ある泡沫候補のお話
2009年8月25日(火) 12:38:25
我が家の近くの衆議院選挙のポスター板をぼんやり見ていて、ふと先月のこんなことを思い出した。
会社の近くの、たまに行くコンビニに、よく働く店長(男)がいる。
声もよく出すし笑顔もいいしちょこまかとよく動く。数日に一回は彼の顔を見るし、よく働く人だなぁという好印象もあって、なんとなく彼の顔を覚えていた。
で、先月の東京都議会議員選挙の公示後、近所(コンビニがあるのとは違う町。選挙区も違う)のポスター板で候補者を見ていたら、なんだか見覚えのある顔がある。ん? 近寄ってよくよく見たら、なんと、その店長ではないか!
いや、まさかなぁ、と思ってよくよく見かえしてもそうだ。まぁ店長の名前なんか知らないので他人の空似かもしれないけど、それにしても似ているなぁ。無所属の安っぽいポスターである。典型的泡沫候補の趣き。
そのポスターに書いてあった名前を記憶して、家に帰って検索してみたら、彼の個人サイトがあった。都議会議員選挙立候補への想いなんかも書かれている。
ただ、経歴を見ても「現在コンビニ店長」とか書いていない。やっぱり違うのかな…。○○という立派な食品会社に入社して、5年前に「政治家を志すために退職」とある。うわ、この人、後先考えずに会社辞めたのか…。しかも長男長女がいるよ…。どうやって喰ってるんだろう。大変だなぁ。
翌日そのコンビニに行ってみたら、店長はいなかった。まだ選挙期間中である。もし店長が候補者だったら、もちろんこの期間はコンビニで働いていないだろう。選挙カーか自転車でどこかを走り回っているはずだ。うーむ、こうなるとやっぱり彼なのかなぁ。ホントかなぁ。
ずっと気になっていて、選挙が終わってからもう一度コンビニに行ってみた。彼の顔を確認するためだけのために。
いた。店長だ。
どう見ても同じ顔。
商品を手に、レジにいる彼に近寄ってみる。
胸に名札がある。○○○。あぁ! やっぱり店長が候補者だったんだ!
…そう。
選挙後、コンビニの勤めに戻ったことからもわかるように、彼はビリから二番目の得票数で落選していた。ううむ、なんだか急に悔しくなった。
いや、彼が落ちたことが悔しいのではない。
志を持って会社を辞め、コンビニの店長で食いつなぎつつ立候補を続けているからといって偉いわけでもなんでもない。そんな彼が「政治家に向いている」「政治家として優れている」とも全く限らない。でも、なんというか、自分の投票において「生身の人間である候補者の人生を左右する」という視点が欠けていたことが悔しい。
政策や理念、所属党なんかはもちろん大切。
それだけを見て、さらっと投票するので構わないと思う。でもその投票に「候補者の人生がかかっていること」を忘れたくない、みたいな感じ。そこをいままでより重く受け止めて真面目に投票したい。当たり前のことなんだけど候補者にもいろんな人生の背景がある。それらを理解し、抱え込んだ上で、一票を投じたい。
どこにコンビニ店長みたいな人が埋もれているかわからない。
今回の衆議院選挙、政権交代に衆目が集まり、どちらの党が勝つかということばかりが注目されているが、ボクは(小選挙区では)できるだけ「人間」を見て投票したいと思う。彼らの人生に投票したい。そういう意味ではネット上の候補者の個人サイトは重宝するね。候補者の人生を感じられる唯一の場所だ。
