サイモン&ガーファンクル 武道館ライブ

2009年7月16日(木) 9:25:38

というわけで、サイモン&ガーファンクルのたぶん最後から二番目になるライブに行ってきた。@武道館。

2日前にとった席なので仕方ないけど、スタンドの一番上から2列目。アルファベットでいったらW列。ううむ、これで20000円は辛いなぁ。でも、ステージから遠い分、逆に歌に集中できて良かったかもしれない。

彼らの半生を振り返る映像(BGMは「America」のカラオケ)から始まったライブ。ふたりが出てきての一曲目は渋く「Old Friends」であった。このツアーの表題曲。で、2曲目は「Hazy Shade of Winter」で盛り上げ、「I Am a Rock」「America」へ。

以前からちょっと挙動不審ぽいところはあったけど、歳をとってポール・サイモンの動きがいよいよ怪しい感じになったのがなんとも可笑しかった。めちゃセンスの悪いシャツ着て、めちゃ格好悪いアクションをたまに少しする。あとは視線はずっと下を見たままの無表情。MCもほとんどしない。変人だなぁ。

対照的にアート・ガーファンクルはサービス精神旺盛だし、歌もがんばっていた。
MCでも日本語混ぜ込んだりして、ちょっと可愛い。「日本の太平洋側から日本海側までずっと歩いたことあるよ」みたいなことを言っていた。調べたらこんな逸話があるっぽい。

1978年6月、アート・ガーファンクルはコンサートやレコードのプロモーションではなく、個人的な好奇心で突然の1人旅で、貨物船に乗って10日がかりで日本にやってきた。
神戸のホテルに荷物は置きっぱなしで、歯ブラシと地図とクレジットカードだけを持って京都まで歩く。京都から福井県敦賀まで4日かけて歩く。敦賀で自転車購入。自転車で小野八幡まで。
宿泊先の旅館でちょうど「愛の狩人」放映。ステージ用のヅラはずしてたのでただのハゲ外人にしか見えず、テレビに映ってるS&Gの映像指して「あれオレ」と言っても旅館の人に相手にされなかった。
京都に戻り、自転車ごと新幹線に乗ろうとするが持ち込めないと言われ、そこらの通行人に売ろうとするが売れず。結局駅前で自転車を捨て、列車で荷物をとりに神戸へ。神戸から新幹線で東京。
東京で初めてCBSソニーに連絡を入れ、野球(巨人・ヤクルト戦)を観戦。野球のチケットはCBSソニーの手配したネット裏のものだが、アート本人も朝8時の当日券売りに並んで購入した外野席券をすでに1枚持っていた。野球のTV中継でカメラマンがアートに気付き姿を放送し、TVに写った時、「ポールサイモンさんです。」と紹介される。(元ネタ
変人だ(笑)
でもボクもガーファンクルの顔みながら「愛の狩人」を思い出していた。あの頃のアン・マーグレットがさ…(回想に入る)

ライブに戻ると、その後コンビを組んだ頃のエピソードと曲をやって、「Scarborough Fair」へ。
ここでいきなり意識が小学生のころにスリップした。小学校4年のクラス。ボクが班長をやっている班に好きな子がいて、その子にいいとこ見せようとがんばりすぎて逆に班の運営がうまく行かなくなったことなんかがアルバムを一頁一頁めくるように思い出されていく。あの頃この曲を聴いてたわけではないのに、なぜだろう。

続いて「Homeward Bound」「Mrs Robinson」。
「Mrs Robinson」は映画「卒業」の映像を挟んだあとに。途中でストーンズの(というか、クリケッツのか)「Not Fade Away」に曲が変わって、また「Mrs Robinson」に帰ってきたのが面白かった。

サイモンのソロヒット曲「Slip Slidin' Away」をふたりでやって、お約束「El Condor Pasa」(コンドルは飛んでいく)をやって、ソロコーナーへ。
ガーファンクルが3曲(「A Heart in New York」をやってくれてうれしかった)、サイモンが3曲(「Still Crazy After All These Years」を生で聴けるとは!)、そしてふたりに戻って3曲。ラストは「Bridge Over Troubled Water」である。

この「明日に架ける橋」は、中学時代だったかに聴きすぎてちょっと飽きており、たいして聴きたくなかった。
でも、やっぱり生で聴くと違う。ガーファンクルが端正に1コーラスやり、2コーラス目はサイモンが崩して歌った。で、3コーラス目をふたりで歌ったのだが、その冒頭、「Sail on silvergirl, Sail on by. Your time has come to shine. All your dreams are on their way.」のところのハーモニーの美しいこと! 思わず泣いた。サイモンが崩して歌った分、よりその美しさが引き立ち、染み渡った。この一曲だけでこの日は満足かも。

あとはアンコール。
「Sound of Silence」「The Boxer」「Leaves That Are Green」「Cecilia」。
あのさー、観客のみなさん、「Sound of Silence」で手拍子はやめようよ(笑)。というか、やめて!
ノレる予定だった「The Boxer」の♪ライラライは、ふたりが崩し気味にするものだからうまくノレず。ちょっと残念。まぁラストのラストで「♪Cecilia〜」と一緒に歌えたから良かったけど。

なんだろうな、とっても楽しかったけど、妙に懐古的になった2時間だった。
聴きながらニコニコ笑うというより、遠い目で「あれ? オレはいったいなんでこういう人生だったんだっけ?」と感慨にふける感じ。どっちかというと内省的に。

内省的になったのは、ポール・サイモンのせいもある。
なんか楽しくなさそうだったし、何かを悔いているような表情に思えた(実際は単にそういう顔をするタイプだと思うのだけど)。その表情を見ているうちに、ふと気がつくと心は過去の悔恨の中で苦悶している。

ライブはいろんな効能を見せる。楽しく元気になるだけがライブではない。しばしの悔恨と甘き自己憐憫。これはこれで砂糖菓子のように甘い。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

アーカイブ

同カテゴリーの他記事