黒田恭一さんが亡くなってしまった
2009年6月 4日(木) 7:29:50
またまた哀しいニュースが…。
音楽評論家の黒田恭一さんが亡くなってしまった。71歳。
初めて彼の評論に触れたのは、25年くらい前、雑誌「Stereo Sound」のコラムだったと思う。そのわかりやすくも等身大な筆致に惚れ、それ以来ずっと彼の評論を追ってきた。
上から目線で「教える」ことをせず、読者の身になって静かに丁寧に音楽の本質を伝えてくれた。その易しさから「初心者向き」とも言われたが、決してそうではない。単に難しい言葉を使わなかっただけ。レッテルを貼って決めつけなかっただけ。そして読者と同じスタンスに立っただけ。つまりは読む人のことを第一に考えた、超優秀な評論家かつコミュニケーターだったということ。
「オレがイイと思うんだから信じろ」的CD批評は絶対せず、ちょっと自信がないときはそれもちゃんと匂わせた。そして読者に考えさせた。良かったら体験してくれと行動を促した。教養としてでも知識としてでもなく「ただ単に楽しみのため」の音楽を説いてくれた。そして「世界が昨日よりほんの少し楽しくなるよう」努力を惜しまなかった。
ボクにとってはかけがえのない水先案内人。えー、もう逝っちゃうの? あなたが本当に伝えたかったことが理解できる年齢にこれからようやくなるというのに。
近年、オペラに触れるようになったボクは、コンサートホールでたまに彼の姿を見かけるようになった。
数年前から急に老けたなぁとは思っていた。でも心の中ではいつも「あ、黒田さんだ。ありがとうございます」と頭を下げていた。あなたがいなかったらこうしてオペラにも来なかったかもしれない。素晴らしい世界を伝えてくれてありがとうございました。微々たるチカラながら、ボクも「楽しいこと」をヒトに伝えて、昨日よりほんの少し世界が楽しいものになるよう、努力したいと思います。偉そうな意味ではなく。出来る範囲で。等身大で。
