞれ別に目的もなく、ぶらぶら歩き回っていて、同時性をゆるく共有している。老若男女入り乱れ、有名人も意外と歩いている。そして面白い大道芸やイベントがあるとバーッと集まる(RT)。ウィンドウ・ショッピングをして、通り沿いの店から偶然性を伴って情報を仕入れ、楽しむ。「あの人のファッション可愛いね」みたいに、通行人同士もウォッチしあっている。偶然知り合いに会うことも意外とあるし、知らない人同士の会話が始まることもある。みんななんとなく笑顔でポジティブ。そんなところもツイッターっぽい。

そうなると、通り沿いの店舗は「ブログ」だ。
それぞれの主張を持ってショーウィンドウや看板を出し、通りすがりの人にアピールしているが、店内に入らないとその内容の詳細はわからない。人気店は固定客もついている。人気店には他の店の店員も覗きに来て店員同士の新しいつながりも頻繁に出来る。他店の人は、人気商品(記事)をそこから仕入れて自店に並べたりもする(トラックバック)。ちょっと目立つショーウィンドウにしたり、タイミングよく店頭イベントをしたりすると人だかりが出来ることもある(RTやコメント)。

デパートは「マスメディア」。
でかいビルである。世の中に流れている商品(情報)のほとんどはそこにあるが、大衆全般に受けないといけないという無難さも持っていて、青年・壮年離れを招いている。ある一定の年齢以上の人(特にご老人)にとっては安心して商品(情報)に出会えるパラダイス。その分、個々の分野で尖った商品(情報)が欲しい若者には物足りない場所となっている。催事や屋上イベントも楽しく、以前はデパートのみで人生を充分に楽しめたが、個店が発達し、質も高まった今、不要論もささやかれている。なので最近ではデパート本体がアンテナショップ的に個店を出すことも多い。昔はやらなかった呼び込みもホコテン上に出てきた。

デパートで食い足りない人々のために、セレクトショップも人気だ。
「ソーシャルブックマーク」や「IT系情報サイト」などがここに入るだろう。デパート(マスメディア)に置いていない商品(情報)はここで仕入れることが出来るし、足を棒にして歩き回らなくても、人気商品やトレンド商品に出会うことが出来る。

となると、ある分野に特化した量販店やドラッグストアは「検索エンジン」に近いかも。
その分野のあらゆる商品(情報)が揃っているので、その分野の商品を探している人が集まってくる。そして比較検討して商品を手にしていく。人気商品も一目でわかる。そこでは商品がすべてコモディティ化しているのも特徴のひとつ。

「SNS」や「コミュニティ」はレストランかな。
仲間同士で入ってテーブルを囲むことも多いし、テーマ別の会議や会食で使われることも多い。仲間を通じてだったり、興味範囲が一緒だったりするのですぐ仲良くなれる。話も弾む。和食、イタリアン、フレンチ、中華など、趣味や興味方向によって様々なグループに分かれる。そういう意味では2ちゃんなどの「巨大掲示板」は居酒屋やビアホール的。テーブル同士が近く、みんな酔っているので無礼講的な空気もある。知らない同士仲良くなったり喧嘩したりするが、居酒屋を出たら赤の他人。それぞれ日常に戻っていく。


これら、デパートや個店やセレクトショップ、量販店、レストランなどが、以前はバラッバラに存在していて、みんなわざわざそこに出かけていった感じなのだが、ツイッター的な大きな歩行者天国ができ、一気にそれらがつながった感じ。ツイッターというホコテンの周りに全部ある。ぶらぶら歩いていると全部に出会える。超便利。そんな感覚。

そして、圧倒的に存在感があったデパートの価値が相対的に下がり、個店などと対等になったのが今だ。
ホコテンを歩いている客にとって、デパート(マスメディア)と個店(ブログ)の価値は対等。欲しい商品を置いてある方がいい店である。その時の基準は、「いい商品」「大衆にウケる商品」ではなく、「自分が欲しい商品」が置いてあるかどうか。デパートだろうが個店だろうがセレクトショップだろうが、どこで手に入れてもいい。だから対等。

逆に言うと、ホコテン上でデパートが魅力的に見えてくるための一手もそこにある。
マスメディアの人と話をしていていつもビックリするのは、生活者調査をほとんどしていないこと。昭和時代は商品(情報)に合わせて生活者がライフスタイルを変えてくれた。だから送り手側が勝手に選んで一方的に商品を並べても喜んでくれた。「あーそういうのが流行っているんだー、新しいんだー」と、生活者は喜んでくれ、生活に取り入れてくれた。

でも、情報洪水&成熟市場の今は逆だ。
生活者は自分のライフスタイルに合わせて商品(情報)を手に入れる。身の回りに商品が溢れすぎているから選択眼も厳しくなるし、「いい商品」より「欲しい商品」が欲しいのだ。そんな生活者をくわしく調査&インサイトしないで、どうやって彼らの「欲しい商品」がわかるのだろう。一方的な品揃えを生活者が喜んでくれた時代は終わった。ホコテンをぶらぶら歩いている人は、それではデパートに入ってこない。


ま、ツイッターというホコテンに集まっている人自体まだまだ数百万人程度だし、ホコテンにわざわざ行かずに買い物を楽しむ人の数の方がずっと多い。デパート(マスメディア)ほど便利で楽しいものはないと思っている人も多いだろう。なので論として一般化はまだ出来ないけど、そんなことをなんとなく考えていた休日の朝である(つか、相変わらず長すぎ!)。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

アーカイブ

同カテゴリーの他記事