鱈のピルピル

2009年10月29日(木) 7:16:06

2年前だったか、金沢に行ったとき、「アロス」というスペイン料理の店に行った。
金沢でスペイン料理? と最初は戸惑ったが、金沢在住の人たちがみんな勧めるので、ワイワイと一緒に出かけたのである(たしかハシゴ三軒目だったかな)。地元の大人気店のようで、とてもよく流行っていた。そして何を食べても元気でおいしい料理ばかりだった。いい店だったなぁ。シェフはバスク地方で修業したとかで、地の魚を使ったバスク料理が名物。

特に印象に残ったのは「鱈のピルピル」という料理。
これ、鱈の皮の部分のゼラチン質をオリーブオイルの中に溶け出させ、乳化させていき、見事においしいソースに昇華させるのだが、その過程で料理人は20分から30分、鍋を手でもって火から10センチくらい離し、円を描くように回し続けないといけないのである。「アロス」ではカウンターに座ったので、シェフが鍋をずぅっと回し続ける様を見ることが出来た。実に根気がいる作業。というか腱鞘炎ものだ。大変だなぁ。そして実際に食べたその料理の鮮烈だったこと! その手間がかかる作業を見続けていたことも相まって、なんだかとても記憶に残る味となった。

そのことをずぅっと覚えていて、東京でも「鱈のピルピル」を探していたのだが、昨晩ようやく巡り会った。
渋谷の「アバスク」というバスク料理の店(細かく言うとバスク地方のフランス側の料理らしい)。最近バスク料理の店って少しずつ増えていて、青山の「ローブリュー」も西麻布の「チョコ(TXOKO)」もとても好き。「アバスク」もこぢんまりと親密でとてもよいレストランだった。

で、あぁいい店だなぁと思いつつメニューを見ていたら、うわぁ「ピルピル」があるよ!
思わず声を上げたら「ピルピルを知ってる人も珍しいですね」と。いやスイマセン、本場ではなく金沢で食べただけなんですけどね。

この店のレシピは鍋を回すのではなくかき混ぜて乳化させていくパターンのようだけど(厨房からカシャカシャとかき混ぜる音がする)、いずれにしても、ようやく東京で巡り会えて良かった良かった。満を持していただいた「鱈のピルピル」、ニンニクが強く効いていてとてもうまかったっす。そうそうこの味。うれしいな。ありがとう。ごちそうさまでした。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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