大日本プロレス「ロミオ vs ジュリエット」

2009年10月 2日(金) 8:41:27

ボクが年に一回だけ観るプロレス、大日本プロレスに昨晩行ってきた。
いや、プロレスでもあり演劇でもある。レスラーたちがストーリーに沿って演技をしつつ、随所に30分一本勝負などのファイトが入るというボーダレス・エンターテイメント(笑)

去年は「リア王」をやり、どうかな〜と半信半疑ならぬ1/4信3/4疑くらいで行ったのだが、これがとても面白かったのである(去年のさなメモ参照)。で、今年は原作が「ロミオとジュリエット」(笑) いったいどうなるんだ? ジュリエットはどうするんだ? バルコニーの場面はどうなるんだ? と、頭の中に疑問がぐるぐる渦巻きつつ、横浜の赤レンガホールまでいそいそ出かけたのである。

結果から先に言うと、腰抜けた。
ラストでは泣いているヒトもいた。終了後6人で横浜中華街の「青葉」に夜食を食べに出かけたが、6人ともほとんど無言。あまりの衝撃に料理を食べるチカラが出ない。「あした仕事できるかなぁ」とつぶやく人もいる。いやぁ、なんだろう、感動というより疲弊に近い。ふと気がつくと、口に入った餃子も噛まず、ぼんやり遠くを見つめている。まいったなぁ。

会場は去年より凝っている。
リングが中央にあるのは一緒だが、その両コーナー端にライバルとして争っているモンタギュー家とキャピュレット家のセット(書き割りに近い ←あとの乱闘で壊すから)がある。
まぁモンタギュー家は焼肉屋で(モンタ牛:笑)、キャピュレット家は工場なのだけど。奥にはロミオやマキューシオが集うであろうバーまで設えてある。(写真は両家が争うとこ)

ただ、ストーリーは去年よりシンプルで、よりファイトに重きが置かれていた。去年はリア王のストーリーに忠実で少し段取りくさい部分があったのだが、今年はラストのロミオ葛西 vs ジュリエット沼澤のデスマッチ時間無制限一本勝負に向かってなだれ込む勢いがあり、しかもそのデスマッチの衝撃的なことたるや物凄かったので、なんか観劇後の印象がひとつにまとまった感じ。いやすごかった。(写真はマキューシオが死んじゃうとこ)

と、ここまで書いて、なぜロミオとジュリエットがラストでデスマッチするのか、と疑問をお持ちの方もいらっしゃろうが、これもよく出来ていて、プロレスラーにとって「命がけで闘うことこそが相手に対する純愛」なのだ。いや、本当に命がけのファイトで、「そ、それは、死ぬんじゃ !?」というのの連続。怖いしエグいし、もう目を開けていられない。観に行ったことを後悔したくらい。

大日本プロレス名物の蛍光灯ファイトも凄まじかったが(蛍光灯で殴り合う。ポンポン割れて破片が飛び散り、その上でバックドロップとかブレーンバスターとかしまくり血が流れまくる)、リング上に画鋲をばらまいた上でのバックドロップとかもう見てられない。背中は言うに及ばず、後頭部にも画鋲とか普通に刺さってるよ! しかもジュリエットのバルコニー(2階の高さ)から、ダイビング・ボディ・プレスをしたりする。蛍光灯の破片と画鋲だらけのリング上に…。
でもそれ以上に怖かったのは、バルコニーから場外へのダイブ。場外乱闘の末、ジュリエットをデコラの長机の上に寝かせ、ロミオがバルコニーに上り、そこからジュリエットに向かってダイビングするのだ。机は真っ二つに折れ、ジュリエットが起き上がってくるのにすごく時間がかかった…。

もちろん演出だし興行だし、真の命がけではないとも言えるが、でも、間近で見ている観客には「命を賭けている」というのがヒシヒシと伝わってくる(だって少し間違えたら死ぬか半身不随にはなる)。その衝撃に打ちのめされているところに、見事に勝ったロミオ葛西(葛西純)の語りが入るのだが、これが「命がけで闘うことこそが相手に対する純愛」そのものの独白となる。ジュリエット沼澤への愛の言葉になる。これはね、設定のクレージーさも理屈も越えて、純粋に感動させるものがあった。

ふたりが退場し、会場に「本日の公演はこれですべて終了です云々」のアナウンスが流れても、誰も席を立たず、拍手のひとつもない。観客全員呆然としている。で、もう一度「本日の公演はこれですべて終了です」と流れ、そこで全員ようやく我に返って、大拍手が起こった。こんな舞台、めったにない。

もうフラフラだ。
昨日はYahoo!Topicsに載るという事件もあり、会社でのスピーチやプレゼンもあり、ただでさえもフラフラだったので、もうフラフラの極致の極致。まいった。ほんと、まいった。

構成・演出をしている八代眞奈美ディレクター、ありがとう。そして強烈なデスマッチをしてくれた葛西純、黒天使沼澤邪鬼、ありがとう。
「オレたちよー、いつまでプロレスやってられるカラダかわからないけどよー、だからこそ、命がけでオマエと闘いたいんだよー!」という言葉が脳から離れない。いつまで人間やってられるかわからないくせにダラダラ生きてる自分が透けて見えちゃうんだろうな。

つか、まだ胸の奥に深い疲弊がある。本当に疲れる舞台(リング)だった。仕事できっかな。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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