平田オリザ作「ヤルタ会談」観劇
2009年2月25日(水) 12:15:52
おとといになるが、憲政記念館で演劇「ヤルタ会談」を観た。
超党派議員有志を中心に発起人が集まり、開催が実現したもの。友人の参議院議員に誘われて参加した。
小さな会議室が会場だったのだが、大御所議員や若手議員をはじめ、学生さんまでいろんな立場の人が参加していて面白い雰囲気だった。
よく思うのだけど、議員って直に話すととてもいい人が多いし、精力的に動いているし、意外とクリーンだし、見方が変わる。演説になるとどうにもうさんくさい部分があるけど、普段は本当に普通の感覚をもって少しでも世の中を良くしようと動いている人が多い。特に権力に染まっていない若手はそう。その情熱は(普段問題意識薄く生きている自分には)まぶしいほどである。「議員=ダーティで裏がある」というレッテルを貼りがちだが、そうでない若手も多いことにもっとみんなが気づくと政治への印象も変わるのだけどなぁ。選挙活動以外の場所でもっと議員と接する機会が増えるみたいなことが、意外と政治意識改革につながる気がする。ネットってもっと上手に活用できないものか。
で、「ヤルタ会談」。
平田オリザ脚本のたった30分の演劇。出演者もたった3人。スターリン役(松田弘子)とルーズベルト役(高橋緑)とチャーチル役(島田曜蔵)。スターリンとルーズベルトが女性だよ(笑)。でもって本音トークでわいわい言い合うのだけど、これが面白い。
「で、どうなの? ソビエト軍はいつ頃ドイツに本格的に入ってくるわけ?」
「ま、来月中かな?」
「え、そんなに早く?」
「まあね」
「へー、そうするとベルリンまですぐって感じかな?」
「いやいや、ドイツ軍の抵抗がね、どの程度なのか…、ポーランドも大変だったしね」
「とはいえさ」
「とはいえじゃなくてさ、だいたいアメリカさんはいつも無責任すぎるんだよ」
「そんなこと言ってもさ、大変なんだよ、日本はまだまだ気が狂ってるしさ」
「あ、日本っていまどうなってるの?」
「そんな他人事みたいな言い方しないでよ。ソ連はいつ参戦してくれるのよ」
「いや、だから、ソ日中立条約ってのがあってさー」
「ロシア人が条約守ったことあったっけ?」
「なに!」
「まぁまぁまぁ」
みたいな爆裂トークで、たった3国で第二次世界大戦後の世界地図を適当に決めてってる様子が描かれていくのである。
いや、よく出来ている。
実際にこうだったのかもと思わせるほどリアリティがある部分と、上手にデフォルメされている部分と、平田オリザによる問題提起な部分がバランス良く織り込んであり、頭の中で史実がクリアに整理されると同時に「権力者たちの普通の感情」に寄り添える。そしてどんな政治も「ヒト」が行っているという当たり前なことに気がついていく。
こういう「異化」こそ芸術の役割なんだなぁと再確認した感じ。平たく言うと、日常に埋もれてしまいがちな「他者の存在と痛み」に気づく「目」になってあげること、かな。難しくややこしい政治と権力の駆け引きを異化してわかりやすく提示し、観ているヒトに新しい視点を与える。そういう意味で演劇「ヤルタ会談」は大変すぐれた芸術であった。
また、西洋のややこしい題材をアジア人が描いていることにも意味がある。日本での上演よりも海外での上演の方が多いようだけど、海外でもとても受けているそうだ。アジア人だからこそ描け、理解される部分もあるのだと思う。アジアの芸術家の役割、という新たな視点をもらった感じ。
観劇後、平田オリザさんを中心にパネル・ディスカッションがあった(彼はこの上演のためにパリから前日に帰国して、また翌日パリに帰ったらしい)。
コメンテイターとしてたまにテレビに出ている劇作家、みたいな印象しかなかったけど、平田オリザっていう人の知と姿勢とビジョンにちょっと感動した。自分の役割と目的、ゴール・イメージまでクリアに系統だって整理されている人、という印象。特に教育に対する志の高さと問題意識は大変刺激になった。
第一次産業向け人材を育てる教育しかしてこなかった日本に、コミュニケーション・ティーチャー(ドラマ・ティーチャー)的なものを導入していくというビジョンにも共感した。この辺、自分の中でもう少しゆっくり消化してみたい。さっそく彼の著作「芸術立国論」を読んでみよう。楽しい知の刺激。久しぶりな感覚。
